拝啓
天草・長崎の旅のまとめ最終回。
2月8日朝、
市電に乗って向かった先は、
「世界遺産-明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」のグラバー園。
長崎駅には真新しいストリートピアノがありましたが、触れる人は皆無。
市電の運賃の安さに感謝。
キリスト教伝道史を改めて学習。
その後グラバー園に。
ほぼ40年ぶりの再訪。
その時はなかったはずの「動く坂道」にびっくり。
そして三角西港でも見た六角形の公衆電話ボックス。
園内には「西洋料理発祥の碑」もあり、レストランも営業されていましたがパス。
そういえば来る途中「ボウリング日本発祥地」の碑も。
グラバー園には幕末・維新期の大砲。
そして海を挟んだ対岸には「三菱」の赤いマークと軍艦造船所が。
元はと言えば……
グラバー、そして三菱のもの。
詳しく書かれている三菱のHPから一部ご紹介。
グラバー邸は幕末には武器弾薬などきな臭い取引の舞台となった。
昭和14年(1939)に三菱重工業がグラバーの子孫から購入した。
昭和32年(1957)、造船所が長崎鎔鉄所として発足してから100年を迎えた記念に長崎市に寄贈。
グラバーは慶応4年、肥前藩から経営を委託された高島炭坑にイギリスの最新の採炭機械を導入し、本格的な採掘を開始した。
明治14年(1881)、今度は三菱が高島炭坑を買収した。
前回ご案内した高島・軍艦島ともグラバーは深くかかわっていたのであります。
グラバー園周辺での収穫の一つが「祈りの丘絵本美術館」の発見。
他では入手しにくい様々な絵本の販売も行われておりました。
かつての同僚が営んでいる京都市左京区の絵本カフェ美術館「響き館」が今どうなっているのか、
彼&彼女の健闘を陰ながら願うばかりです。
そして「長崎さばサンド」や「長崎スープカレー」で腹ごしらえしたのち、
レトロな市電で長崎駅へ。
そしてモダンな市電で向かったのが「長崎原爆資料館」。
こちらもほぼ40年ぶり。
すっかりリニューアルされた資料館のエントランスホールの天井には、
なんと六角形が。
閉館間際でしたが、「どうぞゆっくりご覧ください」とのお言葉。
どこぞの少年少女(修学旅行生の一団)と共にゆっくり参観。
原爆≒戦災の酷さは言わずもがな。
その思いを屋久島に持って帰ろうと、
資料館の売店で「トビウオ」の絵本を頂きました。
資料館脇の「希望の碑」の碑文『微力だけど無力ではない』の高校生の決意を、
戦争未体験者のジジイなりに受け止め直しました。
そこからずんずん歩いて向かったのが、
先の資料館での被災状況が再現されていた浦上天主堂。
マリア様の脇にあった「拷問石」に、
人間の偏狭さと残酷さを再認識するとともに、
「拷問石」に耐えたという22歳の女性ツルの信心の強さに圧倒されました。
そこからトコトコ向かったのは平和祈念像。
たくさんの花が供えられておりました。
昔は千羽鶴が主流だったと思いますが、
今では後始末の労に配慮し供花になったのかと。
その近所で感じの良い喫茶店「珈琲家 KAFUE」を発見。
入り口の「ブランデーケーキセット」に惹かれて入店。
オーナーご夫妻は私より十ほど年上とお見受けしましたが、
ジョンレノンやオノヨーコの絵が飾られた店内に流れる音楽がいかにも1970年代。
とても庶民的なメニューと品の良い食器の取り合わせに、
なんとも居心地の良さを感じました。
こんなお店が屋久島にもあればと。
日も暮れて、
夜の食事をと思っていたお店に行くとなんとシャッターが。
つぶれてしまったのかと思って、お向かいの酒店の従業員さんに伺えば、
「8時過ぎないと開かないし、仕込みが間に合わないともっと遅くになるみたいですよ」とのこと。
まだ1時間以上あるのでGoogleさんに相談し、
