屋久島六角堂便り~手紙

自然と人が織りなす屋久島の多様性を屋久島六角堂から折々にお伝えします

驚きに出会いて島のホーホケキョ 街の常識と島の常識を覆す一品発見

拝啓

島に吹く風も北西から南東に変わり、春を越えて一気に初夏のような陽気が訪れています。県道では「わ」ナンバーの車も目立ち始め、ポンカンの収穫を終えた島の暮らしも観光モードへと移行しつつあるようです。

そんな島で小洒落た飲食店の多くは移住者によって営まれていますが、地元のおばちゃんやおっちゃんが島風の味を振るっているお店を訪ねるのも、島を訪れる楽しみの一つ。

そうしたお店の一つだった麦生の「むいごっ娘(こ)」さんが先日閉店してしまったのは何とも残念ですが、島の北側、志戸子島のおっちゃんが営むたこ焼きとお好み焼きのお店が誕生したと耳にし、足を運びました。

志戸子公民館の向かい、消防団の建物に隣接した小さな小屋にたこ焼きとお好み焼きの幟がはためいていました。

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入口かと思った扉を開けるとそこは倉庫のような作業場。壁に沿って左に回ると、「こちらからお願いします」の札があり、

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『ココ一番』の店名とメニューが書かれた板がぶら下がって。窓を開けるとご主人は床に寝そべって昼寝中。遠慮がちに「すんません」と声を掛けると、のっそり起き上がって「いらっしゃい」。

豚玉イカ玉を注文すると、「今から下ごしらえしてから焼くので25分か30分待ってもらわないといけないがよろしいか」とのこと。「全然平気」と答えて、周りをぶらぶら散策。

「志」を胸に立つ年季の入ったゆるキャラに挨拶し、

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「志戸子ふれあい夢人館」を覗いて高菜漬けを一袋頂き、

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海抜9mの表示を見ては南海トラフの大地震で津波が襲ったら、ここも流されてしまうのではと心配しつつ、店に戻るとボチボチ焼きあがり。50分ほど掛る麦生まで持って帰っては冷めて不味かろうと、宮之浦の知人の所で一緒に試食することに。

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左がイカ玉、右が豚玉。厚さ15mm以上はあるボリューム。切り口をお見せしたら、このお好み焼きがどのような食感かはっきりお分かりいただけるのですが、食欲に負けて写真を撮らずじまい。具の豚肉もイカも肉厚で食べ応えがありました。

ただ、初めて日本のカレーを食べたインド人が「このスパイスのにおいがする食べ物は何という食べ物ですか?」と尋ねたという逸話と同じく、関西人がこのお好み焼きを食べたら「このお好み焼きソースが塗ってある食べ物は何という食べ物ですか?」と聞かれるかも。

40年以上前、名古屋から京都の大学を受験するためにやってきた近鉄丹波橋の立ち食いうどん屋でうどんを注文した時、うどんの出汁に色がついていないのにショックを受け、道連れの友人と「立ち食いうどん屋だからこんな出汁なんだろうな」と勝手に納得したことがあります。

うどん一杯でも麺の太さ硬さ、出汁の取り方具の組み合わせは地域によって様々。ラーメンは言わずもがな、お好み焼きもまたなお然り。雑誌に紹介されるような地元の食材を駆使したグルメと出会うのも結構ですが、旅の楽しみは自分の日常を支配している常識を打ち破られることにあり

さすればこのモッチリとした団子のような食感のお好み焼きも、島の文化の貴重な体験となることでしょう。

「シトコ一番  屋久島焼き」と名付けた方が良いかと思いもしましたが、観光客にカルチャーショックを味わっていただくには「ココ一番 お好み焼き」のままのほうが良かろうと思い直した次第です。

さて、「志戸子 夢人館」で頂いた高菜漬け。

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島のあちこちの無人市で置かれていますが頂くのは初めて。具を入れない白ご飯だけのお握りを包んでいただくことに。

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酸味の少ない屋久島風ですがほど良い塩加減で思いのほかの絶品。島の飲食店がメニューに加えないのは、島の人にとってあまりにありきたりで商品価値を感じられないからでしょか?

100円の高菜漬けで少なくとも6個のお握りを包めます。この味なら一個150円でも買った人は損した気にはならないでしょう。6個で900円。ご飯代を含めても原価は300円ほど。唐揚げや飛魚のすり身で作ったつけ揚げばかりに流されず、こんなお握りを弁当のメニューに加えれば喜ばれること請け合い。

縄文登山がそうであったように、島で暮らす人々が気づかないお宝はまだまだ眠っていると確信した高菜漬け巻きお握り。

ご馳走様でした。

敬具



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3月後半の営業予定は

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20㊊・21・22㊌・・25朗読会あり
26・27㊊・28

どうぞゆるりゆるりとお過ごしください