拝啓
愛するパートナーのために工夫を凝らして作ったケーキを、
愛すべきお客様にも楽しんで頂ければと願うママさんの一品は一味違うもの。
それは永久保の雪苔屋さんのチーズケーキ。
見掛けは数年前から街で流行りの「バスク風チーズケーキ」ですが、
名前は「真っ黒チーズケーキ」。
ただ、本当の違いは名前ではなくショーケースのポップにこっそりと。
通例、チーズケーキの材料はクリームチーズ、卵、砂糖、小麦粉、生クリームなどですが、
雪苔屋さんのチーズケーキは小麦ではなく米粉を使用。
以前は小麦粉を使っていたものの、マスターが小麦アレルギーと分かってから米粉を使ったチーズケーキに変更。
食感が悪くならないよう配合や焼き加減に工夫を凝らした作品は、
他では味わえない滑らかなトゥルトロンとした食感で滋味豊か。
ママさんが焼くケーキとマスターが焙煎して淹れたエチオピア珈琲が居並べば、
黒く焦がしたキャラメル肌と珈琲の色合いが、愛しく奏でる夫婦唱和の世界出現。
その上、皿に添えられたヒマラヤ産の岩塩が、ケーキの甘味だけでなく珈琲の深みも引き出す心憎い演出。
「糟糠の妻は堂より下さず」などと言っても通じぬ現代社会ですが、
若い頃から苦労を共にしたパートナー同士が、互いを慈しみ合いながら成長していく姿を間近で観ることはこの上ない喜び。
愛することを知る人のケーキは多くの人に愛される。
ちょっと気恥ずかしくなるほどの一皿、ご馳走様でした。
敬具