何やら楽しげな七福神が乗った宝船。インドや中国からやってきたヒンドゥー、道教、仏教由来の6人の神さんと日本在来の恵比寿さんが仲良く相乗りしたちゃんぽん船。それは古くから住む島民と新たに海を渡ってきた移住者が混じり合って暮らす屋久島のようです。
島の港のある集落に祀られる恵比寿さんのお姿から、島の暮らしも見えてきそうです。
拝啓
この林の中に入る石段が二手に分かれていて、それぞれの先に恵比寿さんがいらっしゃいます。まずは左手。
素朴な祠で、恵比寿様のお姿も自然石そのままのようなシンプルさ。それとも風化して石の姿に戻りつつあるのでしょうか。
いったん浜まで戻って、右手の階段を上ると比較的新しい祠があります。
祠は新築ですが、鎮座されている恵比寿さんは、先の恵比寿さん同様お顔も抱えているはずの鯛も、携えているはずの竿も分からず、ひたすらゆったりと構えていらっしゃいます。
海風や潮や雨に永年さらされて島の自然と同化しているかのような志戸子の恵比寿さん。よいお姿を拝見できて幸いです。
漁港とは思えないほど澄んだ海に浮かぶ漁船。その背後に連なる穏やかな山腹。島の恵みを一目で見渡したような温かさに包まれています。
そうそう、志戸子には硯(すずり)にすれば日本一と言われる津森石が産出される海岸があります。その海岸にそそぐ川の名は成田川(なったご)。これも何かのご縁かと、しばし海を眺めておりました。
この特集のまとめとして訪れた恵比寿さんを以下紹介いたします。ひょっとしたら、今回ご紹介できなかった恵比寿さんが、まだ島のどこかにいらっしゃるかもしれません。また『屋久島一周 里のイラストマップ』に載っていながら平内の恵比寿さんをお見かけすることができなかったのが心残りです。消息をご存知の方、ぜひご連絡ください。
第一回 尾之間の「村恵比寿」さん「浦恵比寿」さん「浜恵比寿」さん、原(はるお)の恵比寿さん、麦生(むぎお)の一対の恵比寿さん
第二回 宮之浦の一対の恵比寿さん
第三回 楠川の「へたの恵比寿」さんと「オキの恵比寿」さんに椨川(たぶがわ)の「岡恵比寿」さんと「浜恵比寿」さん
第四回 小瀬田と安房の恵比寿さん
第五回 湯泊と中間(なかま)と栗生(くりお)の恵比寿さん
第六回 永田の前浜の恵比寿さんと田舎浜の恵比寿さん
第七回 吉田の浜恵比寿さんと岡恵比寿さん
第八回 一湊(いっそう)の一対の恵比寿さん
第九回 志戸子の一対の恵比寿さん
島に暮らす誰もが恵比須顔で日々を過ごせることを願ってやみません。そのためには、時には恵比寿さんを詣でて人も自然の一部であることを思いだすことが大切なのかもしれません。
敬具