拝啓
一昨日、六角堂の母屋の軒下でじっと佇んでいた一匹の蛇。
体長は40㎝ばかり。
近付いても逃げることもなくじっと。
あまりにカラフルな姿に、毒蛇やろか?でも頭▲ちゃうし、
ヤマカガシとは柄も違うみたいやし……
そこでFacebookでどなたかお答えいただけるかと思って、
画像を載せて「問い合わせ」を。
すると10分もせぬうちに「ジムグリの幼蛇です。」のコメントが。
なるほど。
そこであれこれ調べてみると、
ジムグリの生息地や餌、幼蛇の画像、毒性の有無、飼育について解説| 山川自然研究所
幼蛇のころはネズミやモグラの巣穴で子ネズミや子モグラを襲い食べます。鳥を食べた例もありますが、獲物のほとんどはネズミやモグラなどの小型哺乳類です。このため、地中や穴に潜って暮らしているのです。
孵化した幼体は背面が赤褐色で成体よりも鮮やかな体色を持っています。
体色の美しさからジムグリは日本で最も美しい蛇とも言われています。
幼蛇が美しい、ジムグリとは?毒性の有無や値段は? - WORIVER
ジムグリの値段は6月くらいから20cm以下の幼体が6,000千円前後で販売。
などと。
なかなか出会えぬ日本で一番美しいジムグリの幼体に出会えたことに感謝?せねばと。
じつは半年ほど前の五月も、
よく似た柄ですが、体長1m近い蛇が六角堂の玄関先にやってきて、
こちらの様子をうかがっておりました。
頭▲っぽいし、派手ないでたちなので毒蛇かも!とドキドキ
ただ、威嚇もしなければ逃げもせず、何やらどろんとした様子。
その時もFacebookで尋ねると「ヤマカガシだよ~~」と何人もの方からコメントを。
ネットで検索すると、やはりそんな風な外見。
その解説は……
ヤマカガシの毒の強さはマムシの約3倍、ハブの10倍弱の強さ……
ヤマカガシは比較的おとなしいヘビです。
ヤマカガシを見かけてもむやみに怖がったり騒いだりせず。優しく観察しましょう。ましてや、ヤマカガシは危険だからと、棒で叩き殺すようなことはやめましょう。ヤマカガシは、里山環境の減少と共に年々数を減らしており、むしろ保護すべき対象です。
効かぬとわかっていても、居座られては困るので「スズメバチ撃退スプレー」を噴射してしまいました。
申し訳ございません。
1時間近くのご滞在の後、ニャーに見送られて植え込みある崖下へソロリソロリと降りて行かれました。
で、
「いつになったらへび女が登場すんねん⁉」
と苛立ちの方もいらっしゃるかと。
実は、このヤマカガシの訪問の少し前、
漫画家の楳図かずお氏が「手塚治虫文化賞特別賞」を受賞されておりました。
手塚治虫文化賞受賞4氏の言葉 特別賞楳図さん「先生は苦笑いかも」:朝日新聞デジタル (asahi.com)
楳図氏の定番の服装はなんとなくヤマカガシ風。
景観問題で訴訟にもなった(楳図氏勝訴)「まことちゃんハウス」も。
楳図かずおの家が裁判で今現在は解体済?観に大ブーイング!住所・場所は八王子or吉祥寺のどこだ | ここでしか話せない芸能人の素顔 (kilkareraceway.com)
その受賞とヤマカガシ来訪を記念してAmazonで購入したのがこの一冊。
『へび女』
楳図PERFECTION! (ビッグコミックススペシャル) コミック
楳津かずお作 2005年7月刊行
この作品の初出は1966(昭和41)年。
私も小学校の教室で女子が回し読みしていたのに便乗させてもらい、「オエーッ」とかしていました。
それとちょうど同じ頃、
1968年から1972年まで『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された永井豪の『ハレンチ学園』も忘れられない作品。
日本中の小学校に「スカートめくり」を流行らせ、性描写と教師批判で多方面から轟々たる非難を浴びた作品ですが、
永井氏によれば「学生時代に教諭が女子生徒の体を触り、その場は教諭個人の冗談を含む一過性の性的揶揄と思ったが、後で隠れて泣いている女子生徒を目の当たりにし、その目撃談を元にデフォルメして作品を描いた」といういわくつきの作品。
そしてこれは『少年ジャンプ』の創刊号(1968年7月11日)の表紙を飾った作品。
同時に掲載された本宮 ひろ志の『男一匹ガキ大将』、ジョージ秋山の『デロリンマン』などを抑えての快挙です。
この作品が一世風靡したのは私が小学校6年生の頃。
そんなある日、校庭で一つの事件が起きました。
それはクラスメートの女の子のスカートが赤く染まっていたのを、そばで遊んでいた私たちが気付いたことです。
それに気付いた女子の一人が真剣な表情で男子に曰く。
