拝啓
今年の屋久島の梅雨は結構メリハリが効いていて、豪快。
そんな島の其処此処に、
よく似た葉っぱのよく似た花を三種見掛けます。
すべてショウガ科ハナミョウガ属の仲間。
高さ2mほどにもなり、
垂れ下がった花はゴージャスで濃い色合い。
名前は台湾での現地名で、漢名の「月桃」の読みから。
また、花の蕾が桃のような形をしていることから「月桃」とも。
沖縄県ではサンニンとも呼ばれ、葉にムーチーを包んで蒸したり、
香り付けを兼ねて饅頭の包装に使用されたり、
肉や魚を包んで蒸し焼きにしたり、
ブルーシールアイスクリームのフレーバーの一つにもなって大活躍。
葉から抽出した甘い香の精油はアロマオイルや香料として使用され、虫よけにも。
種子は乾燥させ、主に健胃、整腸の効果を持つ薬として使用。
さらには高い植物ウイルス防除効果もあるとか。
■ アオノクマタケラン(青野熊竹蘭)は
背丈が1mほどしかなく、
上に向かって伸びる花は小振りで淡い色合い。
屋久島では葉をおにぎりを包むのに使用していたとの事。
マキノハといって、法事のときに団子を作るのに使ったり、
お盆の時期には砂糖と米粉を団子にしたものを葉に縦に巻いて香りを移したり、
生魚の下に敷いたり、
島では暮らしに馴染んだ植物。
赤い実の中の種子は黒手伊豆縮砂(クロデイズシュクシャ)と言い、
伊豆縮砂の代用として、芳香性健胃薬や香辛料として使用。
アトピー、アレルギー、炎症、皮膚のかゆみの抑制効果も。
■ クマタケラン(熊竹蘭)は、
背丈ほどの高さになり、
花は斜め上向きに付き、ゲットウとアオノクマタケランとの中間のような色合い。
以前は独立種とされていたそうですが、
最近ではゲットウとアオノクマタケランの雑種とされているとのこと。
ゲットウの葉には縁にも主脈にも毛があるのに対し、アオノクマタケランにはなく、
クマタケランはその中間という感じ。
奄美では昔からクマタケランを薬草ハーブとして使用してきたようですが、
屋久島での活用例は見つけられませんでした。
知り合いの方に「ゲットウの株を分けてほしい」とお願いしたところ、
「好きなだけ持っていけ」と言われて持ち帰り、
六角堂の庭に移植したのですが、花を付けたらクマタケラン。
農家の方でもゲットウとクマタケランの区別をされていない方もいらっしゃるようで。
私自身、三種を区別できるようになったのは、農道や林道をテクテク歩くようになった最近のこと。
三種の区別について詳しく知りたい方は、下記サイトをご参照ください。
★ 株式会社 恵命堂:
★ 園芸手帳:
ゲットウ クマタケラン Alpinia ショウガ科(Zingiberaceae)
ゲットウ クマタケラン Alpinia ショウガ科(Zingiberaceae)
★ First Qualia:
ゲットウとアオノクマタケランとクマタケランの比較 – First Qualia
★ 野の花賛花
また、
★ シェルゥーム
アオノクマタケラン肌研究|アトピー、アレルギー、炎症、皮膚のかゆみの抑制
★ 奄美ハナハナ
さてここで、
もう一度ショウガ科の植物についておさらい。
ショウガ科は地下茎のよく発達した、面白い形の花を持つ単子葉植物の一群。
ショウガ科の
ショウガ属には
ショウガ
ミョウガ
ナンキョウ(ガランガル)
ウコン属には
ウコン(秋ウコン、ターメリック)
キョウオウ(春ウコン)
ガジュツ(紫ウコン)
ショウズク属には
グリーンカルダモン
アモムム属には
ブラックカルダモン
先ほどご紹介した「株式会社 恵命堂」のHPには、
ショウガ科やウコン以外の島の薬草も多数紹介。
ここではユリ科のサツマサンキライとサルトリイバラの紹介も。
海岸近くの林内に見られる常緑のつる性低木で、2種とも葉が似通っていて、
島では両方の葉を「カカラ」とよびカカラ団子を作ります……と。
ミョウガやナンキョウ、カルダモンの栽培は寡聞にして存じませんが、
ウコンは島の特産物。
屋久島はハーブ&スパイス=薬草とアロマの宝庫
=薬島となる可能性大。
事実、「屋久町郷土誌 第二巻 村落誌 中」の
原村落誌 2集落沿革図 (1)明治四十年頃(60ページ)には、
「旧薩摩藩薬草園」が現在の神山小学校と原グランドの位置に記されています。
この薬草園に関する資料を、どなたかご紹介いただければ幸いです。
また、
多くの島民には知られていないようですが、
お隣の種子島には
「薬用植物資源研究センター 種子島研究部」が存在。
屋久島の「新たな生活様式」を構想・構築する一つの手がかりとして、
薬草に注目してみたいと思うのは、
私ひとりではないはずだと。
近い内にこの続編を。
敬具