拝啓
この数日、汗ばむような陽気の屋久島麦生の六角堂。
湿度も70%ほどあって、コロナウィルスには居心地悪そうなしっとり具合。
それでも庭の花々は次第に冬の装いへ。
ツワブキが黄色い灯りをともし始めました。
沢縁の野性の山茶花は清楚な出で立ち。
日向のカタバミはひっそり可憐に。
三番花の紫陽花はようやく最後の花仕舞い。
一方、ハイビスカスは相変わらずのパラボラアンテナ。
ウナヅキヒメフヨウ(スリーピングハイビスカス)は祭のボンボリ。
県道際を少し歩けば名前を忘れたヒマワリのような黄色い花が真っ盛り。
そうだそうだと思い立って、車を発進。
小島のシドッチ神父上陸記念カトリック教会の脇にある畑に向えば……
ヒマワリではなく、海に向って一面のコスモス。
振り返れば山裾に向って一面のコスモス。
その「いちめん」に山村暮鳥の詩が思い起こされ、深く溜め息。
風景 純銀もざいく
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
かすかなるむぎぶえ
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
ひばりのおしやべり
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
やめるはひるのつき
いちめんのなのはな。
コスモスは秋桜、英語でcosmos=秩序。
これが転じて「秩序と調和とを持つ宇宙または世界」を現す言葉に。
花言葉は「調和」。
多様な自然と多様な人々が暮らし織りなす屋久島にふさわしい花畑だと感慨に耽りつつ、
そうだそうだと向かった先は……
空気が澄んでいればトカラ列島の北端の島が臨める栗生のCAFE La PONTOさん。
陽が傾いても汗ばむ陽気なので、
「冷たいぜんざいソフトクリーム乗せ 抹茶」とマグカップの珈琲を注文。
宇治金時のソフトクリームバージョンに満足。
たっぷりの珈琲を啜りつつ思いを巡らせたのは“COSMOS”について。
屋久島の近海では、このところキナ臭い匂いが漂うことしきり。
先月末から今月初めにかけて屋久島の南方、
十島村の無人島「臥蛇島」では自衛隊と米軍が共同演習していたばかり。
防衛省は臥蛇島を「離島奪還作戦を行える初の訓練場を整備する候補地」としており、
11月1日には鹿児島県の徳之島の防災センターに「野戦病院」を設置して負傷者を熊本県まで搬送する自衛隊史上初の訓練も。
しかし、屋久島でこの話題を耳にすることが無いのは何故か?
方や屋久島の北方、
種子島の西方にある無人島「馬毛島」では米軍演習場を兼ねた自衛隊基地建設を巡って住民の意見が真っ二つ。
西之表市長は計画への反対の意思を表明。
及ばずながら、私も二通の申し入れ書に署名を。
屋久島町長&町議会議長宛と
鹿児島知事宛。
ただ、署名する思いの底にくすぶるのは、
「馬毛島に」基地を作らせない、「馬毛島を」守ることへの違和感。
馬毛島の基地問題はそもそも沖縄の普天間米軍基地の代替え候補だったり、
小笠原の硫黄島で行われている米空母艦載機離着陸訓練場の代替え地として起こったもの。
それに輪を掛けて中国の脅威を強調し、
その代償として、
「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法」が施行されてから、
特定有人国境離島地域社会維持推進交付金により飛行機や高速船などの運賃割引(離島カード割)の他、様々な特典も用意されたアメ玉政策が各地域で実施。
屋久島町でもその恩恵は拡がっています。
そうした中、
全国津々浦々の有人国境離島からは様々なつぶやきが聞こえてきます。
日米安保は仕方が無いが、近所に米軍基地は来ないでほしい。
中国の脅威に対抗せねばならぬが、観光地や移住先としての魅力が削がれるのは困る。
若者の貴重な就職先として自衛隊があるのだから、表立って反対するのはどうも。
離島住民には国防と地域振興をセットにした離島政策に対してどのような視点を持ち、どう向き合うのかが問われています。
そして日本国民すべてに、日本に米軍基地を展開させている日米安保条約の是非、自衛隊の増強の是非、緊張高まる国際社会における国防の在り方が問われています。
地域住民が「国策の犠牲」となるのは戦前・戦中に限らず、軍事基地に限らず、ダム、空港、原発、核廃棄物処理場、etc.
その一つとしての馬毛島問題。
国や地域を超えた平和の希求、利害や利権を超えた住みよい社会の共有。
それをどうやって構築していくのか。
La PONTO(架け橋)さんの軒下でクルクル回る螺旋を眺めつつ、
どうしたもんかと珈琲を啜る初冬の夕暮れでした。
馬毛島を守ることは、地球上で細やかな暮らしを営む多様な命を守る小さな一歩。
今宵は、書棚からヘミングウェイの『武器よさらば』を掘り出して、再読してみようかと。
敬具