の続編です。
拝啓
前回、麦生漁港の
女性名船のご案内で少しばかり触れた、
麦生漁港海浜計画。
麦生漁港はGWともなれば、
海に注ぐ川面を蛍舞翔ぶ幻想的なスポットに。
島の歴史が詰め込まれた「廃船」を
オブジェのように配置し、
島の様々な個人事業主がアイデアを出し合って、
お洒落かつ、持続可能な海浜公園にリニューアル。
それについて
「トマソン的視点」からもう少しばかり提案を。
その糸口となる本(雑誌)がこちら。
GAKKEN MOOK ファミリー版「YUU」 親子で自然に親しむ
「水辺遊び図鑑」野外倶楽部 初夏の号
1993年6月1日学習研究社発行なので、もう27年前の雑誌。(物持ちの良いこと)
小学生の息子二人を遊びに連れて行くために買ったガイド本。
危険度の低い水辺で
子供を遊ばせたいというのは、
街のみならず、
島に暮らす親の共通した願い。
そして子供は大概「虫」好き。
だからこそ、
大特集は
「全国 ほたる見 ガイド」
そこには、以下のような町の紹介も。
「桜と水とホタルの里」(佐賀県)
……麦生の公民館裏「桜とホタルの里公園」とそっくり。
……ホタルはよい自然環境のシンボル。
「ホタル舞う潮風の町」(千葉県)
……麦生の漁港、笠松川では蛍が乱舞。
「大ウナギとホタルの川」(徳島県)
……春牧の「みち草」で食べられます。
「湯けむりとホタル」(北海道~鹿児島県)
……湯泊温泉の近くでもホタルが明滅。
これを見るだけでも、
屋久島に眠っている「財産」に気付かずにはいられないはず。
ところが、
麦生漁港を隅から隅まで散策したことのある人は、
島民でも少ないかも。
特に、
ホタル飛ぶ
笠松川の河口を
観たこと無い方もいらっしゃるかと。
これがまた、実に面白い。
何と、
川は不気味なほど高い防潮堤の足元を
潜り抜けて海へと流れだす。
ちょうど潮の満ち始めだったので、
川は逆流。
防潮堤に開く「穴」が何やらトマソン的ではありませんか。
そしてその脇の階段。
「防波堤内立ち入り禁止 屋久島町長」のプレートの脇にある階段は、
防潮堤の一番上には通じていません。
察するに、
防潮堤をかさ上げする前に作られた階段なのかと。
一方、
それを知っているわずかな町民が
ホタル鑑賞する笠松川橋の下は、
上からは想像もできないような、よい風情。
麦生公民館裏の
「桜とホタルの里公園」は、
のんびり弁当を食べるには良いところですが、
なにせ川へは降りられないのが悲しいところ。
ここなら、専門家の指導を仰いで十分な安全対策をすれば、
小さなお子様連れのご家族も安心して遊べる水辺を造れるのでは。
ヱビス様の向いにあるような危険防止の看板を
そこら中に立てるより、
島民の健康や教育・福祉の場、
安全に、
豊かな人間性を育てるを整備することが、
観光のお客様たちも楽しめる場を産み出すことに直結。
ただ、
島中に作られてはトマソン化するばかりの施設が溢れているのが島の現実。
それは、
施設を維持・管理する人手と金が保障されていないからかと。
だから、
「公共事業で土建屋だけが儲かった」との陰口ばかりがうず高く。
そこで、
島民の安心安全なお楽しみの場を、
お金を産む場に仕立てることが必要。
その重要な役割を果たすのが、
陸に上がった船たち。
前回のブログでは、
陸に上がった女性名の漁船を紹介しましたが、
実は、
それ以外にも廃船状態の船が何艘も。
こうした海に帰ることを辞めた船たちを
島の漁の歴史を伝える記念物として
保存するだけでなく、
観光地には絶対必要な各種施設として
利用する。
例えば……
・トイレ
・売店
・更衣室やシャワールーム
・釣り竿、ライフジャケットなどのレンタルショップ
