屋久島六角堂便り~手紙

自然と人が織りなす屋久島の多様性を屋久島六角堂から折々にお伝えします

2021年 古事記の旅 第5回 小島の神々 ヒトが居てカミもまします

拝啓

古事記』は上・中・下の三巻構成。

上巻は、天地開闢に始まり様々な神さんが活躍し、神武が誕生するまで。

中巻は、神武から応神まで、倭建命(ヤマトタケルノミコト)が登場するヤマト族の征服史と新羅の王子アメノヒボコなど朝鮮との関わりを記した巻。

下巻は、古墳時代の仁徳から飛鳥時代の推古まで、歴代天皇の時代を記した巻。

ただ、

こうした『古事記』には登場しない神さんが八百万(ヤオヨロズ)いらっしゃるのが日本列島。

そんな神さんが集結しているのが島の最南端「ウラサキノハナ」がある小島集落のご案内。

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まずは、

Ⅰ.小島(菅原)神社

県道際、公民館の向いにある鳥居が「小島神社」。

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由緒書きには神社の栄枯盛衰が。

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祭神はオオヤマツミ菅原道真を祭り、「菅原神社」とも呼ばれ、かつて正月は島内各処からの参拝者で賑わったとのこと。

昭和49年に社殿を新築した際、大宰府から取り寄せた菅原道真公」の木製胸像がご神体に。

屋久島町郷土誌 第一巻 村落誌 上』5 小島村落誌 P1070には、

「旧暦11月1日と末日の二回、菅原神社に未婚の男女がこもり、主演をして一夜を過ごす」青年団の行事「夜ごもり」が紹介されています。

 

Ⅱ.村ヱビスさんたち

社殿左手には石碑と祠と自然石の神さんが鎮座。

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ガジュマルの木蔭の祠に収まっていらっしゃるのは「村ヱビス」さん。

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 屋久島の神と仏』(太田五雄・三橋和己著)P246によれば、「頭が欠けているのは。先の戦争の際、アメリカ軍による機銃掃射によるもの」だとのこと。

そのお隣の自然石の詳細は不明ですが、

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屋久島一周 里のイラストマップ』(絵と文 田中ミエ)P47には、「境内には水神、田の神、ヱビス様を祀り」とあるので、水神さんか田の神さんなのかも。

 

Ⅲ.浜ヱビス

公民館の左手、消防団の建物の横の公園を抜け、

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その先の小径を海へ下ると

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本の浜を見下ろす岬の突端に祠が一つポツリと。

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祠は空き家ですが、その前にまん丸な石が鎮座。

屋久島の神と仏』(太田五雄・三橋和己著)P246によれば「集落の人たちに話を聞くも、詳細を知る人はいまではだれも見つからない。……近年は漁師がいなくなり祀る人もいなくなった」「本の浜の海岸には……木製の『ヱえびす』が白い祠の中に祀られていた時期があったが、残念ながら台風でさらわれてしまった」とのこと。

苦難の歴史を背負った小島のヱビスさんですが、丸石の前には供えられていたペットボトルに何やらホッと。

えべっさんをお守りすることで、釣り人の安全を見守っていただきたいものです。

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Ⅳ.カトリック屋久島教会

公民館の手前を海側に折れると天に掛かる十字架が。

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鎖国をし、キリスト教が禁教とされた江戸時代、イタリアから布教のためにっ密入国したシドッチ神父が上陸した地を祈念して建てられたカトリック屋久島教会」

上陸記念碑はそのさらに先。

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そこからは太平洋が一望。

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この海岸線を見た時のシドッチの心境を想像するのもまた楽し。

 

2020年のクリスマスミサの様子はこちらの記事でご覧ください。

屋久島町郷土誌 第一巻 村落誌 上』5 小島村落誌P974~P976にもシドッチ上陸の有様が記録されておりますが、

シドッチ神父にご興味をお持ちの方には次の本が六角堂ちんたらBookCafeにもございますので、お茶のお供にどうぞ。

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古居智子著『密航 最後の伴天連 シドッティ』

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マリオ・トリチヴィア著『ジョバンニ・バッティスタ・シドティ』

 

県道に戻って坂を登り、集落の上の路を平内方面に進むと……

Ⅴ.三島大明神 理趣殿

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神社の由来が石碑に。

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その鳥居の彼方にはお地蔵様のお姿が。

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ススキを掻き分け足元に寄れば延命地蔵菩薩」と。

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繁茂するススキの様子から、神さんやお地蔵さんをお世話する方はいらっしゃらないかのよう。

屋久島の神と仏』(太田五雄・三橋和己著)では民俗神も含め、島の神さんを網羅されていていながら、この「三島大明神」については一行も触れられていないのは、何か事情があるからでしょうか。

ネットで検索すると宗教法人情報が出てきます。

三島大明神広島分祠 | JAPANESE RELIGIONS 

 

再び県道に戻って小島神社の尾之間寄り、

11月のコスモス畑と

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12月のヒマワリ畑に挟まれた県道際の海手に、

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不思議な石が。

Ⅵ.矢石 三の矢

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古事記の旅第2回」でご紹介した、ホオリの悪神退治の逸話で登場する矢石。

山幸彦(ヒコホホデノミコト)が悪神を射た三番目の矢がこの地に突き刺さったかのような石だとのこと。

一の矢は原に落ち、二の矢は尾之間に落ちたそうですが、尾之間のバス停「矢石」の辺りでそれらしき石を発見することはできませんでした。

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神話の世界は島の財産の一つ。

里めぐりを推進するのであれば、こうした「史跡」を必要なのでは。

 

で、替わりに見つけたのは、

世界人類が平和でありますように  May Peace Prevail on Earth」の白い柱。

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日本列島そこここに立っているので目にされた方は多いかもしれませんが、誰が何のために立てているのかをご存じない方も多いのでは。

関心をお持ちの方はこちらをご参照ください。

世界人類が平和でありますようにって何の看板? | 宗教.jp (religio.jp)

May Peace Prevail On Earth International (worldpeace-jp.org)

 

今回の小島を巡る旅では、カミさんとヒトの暮らしの結びつきについて改めて考えさせられました。

漁業が衰退するとヱビスさんも放置され、ヒトが減れば神社を中心に営まれていたコミュニティーも衰退する。

どの神さんを信じるか、どれもまったく信じないのかは別にして、カミさんがヒトとヒトとを繋いできたという事実は忘れないようにしたいものです。

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島の最南端「ウラサキノハナ」の絶景(廃園になっている「岩崎公園」の先っちょ)

敬具

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