屋久島六角堂便り~手紙

自然と人が織りなす屋久島の多様性を屋久島六角堂から折々にお伝えします

屋久島弁当三昧 第2回 島でここだけかも中華のテイクアウト 宮之浦 龍鳳

拝啓

ついに新型コロナウィルス感染拡大防止に向け、7都道府県に緊急事態宣言を出すと安部首相が表明した日の午前、

三か月に一度の検査と診察のため屋久島唯一の総合病院へ。
虎の子のマスクをおもむろに装着し、院内に入れば……
何とマスク着用していない患者さんが3割ほど。
掲示板にはコロナ対策で面会者への注意書きが張られているものの、診察室前で目に付くのは「インフルエンザ流行」に関するお知らせ。

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おまけに、待合室のマガジンラックから雑誌を手に取って眺める患者さんが一、二、三……ええんやろか?

昨日、のカフェノマドさんの休業継続のお知らせを観て、

いよいよ気を引き締めねばと思っていたところですが……

院内の空気に浸っていると、島民のコロナウィルスに対する温度差がなぜ生まれているのか、妙に納得。

で、内科の診察の後、年明けからの体調不良の原因を明らかにするべく整形外科を受診してレントゲン検査。
結果は「老化による頸椎損傷」。言わば首のギックリ腰だそうで。
俯く姿勢の作業やパソコンを長時間しないように注意する他は痛み止めを使ってごまかすしかないとのこと。

で、昼過ぎ。朝食抜きの空腹を満たすべく、宮之浦の町でテイクアウトの店を探そうとぐるりと一巡りしたものの……それらしき店を見つけることができず、

ハタと思い付いたのが益救神社の脇の中華料理店龍鳳さん。

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店に入れば、おお、見覚えのあるテイクアウトメニュー。

島では珍しい立体サンプル。

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野菜中心を心がけて八宝菜と白ご飯を注文。
以前、ブログでもご紹介した店にずらりと並んだ招き猫の一群はお元気かしら

と店内を見渡せど不在。
わずかにカウンターに数匹が鎮座するのみ。

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女将さんに伺えば、掃除が大変と大将に言われて、泣く泣く箱に納めて冬眠中とのこと。


で、受け取った品をぶら下げて向かった先は益救神社。
人っ子一人いない境内で包みを開ければ……

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ほう、アッツアツのホッカホカ。

グッと寄ればトッロトロのツッヤツヤ。

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島にありがちな甘みは控えめ、思いも寄らぬ里芋がシャキシャキ新鮮な触感。
ご飯もたっぷり入った1,100円で満腹でした。

 

ちらほら遅めの桜咲く境内で

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ひっそり佇む仁王様に

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人の世の安寧を願いつつ神社を後に。

 

帰りがけ、今週からテイクアウトのみの営業となった永久保「雪苔屋」さんの様子を窺えば

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入り口に張り紙。

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珈琲を注文して、外のベンチで一息つかせて頂きました。

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味も香りも同じでしたが、紙コップの珈琲は心なしか切なさを含んでいるようで……

 

六角堂に戻ってパソコンを開くと、宮之浦のレストラン「パノラマ」さんも4月8日から店内営業休止のお知らせが。

10日から「パノラマオリジナルもつ鍋」をテイクアウトできるよう準備中とのこと。

基礎体力のあるお店はしばらく閉店しても何とかなるかも。

意欲に溢れた店主さんなら新規事業にも挑戦できよう。

しかし、そうでないお店は……

 

そこまで思った時、かつて授業で教えた随筆にあった「倒木更新」という言葉が頭に浮かびました。

岡部伊都子だったかな?とネットで探れば、幸田文の随筆集『木』に収められた「えぞ松の更新」でした。

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あれこれ探すとその一節が。

「北海道の自然林では、えぞ松は倒木のうえに育つ。

むろん林のなかのえぞ松が年々地上におくりつける種の数は、数知れぬたくさんなものである。

が、北海道の自然はきびしい。発芽はしても育たない。
しかし、倒木のうえに着床発芽したものは、しあわせなのだ。

生育に楽な条件がかなえられているからだ。
とはいうがそこでもまだ、気楽にのうのうと伸びるわけにはいかない。

倒木のうえはせまい。

弱いものは負かされて消えることになる

きびしい条件に適応し得た、真に強く、そして幸運なものわずか何本かが、やっと生き続けることを許されて、現在三百年、四百年の成長をとげているものもある。
それらは一本の倒木のうえに生きてきたのだから、整然と行儀よく、一列一直線に並んで立っている。

だからどんなに知識のない人にも一目で、ああこれが倒木更新だ、とわかる……」

http://www7b.biglobe.ne.jp/~kintorekokugo/gendaibunkintore/ezomatsuno/ezomatsuno1hin.html

 

なんだかますます切なさつのる春の夜更けです。

 

敬具

6kakudo-tegami.hatenablog.com