屋久島六角堂便り~手紙

自然と人が織りなす屋久島の多様性を屋久島六角堂から折々にお伝えします

屋久島カレー事情 第7回 南蛮の香り受け継ぐカレー蕎麦 熊毛郡ゆかりの南蛮蕎麦

拝啓
 
気圧の谷が通過した屋久島は、朝から大粒の雨がザットと降ったり雲間から陽が差したりで忙しい一日でした。
 
少しばかり余裕のあった今日、次回のイートハーブのカレーの仕込みに必要な材料調達の買い物を兼ねて、二軒のお蕎麦屋さんを梯子しました。
目当てはもちろんカレー南蛮です。
 
なぜカレー南蛮かといえば、こじらせた風邪がようやく回復気味になったので、風邪にも体調改善にも効く長ネギの入ったスパイシーな蕎麦を食べたかったからです。
 
「南蛮(ナンバン、またはナンバ)」とは本来、古代中国で南方の異民族に対する蔑称です。
日本では室町時代から江戸時代にかけて、シャム・ルソン・ジャワなど南方諸地域の総称となり、それらの地域を経てポルトガル人やスペイン人などが渡来したため、その本国や植民地をも南蛮といい慣わしてきました。
 
それで一般に「南蛮」は、唐辛子や長ネギのことを指し、それを使用した料理関連の言葉に「南蛮」の語が使われることが多いようです。
「南蛮料理」という表現は、16世紀にポルトガル人が種子島にやってきた時代以降、様々な料理関係の書物や料亭のメニューに現れていたとのことで、この屋久島のある熊毛郡ゆかりの料理といえます。
唐辛子は別名「南蛮辛子」。
「南蛮煮」は肉や魚をネギや唐辛子と煮た料理で、カレー南蛮(ソバ・ウドン)もこの一種。
「鴨南蛮」は鴨肉と長ネギの入った蕎麦を差します。また、「南蛮漬け」はマリネやエスカベッシュが原型とされています。
 
つまり「カレー南蛮」は、唐辛子の入ったカレースパイスと長ネギを使い、カレー粉を蕎麦のつゆでのばし片栗粉でとろみをつけた汁をかけた蕎麦のことをいいます。
元祖は新宿区馬場下町蕎麦屋「三朝庵」の初代店主のようです。
 
しかし、そうした“常識”を覆してくれるところもまた、屋久島のお店です。
 
先に行ったそば屋は宮之浦の「楓庵」。
 
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以前年越し蕎麦を食べに行ったことがありますが、カレー南蛮は初挑戦。
「カレー南蛮を一杯」と注文すると「蕎麦ですかうどんですか?」の問い。
もちろん蕎麦でお願いしました。
楽しみに待っているとほかほかの湯気とともにいい香りの蕎麦が運ばれてきました。
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とろんとしたカレーの上に何故かほうれん草が載っていて、ネギは薬味の扱いで小皿に入っていました。
ネギをふりかけ、蕎麦をほぐして口に運ぶと穏やかなカレーの味わい。
意外だったのが、肉が牛肉で、中に入っていたのは長ネギではなく玉ネギだったことです。
 
美味しくいただいて、次に向かったのが安房の「きらんくや」さん。
いつ行っても売り切れかお休みばかりで、なかなか食べることのできない店でしたが、今日はヒットしました。
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込み合った店内でしたが脇にある座敷に通してくださり、「カレー南蛮」と注文すると「カレー蕎麦ですね」との返答。
待つことしばし、湯気の立った上品な香りの蕎麦が運ばれてきました。
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カレーは控えめで、蕎麦の出汁が引き立つようなあんかけ具合が店の主人の趣味を感じさせます。
肉は豚肉、ねぎは長ネギ。汁も底まで残らずいただきました。
 
「カレー南蛮」で元気を少しばかり回復し、次の日曜日の六角堂香草食堂スパイシーブックカフェ・イートハーブでも、ご来店下さるお客様に元気付けができるようなカレーを作らなければと思う一日でした。
 
敬具