拝啓
気付けばもうはや二月如月。
予定では十日ばかりの車中泊の旅の帰路についているはずだったのですが、寒波来襲でフェリーは連日欠航、九州・本州の道も積雪の恐れでいったん出島断念。
電池は切れてスイッチはさび付き接客従業員とグータラ……
グダグダしていてもお腹は減るもの。
そこで思い立ったのが、このブログでこれまで一度も特集したことがなかったスパゲッティ巡り。
昭和平成と移り変わる中で、スパゲッティをパスタと言い換えて提供するお店が増えましたが、イタリア語のパスタ(pasta)とは本来、パンやお菓子を含む粉もの生地全般のこと。今ではおおよそ小麦粉を練って作る麺類の総称に。
イタリア人からすれば、日本のそばやうどんもパスタ。
一方、日本人がパスタと言われて一番に思い浮かべるのはスパゲッティ。
屋久島には著名な雑誌にも取り上げられる島の瑞々しい野菜やジビエの鹿肉を使った「パスタ」のお店もございますが、
今回巡ったのはそれよりカジュアルなパスタ料理、というより庶民的な洋食としてのスパゲッティ。
島を出る機会に街で頂きたくなる駅前の大衆食堂や洋食屋の定食。その代表たるスパゲッティを島で味わえるお店を巡る旅に。
① 喫茶樹林
まずは空港の北側にある「喫茶 樹林」さん。
1月初旬に伺った折には、ミートソーススパゲッティを頂き、
ブランコで遊ぶ乙女たちと、まだ蕾膨らみかけた河津桜を眺めてほっこり。
1月下旬に桜の開花具合を確かめに訪れるとはや八分咲き。
そこで頂いたのは「水前寺菜となすのトマトソーススパゲッティ温泉卵トッピング」。
おお、これぞ駅前のナポリタンをほうふつとさせる味わい!
② アクアカフェ
その翌日伺ったのは空港の南、長峰の「アクアカフェ」さん。
赤いトマトソースとエビか、白いホタテとシラスか一瞬迷いましたが、ここはシラスとガーリックのコンビネーションに期待を寄せて選択。
まずはサラダとオードブル、
その後おもむろにスパゲッティとパンとスープが登場。
ホタテの風味が心のイガイガをなだめてくれました。
③ PASTA SLOW
その翌日伺ったのは船行のパスタ専門店「SLOW」さん。
パスタ専門店(でお値段もお高め)なので、今回のスパゲッティ巡りで立ち寄るのは少しばかり気が引けたのですが……
「黒豚フランクのナポリタン」を目当てに入店。
何やら惹かれた明太子トーストをお供に。
前菜とトーストの後に登場したナポリタン。
食べ応えのあるフランクフルトと食後のカプチーノが合いました。
ナポリタンは日本で発明されたある意味外道のスパゲッティ。
なぜならわざわざ麺を茹で置きして「アルデンテ」とは対極の触感に仕立てた和風洋食だから。
それをなにもわざわざパスタ専門店で頼まなくても良かろうに、との声も聞こえてきそうですが……
しかしナポリタンは日本の庶民、ジイチャンバアチャンオッサンオバハンニイイチャンネエチャンにとって最もソウルフルなスパゲッティ。
パスタ専門店がそれをどう調理してメニューの一つに加えるのかは、ある種の挑戦、冒険と言えるのではないでしょうか?
④ かたぎりさん
その翌日伺ったのは松峰の「定食 パスタ かたぎりさん」。
いつもは日替わり地魚漬け丼を頂くのですが、今回頂いたのは本日のお薦めパスタ。
生ハムペペロンチーノ。
生ハムのパスタだったこともありやや塩がきつめでしたが、麺の茹で加減は好みの堅さ。
うどんやラーメンは出汁やスープの風味と旨味がまず先に、蕎麦とパスタは麺の茹で加減が要、というのが私の好みの基準です。
⑤ オタク系喫茶 ちーぞー
屋久島のジビエ料理店が1周年 若手ハンターが開業、狩猟に関する相談受け付けも - 屋久島経済新聞
その翌々日、伺ったのは松峰の「オタク系喫茶ハンターショップちーぞー」さん。
基本三種のメニューのトップを飾るのが「レッド!ちーぞースパゲッティセット」。
今回は、屋久鹿の竜田揚げトッピングで。
モリモリのボリューム、シカシカの満足感。
愛嬌のプリンがオタク気分を高揚。
正直、屋久島のジビエを楽しみたい方にはここが一番のお薦めです。
⑥ レストランかもがわ
今回のスパゲッティ巡りの締めを飾るのはやはり島の大衆食堂の人気頭、安房のかもがわさん。
数十あるメニューの中にはスパゲッティも四種類。
迷うことなく「ナポリタン」を選択。
きちんと粉チーズとタバスコが添えられる律義さ。
パセリが散らしてあれば大衆スパゲッティ度満点ですが、飾ってないのが島風かも。
はてさて、島の北のスパゲッティはどんなもんじゃろと思いながらも、
来月は延期になった車中泊の旅に発とうかとも。
その前にちんたらブックカフェを開けられるかどうか、微妙なところです。
敬具