向かった先が創業昭和24年、長崎で一番古い焼き鳥専門店「雀の巣」。
私より二回り近くお年を召した女将さんが一人でカウンターの中に立ち、
次々と注文に応じて料理をお出しする姿に感服。
売りの焼き鳥は格別でしたが、
それ以上に美味しかったのが「湯かけクジラ」。
長崎は知る人ぞ知るクジラ料理が盛んな土地柄。
湯がいて食べる切り畝(塩くじら)の食べ方 (nagasaki-kujira.jp)
初めてそれを教えて下さった雀の巣さんに感謝。
話の流れで、女将さんはかつて宮之浦岳に登ったことがおありだとのこと。
ご縁を感じつつ、一時間ほどカウンター席で料理とビールを楽しみました。
そして向かった先は、
先ほどシャッターが閉まっていたお店。
なぜそれほど執心するかと言えば、店名が「六」だから。
聞けば、オーナーさんのあだ名が「碌でも無い奴」のロク。
それで開いたお店の名前を「六」に。
それにちなんで置いているジンが「六 SUNTORY GIN ROKU THE JAPANESE CRAFT」。
こんなお酒があるとは、六さんに伺うまで存じませんでした。
六を使ったモスコミュールが紅生姜の天麩羅とよく合いました。
“ひとくちに、六つの旬が咲く 桜花 桜葉 煎茶 玉露 山椒 柚”
夜更けて徒歩で長崎駅前のホテルまでとことこヨタヨタ。
あくる2月9日。
朝一番の高速バス「九州号」で福岡空港へ。
国際線ターミナルから滑走路を隔てた国内線ターミナルまでシャトルバスに乗り、
「博多カレー研究所」の「あごだしカレー」を賞味して、
いざ屋久島へ。
1時間20分後には屋久島空港。
その1時間後、六角堂に到着。
ニャーは従業員宿舎で昼寝をかましておりました。
2月2日から8日間の九州巡りのまとめ、これにて完。
【長崎からの学び 2】
◎ 本当の平和ボケ
本文で紹介しそびれましたが、2月7日に泊まった宿のすぐそばに、
「元祖長崎チャンポン 飛龍園」が。
閉ざされたその店先には二枚の看板。
その一枚には「ナガサキの祈り」の歌詞が。
こうした街の風景に、行き交う人は何を思うのか。
この旅のきっかけとなった映画『家族』の舞台は1970年。
その年の大阪万博のコンサートで歌われたのが、
北山修作詞、杉田二郎作曲の『戦争を知らない子供たち』。
作詞家の北山修は1946年生まれの京都市出身で京都府立医科大学医学部卒業。
今や九州大学名誉教授。
作曲家の杉田二郎も1946年生まれの京都市出身で立命館大学卒業。
実家が京都の金光教島原教会で、現在金光教関係での音楽活動も。
Wikipediaの解説では……
彼らが組んだ「ジローズ」によるシングルは、1971年のオリコン最高11位、累計売上30万枚以上のヒット曲に。
ジローズはこの年の第13回日本レコード大賞新人賞を、作詞を担当した北山修は作詞賞を受賞。
世はベトナム戦争の真っ最中であり(武力衝突開始1960年、終結は1975年。
なお不正規戦争で宣戦も講和もない)、憲法の制約のある日本政府もアメリカ合衆国の戦争遂行に基地の提供といった形で協力していた。
日本国内でも、一部の文化人や学生を中心に、反戦平和運動は盛り上がりを見せていた。
そのような中で発表されたこの曲は、日本における代表的な反戦歌となった。
なんで今更「戦争を知らない子供たち」なのか。
と思われるかもしれんせん。
私は北山修達から一回りも若い1958年生まれ。
「人類の進歩と調和」をテーマにした大阪万博が開かれたのは中学1年生になった春。
それから8年後、
京都教育大学国文学科で児童文学を専攻することになったきっかけの一つ、
早乙女勝元の絵本『猫は生きている』(理論社、1972年刊)と出会いました。
そして、卒論を「戦争を題材とする戦後児童文学史」にする予定に。
(結局は「小川未明の赤い蝋燭の色彩論」に)
六角堂のカフェのロフトの一角には、