「絶っ対、あのこと誰かに言ったらイカン‼ 言わないって約束したら『ジャンプ』貸してあげる!」
もちろん男子全員同意しました。
女子の生理については「女子だけ別室」で教えられていた時代。
触れてはならぬこと、ましてや冷やかしてはならぬことだと心に刻んだ瞬間でした。
或る意味、今に至るセクシュアリティへの関心を芽生えさせてくれた作品だったとも言えます。
それから半世紀たった六角堂には永井豪の作品集が三冊鎮座しております。
様々な社会風刺をこめたギャグマンガも連載。
その代表作が、
『オモライくん』
1972年からの連載でしたが、この後永井豪が向かったのはバイオレンスやSF路線。
『バイオレンスジャック』や『デビルマン』の先に『マジンガーZ』が登場することになります。
永井豪に表紙を奪われたジョージ秋山の初期作品は、ユーモラスなギャグマンガでした。その代表作が1967年から『少年マガジン』で連載された
『パットマンX』
しかし、その後彼は『アシュラ』、『銭ゲバ』といった社会や人間の暗部をえぐるような漫画を描き始め、
やがて1973年から晩年(2020年5月12日77歳没)まで、『ビックコミックオリジナル』に『浮浪(はぐれ)雲』を描き続けました。
それらを収めた作品集がこちら。
『ジョージ秋山 WORLD』
ジョージ秋山WORLD タブーを畏れぬ愛と自由の漫画家・傑作選!
ゴマブックス 2008年刊行
漫画家の変遷を追うことは、時代の変遷を追うことと重なってきます。
『がきデカ』
『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で、1974年から連載開始された「八丈島のきょん」で知られる風刺ギャグマンガ。
しかしギャグマンガ家以前の代表作は、
1970年に『少年マガジン』で連載開始された軍国主義を鋭く批判する近未来ディストピア漫画。
『光る風』
そうした昭和の漫画の中で令和の時代、
よほどの漫画マニアでもない限り知られなくなった偉大な漫画家の作品をご案内。
『つげ義春コレクション』
全9巻 ちくま文庫 2009年6月刊行
1970年代、コミック雑誌『ガロ』を舞台に『ねじ式』などで少しく世の中をはみ出しかけた青少年を惹きつけた異色の漫画家つげ義春。
精緻な描画と共に温泉巡りのエッセイは年を取るとともに味わい深し。
これは初夏、明冥文庫のリフォームで漫画専用本棚を作った記念に購入しました。
また、昭和に生まれて半世紀以上の時を超え、今なお週刊漫画雑誌に掲載されている漫画も。
私が大学一回生となった1976(昭和51)年から2016(平成28)年までの40年間、『週刊少年ジャンプ』に連載された秋本治による『こちら葛飾区亀有公園前派出所』は、今でもしばしば特別編が『ジャンプ』に登場。
島を出た折、コンビニで思わず買ってしまいました。
昭和に消えた人々の暮らしを令和の時代に描き直せる作家がいることの価値を実感。
今回の漫画紹介の締め括りは、
今年(20213年)2月に亡くなった松本零士の二作。
『男おいどん』
『元祖 大四畳半物語』
『男おいどん』は『週刊少年マガジン』で1971年から1973年まで連載され、
後の『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』、『宇宙海賊キャプテンハーロック』へと繫がる松本零士の源流。
『元祖 大四畳半物語』はそれに先立つ1970年6月27日号から青年漫画誌「別冊漫画アクション」で連載開始。
ともに福岡県久留米市出身の作者の私小説的な作品でもあります。
松本氏への追悼の意を込めながらご案内いたしました。
なお作中に登場する「サルマタケ」。
架空のキノコですが、実はモデルになるキノコがあったことを最近知りました。
松本零士『男おいどん』のサルマタケは実在した 真夏のきのこ祭りでサルマタケを食べた話 - 木谷美咲 Kiya Misaki の世界
なんと栽培キットまで販売されているとのこと。
一晩で溶けるキノコ、ササクレヒトヨタケのタイムラプス動画を撮ってみた! - 関東きのこの会 きのこ情報ポータルサイト (kanto-kinoko.com)
大人になった途端に溶けてしまうという悲しい運命を背負っているキノコだとか。
六角堂で栽培してカレーのメニューに加えようかしらん。
他にも様々、書店では手に取れなくなっている漫画が皆様のご来店をお待ちしております。
ちんたらブックカフェ再開の折にはどうぞ、お気に召すまま気の向くままお手に取って頂ければ幸いです。
敬具