屋久島六角堂便り~手紙

自然と人が織りなす屋久島の多様性を屋久島六角堂から折々にお伝えします

天草-伊王島-長崎 旅のまとめ ① 鹿児島の夜を迎えるまで

拝啓

2月2日から8日間の九州縦断。

 

そもそも、

この旅の動機は長崎県伊王島に行っておきたいと思ったこと。

 

そのきっかけは1970年に封切られた映画『家族』を数年前にDVDで観直したこと。

 

高度経済成長と大阪万博に沸く日本の裏側にはもう一つのドラマが。

閉山を間近に控えた伊王島の炭鉱夫の家族が、

北海道に移住し、酪農で暮らしを立てることを決意。

船で島を離れ、バスに揺られ、電車を乗り継ぎ、船で北海道に渡っていく道中、

赤ん坊が病死し、十勝に着いた矢先老父も亡くなる。

しかしラストシーンでは……

たくましく生き抜く女性を演じた若々しい倍賞千恵子の笑顔と瞳の強さに感服。

 

第44回キネマ旬報賞を受賞したこの映画。

旅のスタート伊王島のシーンは、107分の映画の最初10分ほどですが、

その背景となっている島の教会と長崎にわたるフェリーがなんとも印象的。

いつかこの目で見たいと思っておりました。

 

そして去年の6月、

カンヌ国際映画祭・カメラドール特別表彰を受賞した映画『PLAN 75』で、

自ら死を選択した孤独な老女を演じた倍賞千恵子の切なく遠いまなざし

 

1970年の大阪万博のテーマは『人類の進歩と調和』

それから半世紀、人類はどう生きてきたのか。

2025年の大阪万博のテーマは『いのち輝く未来社会のデザイン』

理念とテーマ事業の考え方 | 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会

 

高齢化社会で生きるすべを失った老人に与えた政府の究極の福祉。

国家推奨の安楽死がその答えなのか。

 

方や、ウクライナへのロシア侵攻でエネルギー危機や食糧危機が。

廃絶されるべき石炭火力・原子力発電所の復活・増設ラッシュ

穀物・飼料価格の上昇で廃業を余儀なくされる酪農農家の苦悩

 

そして、終息しつつあるように見えるコロナ禍渦中

巨額の国税を費やして行われる旅行支援と軍事費倍増

 

炭鉱-酪農-移住-旅-世界遺産-天草‐伊王島-長崎

 

そんな連鎖に操られてふらりふらりと島を出ることに。

 

六角堂前ホトー川バス停からバスに乗って宮之浦港へ。

島民割フェリー屋久島2に乗船。

13:35出航。

去り行く屋久島。

鹿児島港に沈む夕日。

暮れなずむ桜島

17:35着

 

天文館まで歩いてジュンク堂に立ち寄り、

何十年か振りに地球の歩き方を購入。

市電に乗って鹿児島中央駅へ。

 

そして、次に鹿児島市内に来たら、

必ずや成し遂げようと思っていたことを二つ。

 

一つ目は、

鹿児島中央駅右手にあるB・サークルさんの店頭に飾られた食品サンプル

「ヤングライス」に心惹かれること有余五年。

やっといただけました。

今のオーナーさんは20年ほど前から営んでいらっしゃるそうですが、

お店自体はそのずっと前からあったそう。

入り口のテーブル席のほかに、奥にはボックス席がいくつもあり、

道路から見た外観からは予想もできない広い店内。

「コロナで夜のお客さんがばったり途絶えたので8時ごろには店を閉めてます」とのお話。

昭和レトロのお店が変わらぬ佇まいで灯りをともして下さいますように。

 

その足で駅から徒歩5分のビジネスホテルシルクインにチェックイン。

 

「全国旅行支援」のクーポンをチャージ。

中央駅の真向かい、

バスターミナル地下に新装オープンした「かごっま屋台村」へ。

どこの店もにぎわっておりましたが、会社帰りの勤労者が仲間同士で飲んでいる風情。

なんとなく余所者が入り辛い感じでフロアをうろうろ。

あれこれ迷った挙句、

今まで鹿児島で口にしたことのなかったウナギを頂ける店に。

多様お高くてもよいかと、クーポンが後押ししてくれました。

で、お店で1押2押しの「ウナギの串焼き」「レバー串」を堪能。

こういうウナギの食べ方もあったのかと新発見。

お値段もお手頃で満足。

 

ほろ酔い気分でホテルに戻り、トロリとした温泉に浸かり、

明日からの行程を検討。

 

明朝は、いよいよ天草へ。

 

それは、屋久島の未来を探る旅でもあります。

 

鹿児島市内での学び】

◎ B・サークルさんで学んだこと

そこに流れる「時間」が何かを懐かしみたいお客さんの心を引き付ける。

ただ、そのためには古さを活かす工夫が必要。

 

◎かごっま屋台村で学んだこと

人工的で明るいフロアは清潔感があって若い女性に受けるかもしれない。

しかし、以前の屋台村の少しばかり怪しげな情緒が失われてつまらない。

防犯・防災上の配慮をしつつも、

ある種の猥雑さを醸す「飲み屋街」の雰囲気を凝らす工夫が必要。

 

◎シルクインで学んだこと

鹿児島の温泉は上質。

「鹿児島県公衆浴場業生活衛生同業組合」の『鹿児島湯巡帖』の企画。

かごしま銭湯・温泉郷

屋久島では「尾之間温泉」のみ登録。

もったいないことしきり。

屋久島支部:かごしま銭湯・温泉郷

ホテルの温泉も組み込むべきかと。

 

『御湯印帳』を手に温泉の道(=九州温泉道)を極める修行=「九州八十八湯めぐり」の企画ももっと知らしめても良いかも。

九州八十八湯めぐり~九州温泉道~ 

屋久島では「尾之間温泉」と「湯向温泉」が登録されていることを知っている島民は少ないかも。

九州八十八湯めぐり~九州温泉道~ | 鹿児島県対象施設

情報をどう発信するかが問われているのだとも。

 

つづく