学生時代に買い集めたものを中心に、
180冊ほどの戦争関連の児童書や絵本があります。
もう絶版になっている本も多数。
もし、研究や啓発のために役立てたいと願って下さる方がいらっしゃれば、
まとめてお譲りします。
そんな学生時代からずっと、
“10年以内に日本が再び戦争に巻き込まれる(起こす)に違いない”という思いがありました。
だからこそ、
戦争を知らない世代だからこそ、
就職後は勤務校で長崎や沖縄修学旅行に際しての平和学習の担当者にもなり、
「平和ボケしないように」との願いを持ち続けたのです。
世間一般、
平和ボケとは「主に戦争や平和、安全保障などの現実について無関心、または現実逃避し甘い幻想に入り浸っていること」のようです。
ただその言葉を使う多くの人は、
「日本も強固な軍備を持ち、戦争ができる国、国家体制を作るべきだ」と主張する人々です。
その声が、昨今の北朝鮮の核・ミサイル問題や中国の覇権、そしてロシアのウクライナ侵攻によってますます大きくなっているようにも。
その余波が奄美の自衛隊基地新設や鹿野市の米軍無人偵察機配備、
馬毛島の日米共同軍事基地建設の是認にも繋がっていると確信。
本当の平和ボケとは、
「強固な軍備によって戦争を回避できる、国や暮らしの平和を守れる」と思い込むこと。
アメリカから「反撃能力(先制攻撃)」用に購入するトマホークを100発を「敵国」に打ち込んで機先を制した後、
その戦争がどうなるのかを想像しない、できないことだと。
ウクライナが昨年2月にロシアの侵攻を受けたのは、
青天霹靂ではなく、
9年前の2014年、ロシアによるクリミア併合の延長にあります。
そうなることを許したウクライナの政治の腐敗と混乱、国民世論の分断、
そして「西側」の対処が今回のウクライナ侵攻の基礎になっています。
2018年に書かれた次のレポートも、ウクライナの危機を論じながらも2022年のロシアによるウクライナ侵攻を予見することはできませんでした。
クリミア併合(危機)とは?なぜ起こったのか?問題点などをロシアとウクライナの関係から見ていこう | 世界雑学ノート (world-note.com)
国(以上に国民の暮らしと安全)を守るために必要なのは、
強大な軍備や軍事同盟、そして情報統制による治安維持なのか?
それとも適切な情報公開がなされ、多様性を尊重する国内政治と外交による国際協調なのか!
それを決めるのは国の主権者、有権者である我々自身。
「言ってもしょうがない」「なるようにしかならん」から「防衛費倍増も必要」「何なら日本も核武装を」まで。
いくら軍備を整えようとも、
一旦戦争を始めたら、
何千何万という兵士や市民が命を失い、命を奪うことになる。
その歴史の教訓、今の現実に学ぼうとしないこと。
これが本当の平和ボケなのだと。
今回の旅でそのことを改めて再認識しました。
今日もまた、北朝鮮からミサイルが発射されましたが、
その一方で、かつての日本軍の重要基地があった鹿野市の平和学習の取り組みが報じられました。
特攻作戦の爪跡残る「鹿屋の戦争」デジタル地図化 戦跡、文献、体験談を集約 慶応大教授ら一般公開 | 鹿児島のニュース | 南日本新聞 | 373news.com
さて、どうする日本国民。
◎ 旅の食と住
観光のお客様を呼び寄せる重要なポイントは「食」と「宿」。
そして移住促進の要は「職」と「住居」。
まず食についていえば、
今回の旅で意識したのはトビウオやサバを中心とした海産物の料理とカレー。
様々なお土産用の加工品や飲食店やカフェで試しました。
その結果、目新しさや流行を反映した「新商品」や「こだわりの〇〇」より、
「雀の巣」で頂いた年季の入った焼き鳥やクジラ料理や、
長崎の老舗中華料理店で頂いた皿うどんの方が満足感大。
素材や調理方法を熟知した経験に裏付けられた料理。
フロアスタッフの適切な接待。
