拝啓
国内の新型コロナ新規感染者が5万人を超えた1月22日。
このままのペースだと月末には一日10万人の大台を超え、屋久島再上陸も間もなくかと。
ただ、個々人でできる手洗いマスクで粛々と暮らす日々、
ふと思い出すのはかつての職場の先輩、親ほど年の離れていた駄洒落好きの先生がことあるごとに繰り返していた呪文のような言葉。
「教育労働者に必要なのは栄養と教養、休養と給与!」
今は自営業者となった身ですが、その教えを思い起こし、
今回は屋久島の牛丼について考察してみようかと。
その直接のきっかけになったのは、
平野のヒラノラップスさん新開発の「グラスフェッドビーフ丼」。
グラスフェッドビーフは自然に近い環境で放牧され、
餌は原則新鮮な牧草のみで穀物をほぼ与えずに育てられた肉牛。
広大な土地で適度に運動しながら育つため、
程よく引き締まった脂肪が少なく赤身が多い肉質が特徴。
グラスフェッドビーフってどんなお肉? ステーキ・ハンバーグのブロンコビリー (bronco.co.jp)
国内でもグラスフェッドビーフは肥育されており、
宮崎県 鏡山牧場の自然放牧黒毛和牛【グラスフェッドビーフ】|美味お取り寄せ。dancyu
ただし、ヒラノラップスさんのはニュージーランドの牛さんだとか。
ホゴホゴ頂けば、確かに味わいのあるお肉。
ただ、ほぼ100%赤味の肉なので、牛丼にして頂くにはもったいないかもと。
そんな思いを抱きながら、
先日伺った長峰のmoricafeさん。
その日は冬季限定のロコモコを頂きましたが、
牛丼もひっそりメニューの片隅に。
下の画像は2020年7月に頂いたときのもの。
屋久島丼紀行第54回 離島の丼 只今500円引き その2 Cafeの牛丼とラーメン屋の牛丼 - 屋久島六角堂便り~手紙
「牛丼ってよく出るの?」と伺えば、そんなに多くはないのだとか。
しかし、
牛丼チェーン店が一軒もないどころか、
「牛丼」の幟を掲げた個人飲食店も観た記憶がありません。
それは、
① 牛肉が高くて牛丼として成立しないからなのか?
② はたまた島の人間が牛肉がそれほど好きでないからなのか?
③ いやまた、島の牧場で牛を育てているので頂くことが忍びないのか?
三つの仮説を立てて検証することに。
Ⅰ.牛肉が高くて牛丼として成立しないからなのか?の検証
それを確かめる糸口として、
mori cafeさんを出た後向かったのが、
以前牛丼を頂いたことのある、屋久島空港の食堂「エアポートやくしま」さん。
食券機を確認すれば牛丼と牛とじ丼が同じ860円。
しかし豚とじ丼は880円で、何とウシよりブタの方が高い!
5年前の10月に牛丼を頂いた時には680円だったので、
180円、2割以上も値がりしておりましたがそれでもまあ、
ボリュームを考えればなんとか許容範囲。
画像は5年前の牛丼。
屋久島丼紀行第46回 零戦の舞う島に立つ飯の湯気 - 屋久島六角堂便り~手紙
で、
ここまで来たのならばせっかくだしと、
今回頂いたのが牛とじ丼。
鶴のマークの飛行機を間近に眺めながら頂ける牛丼。
880円は納得価格かもと。
それでは町中のお店では?と、
日を改めて伺ったのが、
安房の「ファミリーレストランかもがわ」さん。
これまで何十回となくお世話になっておりましたが、
牛丼を注文したことは一度もなし。
メニューにあったかどうかさえ分からぬままに入店すれば……
オオッ!なんと親子丼と60円しか変わらぬ税込770円でカツ丼と同額。
しかも味噌汁付きで、松屋の特盛680より明らかにボリューム大。
肉は如何にも牛丼的な脂と赤身の混ざり具合。
しっかりご馳走様でした。
というわけで、
それなりの品質とボリュームで他の丼物と大差ない値段でメニューが成立しているお店もあることが判明。
① 牛肉が高くて牛丼として成立しないからなのか?
の答えは、「そうとは限らない」でした。
Ⅱ. はたまた島の人間が牛肉がそれほど好きでないからなのか?の検証
実は、
この牛丼考を綴る伏線が二つあって、
その一つが、
昨年のヴィーガン系、草食系飲食店の誕生ラッシュ。
このブログで折々にご紹介して参りましたが、
楠川のSUNSUNカフェさんのヴィーガンカレー
春牧の369さんの大豆肉タコライス
同じく春牧のPlant-based Cafe ne_さんのブッダボール
平野のヒラノラップスさんのヴィーガン弁当
高平のa heavenly kitchenさんのヴィーガン弁当
原のキッチン雪花さんのベジカレー etc.