新しいものを作るより、
次のような経済効率・集客効果も高いかと。
① 漁船の再利用だからこそ湧き上がる情緒がたっぷり。
② 台風や津波で流されても、再利用や代替えが効きやすい。
③ 廃船処分の費用を船主が負担しなくて済む。
④ 廃船処理に困っている他の漁港の船も引き取る。
ただし、
いわゆる「田舎臭くてチープな印象」で長続きせず、
廃れてしまうのも全国の教訓の一つ。
また漁港は漁に出る船の利便が本来の機能のため、
様々な調整も必要。
ここで肝心なのは、
どこかの企業に開発から運営まで丸投げしないこと。
十分な採算が取れなくなると
あっさり撤退して廃墟が一つ増えるというのは、
すでに島でも実証済み。
そこで、
企画、整備、運営は
① 旅行経験と子育て経験豊富な島民からアイデアを募集。
② 島在住、あるいは島のことを熟知している方にマスタープランの作成依頼。
③ 自分たちの施設、生活手段の場として利用される方の労力を借りる。
④ 漁協や麦生区を含め、利用者事業者が作る団体で管理・運営。
⑤ 町役場は可能な限りの関係機関との調整をし、補助金を捻出する。
すでに、
麦生周辺には
千尋&トローキの滝といった観光名所が存在し、
ポンタン館やポタニカルガーデン、
ゲジベイの里などの観光施設に加え、
個人事業主が経営するショップも点在。
島ではまれな鮮魚店に加え、
農家さんの無人市も多数。
さらには遊漁船が磯釣りの瀬渡しや船釣りサービスも。
こうした事業者に加えて、
島にはない「シーカヤックと海遊びの基地」を新設し、
ガイドショップの参加も。
島在住者に加えて、それらのお楽しみを求めるヒトは、
① 縄文杉登山よりも水遊びを求める3泊程度のお子様連れ。
② ゆっくり休暇を楽しみたい1週間程度ご滞在のカップル様。
③ テレワークを利用して長期滞在するお一人様。
④ 島の外で暮らし、休暇を故郷で楽しみたい元島民。
そうした
多様なご滞在形式に対応できるお宿は周辺にいくつも。
この企画のイメージは、
単なる一つの施設整備というよりも。
海浜公園を核とした、
中小企業や個人事業主が協同・協業する広域商店街の創出。
どこかからか、借り物をもってきたり偽物を作るのではなく、
眠っていたものを呼び覚まし、
潜在力を発揮させる営み。
様々な利権や価値観の違いを乗り越えて、
それぞれの持ち味やポリシーを尊重しつつ、
互いに接点を見出し、
同業・異業もお客様も地域住民も、
すべてがWin,Winの関係で繋がり合うことを目指したいもの。
今は荒涼たる荒れ地の船捨て場。
その「広場」を
ドクターヘリの場外離着陸場としてしか使わないのはもったいない。
ホタルの飛ばない季節には、
屋久島総合自然公園のそれとはまた、
一味違った海辺風の屋根付きステージで、
様々な歌や踊りが演じられ、
素敵な島のデートスポットが生まれたら、
どんなに楽しいことでしょう。
それは安全のためとはいえ、
無粋な防潮堤で視界を遮られ、
かつての情緒を失った浜を再生すること。
※「屋久町郷土誌 第二巻 村落誌 中」P368より
祖父母の代に「かつてあった生活様式」の記憶が
島から消えてしまう前に、
それを、あたかも標本箱の様に「保存」や「伝承」するのではなく、
日々の暮らしの中に新たな形で再生し、
創造的な生産活動につなげる運動が
生まれることを願っております。
麦生だけでなく、
それぞれの集落の地勢や文化にふさわしいアミューズメントゾーンを島の要所に拡げていく。
そんな構想が、
島の「新しい生活様式」を支えて行ければ幸いです。
次回は、
中間・小島集落を舞台に、もう一つのプランをご案内できればと、
妄想は限り無く拡がります。
敬具