それが評価の要でした。
福岡空港で旅の最後に頂いた「博多カレー研究所」のカレーには、
食べ方の指南「美味しい召し上がり方 ステップ1~6」がありましたが、
これはお客様のためなのかと。
面白いことに、
私がこの「6」に従ってハグハグしている最中、
いかにも都会から来ました風の中年カップルの男性が、
お店の若い女性店員に向かって
「ライスはいらないからカレールーだけもらえない?」と注文し、
「商品はすべてライスセットになっております」と困った様子の店員に、
「セット料金払うからご飯抜いてよ」と強硬姿勢。
そのやり取りの間に、他の何人ものお客さんが注文できずにヤレヤレ。
ちなみに指南書「美味しい召し上がり方」の「ステップ1」は、
「ご飯のみを、少しだけ頂く」。
どっちもどっちですが、
お客様に満足していただくことと、
お店のオーナーが満足することのどちらが大切なのか。
それは結局お客様が判断することなのだと肝に銘じました。
そして様々なタイプの宿の様子。
1泊目の鹿児島市内では駅前のビジネスホテル。
2泊目と3泊目の天草では老舗旅館。
4泊目と5泊目の伊王島ではリゾートホテル。
6泊目の長崎は無人・非接触形式のキッチン付きホテル「グランドベース」。
7泊目は長崎駅前のビジネスホテル。
それぞれに一長一短ありましたが、
評価のポイントの高さを決めるのは、
第一に「親身な接客対応」。
第二に「メンテナンス」のきめ細やかさ。
それ以外は値段相応になるのかと。
それをしみじみ感じる旅となりました。
こうした様々な教訓を、
六角堂コテージやスパイシーブックカフェイートハーブにも活かして参りたいと存じます。
◎ ご当地洋酒
九州産ではありませんでしたが、サントリージン「六」の発見は新鮮でした。
そんな中でクラフトビールを製造する工房も。
実は、15年前の屋久島移住六角堂構想の柱の一つとしていたのが「KUMAGE RAM」の醸造。
種子島のサトウキビと屋久島の水から「船乗りの酒」ラム酒を作り、
熊毛郡の特産品にしたいとも。
しかもラム酒は付加価値が高くコアな愛好家も世界各地に。
日本の離島でも様々なブランドが。
離島ではありませんが、
滋賀県の琵琶湖湖畔に作られたラム酒醸造所NINE LEAVES。
「NINE LEAVES ENCRYPTED Ⅳ」は一本8,800円。
滋賀県音羽山系の長石に磨かれた硬度12の超軟水と沖縄産黒糖、選ばれた国産酵母の出逢いから生まれたクリアなラム。
Brand Story — NINE LEAVES (nine-leaves.com)
KUMAGE RUM の妄想、どなたか実現していただければ幸いです。
そうそう、
もう一つ忘れてならないのは屋久島の休耕田や耕作放棄地を利用した山羊の放牧による「屋久島産シェーブルチーズ」の開発妄想も。
以下のリンク先は、
私が20年ほど前に開いた「ProjectG マイノリティの交差点」と名付けたサイトに寄せたヤギさん関連文書です。
合言葉は「山羊は地球を救う」。
ご興味がございましたらご覧ください。
ProjectG/問題提起 人と自然 こだわり (plala.or.jp)
ProjectG/ 考えるヒントのお蔵 人と自然の棚 2 ヤギとダチョウが地球を救う (plala.or.jp)
ProjectG/ 考えるヒントのお蔵 人と自然の棚 4 ヤギは下手物か (plala.or.jp)
ProjectG/ 考えるヒントのお蔵 人と自然の棚 8 ヤギとジュゴンとヒトとの交わり (plala.or.jp)
ProjectG/ 考えるヒントのお蔵 人と自然の棚 9 沖縄の明日にかけるヤギ 支配を超えた食肉文化を (plala.or.jp)
何やら尻切れトンボの感がありますが……
これにて天草‐伊王島‐長崎の旅のまとめ
ほんまに完