外食頻度の高い移住者の方々は、そっち系が主流になり掛けているのか?とも。
そうした流れが目に付くほどに、肉食いたいの欲求が高まっておりました。
それで絵本『にくのくに』(はらぺこめがね作)を六角堂明冥文庫に。
そんな年末、わいわいランドの掲示コーナーで出会ったのが、
宮之浦の鉄板お好み焼き「こもれび」さんのチラシ。
「今年はやります!ローストビーフ!」
な~~んや、島の人も牛肉好きなんやんか。
そしてまた、
ドラッグストアモリで見つけた冷凍牛丼の素。
吉野家ミニ牛丼の具(80g×2)=430円
すき屋牛丼の具(210g)=346円
64年間、一度も食べたことがなかったばかりか、その存在も知らなかったので初挑戦してみれば、
お店で頂くのとほとんど変わらないお味。
それでか、結構売れている様子。
尾之間の味徳さんも、時間限定ランチサービスメニューで牛丼をご提供。
屋久島丼紀行 第3回 尾之間の牛丼 - 屋久島六角堂便り~手紙
ということは、
② はたまた島の人間が牛肉がそれほど好きでないからなのか?の仮説
も「そうとは言えない」ということ。
その一方、
町で暮らしている時は散々牛丼チェーンの牛丼にお世話になっていながら、
屋久島に来て一度もお店で牛丼を食べたことがない、
いや、どのお店で牛丼を食べられるかも知らない、
それどころかドラモリで牛丼の素を売っていることすら知らない島民の多いことを、どう理解すればよいのでしょう?
そこで、
三つ目の仮説、
Ⅲ.いやまた、島の牧場で牛を育てているので頂くことが忍びないのか?の検証
牛丼考、二つ目の伏線は屋久島の肉牛生産を知らせる新聞記事。
年始早々、ラーメンオリオンさんで食事をしがてら見つけた、
1月3日付の南日本新聞の1面に鹿児島県産の牛の記事があり、
「松坂牛シャトーブリアンも、登録番号をたどると屋久島で生まれた牛だった」の一節に目が釘付け。
そりゃ知らなんだ。
屋久島町には、屋久島の小瀬田や中間や口永良部に町営牧場があり、
そこで生まれた肉牛が、種子島や鹿児島で結構高値で取引されているということは知っておりましたが、
子牛が松坂牛や神戸ビーフになっているとは知らず、
ひょっとしたら昔々、屋久島生まれの牛肉を食べていたかもと。
そこで今回、この課題に立ち向かうべく、
改めて中間の町営旭牧場の牛さんを見学に行くことに。
たしかに看板には、「子牛育成センター 肉用牛繁殖育成センター」の文字が。
海際の傾斜地に立つ牧舎の前には20頭ほどの牛の群れ。
牧草地のあちこちに数頭ずつの群れ。
そのお顔をズームでとらえてみれば……
南日本新聞にあったピンクの耳標が。
なるほど。
で、
それほど高品質の子牛が町営牧場で管理できるのかしらんと、
ネットでトロトロ検索すれば……
「やくしまじかん」に西橋畜産の西橋啓太朗さんの紹介があり、
「屋久島育ちのメスの仔牛の8割は”松阪牛”の購買業者(肥育農家)に引き取られるている」とのこと。
牛の畜産を学ぶため、鹿児島・北薩にある『徳重和牛人工受精所』へ入社し、研修生として2年ほど修業を重ねたのちに島に戻って畜産を継ぐとは、すごい志だと感服。
そんなことと関係あるのかないのか分かりませんが、
先日とある所で屋久島で新たな牛丼店が開業するやもしれぬとの噂を。
なんでも、子牛を産んで産んで産んで、お役を果たした母牛さんを、
屋久島特産牛丼に変身させようという試みだと。
と言うことは、
③ いやまた、島の牧場で牛を育てているので頂くことが忍びないのか?
の仮説もまた、「そうとは言えない」との結論に。
行き詰った末に向かったのは、
安房のサンガンバーガー(ポンポン)さん。
昨年11月のブログ記事でもご紹介したとおり、
サンガンバーガーはもつ煮屋さんの顔も。
ローストビーフはどこにある ヒマワリとサーフィンとサンガンバーガーもつ煮込みの島 - 屋久島六角堂便り~手紙 (hatenablog.com)
そこで今回、
常連のごり押しでメニューにはない「もつ煮丼」を作っていただきつつ、
疑問の解を求めようと。
サラダと小皿と味噌汁付き大盛りもつ煮丼は1,000円。
モゴモゴクチクチ頂きながら牛丼問答。
あーでもないこーでもないと約1時間の議論が展開されましたが、
結論は見えず仕舞い。
でもまあ、例年になく寒い冬となっている屋久島の夜をホットに過ごせただけで幸い。
津波への不安を抱きつつも、
元気に日々を過ごせるよう、
せめて800円台で一椀の屋久島牛丼を頂ける日を願う島の夜更け。
敬具