屋久島六角堂便り~手紙

自然と人が織りなす屋久島の多様性を屋久島六角堂から折々にお伝えします

聞こえるか 海の向こうのいただきます

拝啓
 
今日も屋久島麦生はぽかぽか陽気。母屋の軒下で朝ご飯を食べていると正面から朝日が差して肌がちくちく焼けるようです。
 
さて、第43回1月25日(日)・第44回26日(月)・第45回27日(火)の六角堂スパイシーブックカフェ・イートハーブのカレーメニュー、2月の第一週と第二週はお休みをいただくため、頑張って四種類。
 
定番のキーマナスとミックス豆カレー以外に、好評のパニール(自家製カッテージチーズの素揚げ)入り麦生産ホウレン草カレーと久しぶりの屋久島産養殖車海老Sサイズ載せエビカレーをご用意します。
 
ターメリックライスが無くなった時点でカレーは売り切れ御免です。カレーやタンドリーチキン、トッピーハンバーグなどの具材が残っていれば、お好きな具材の組み合わせで「わがままホットサンド」を召し上がって頂けます。焼き菓子も各種ご用意いたしておりますので、コーヒーやマサラチャイといっしょにお楽しみください。
 
また、店内には「屋久島神山四年新聞」とリーフレットも展示しております。ご来店の際には是非ご覧ください。
 
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イートハーブはカレー屋さんではなく、スパイシーブックカフェ。島の本屋さんや図書館では手に取りにくい本をたくさんご用意いたしております。その今週の絵本特集は『イスラム』です。
 
のんびりした島の水平線の向こうでは、貧困や飢餓や伝染病で命を繋ぐことさえままならない人々があふれています。そして今日も正義の名のもとに人が人を殺し、膨れ上がった憎悪と不安の渦巻きはとどまるところを知りません。
 
今回の「イスラム国」による日本人拘束と身代金の要求事件は、そうした「対岸」の出来事を少しだけ意識させてくれました。
 
「暴力」で何かを実現しようとするのは、それがどこの個人であれ国家であれ許しがたいことです。ただ、一番気をつけなければならないのは、無知がもたらす不安や日頃のうっぷん晴らしによって、見当違いな憎悪を掻き立て相手をけなしたり悪者に仕立て上げたりすること。そしてそうした言動にうっかり乗ってしまうことです。
 
そうならないために一番大切なことは、どこの国の何人であろうと、それは私たちと同じように泣いたり笑ったりしながら日々を過ごしているオネエちゃんやオッチャンやオバアちゃんなのだということを忘れないこと。そして私たちとは違った歴史や文化や習慣や信仰を私たちと同じように大切にしているということを、お互いに尊重し合うことです。
 
そのちょっとしたきっかけになればと思っての『イスラム特集』です。ムスリム(イスラム教徒)は70億人いる地球人の5人に一人、約16億人。世界各地で暮らしていますが、今回はイラン、イラク、アフガニスタン、トルコ、インドネシアが舞台になった絵本をご紹介いたします。
 
■ 『イスラムの王子』
 
作:キャロル・バーカー、訳:宮副裕子、発行:ほるぷ出版1979年初版
 
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1000年以上前のイスラム帝国を舞台にしたこの一冊はもう古本屋さんでもなかなか手に入らない絵本。イスラムの人々(ムスリム)共通の願いに触れることができます。
 
■ 『勇者プーリア』
 
作:アリー・アクバル・サーデギー、訳:黒柳恒夫、発行:ほるぷ出版1979年初版
 
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原作はイランの「青少年・幼児知的教育協会」が出版元。イランの子供たちがどんな「昔話」に親しんでいるのかを知る手掛かりになります。
 
■ 『ごきぶりねえさんどこ行くの?』
 
再話:M.アーザード、絵:モルテザー・ザーヘディ、訳:愛甲恵子、発行:ブルース・インターアクションズ2006年初版
 
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イランでよく知られた昔話をファンタジックな絵で再構成した楽しい絵本です。
 
■ 『バスラの図書館員 イラクで本当にあった話』
 
作:ジャネット・ウィンター、訳:長田弘、発行:晶文社2006年初版
 
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「この絵本が好き!2007年版」(平凡社刊)でベスト4位、やまねこ翻訳クラブ絵本部門大賞を受賞した絵本。2003年にアメリカを中心とした「連合軍」がイラクに侵攻した「イラク戦争」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%AF%E6%88%A6%E4%BA%89)が舞台です。
 
イラク戦争開戦の時、アメリカ大統領ジョージ・ブッシュはイラクをテロ支援の「悪の枢軸国」と呼び、時の日本の総理大臣小泉純一郎は「アメリカの武力行使を理解し、支持いたします」と表明しました。しかし、イラク侵攻の口実とされた「大量破壊兵器」は結局存在しませんでした。
 
その挙句、連合軍の死者は4,000人以上、イラク軍の死者は8,000人以上、およそ500,000人の民間人が犠牲になったとする調査報告もあります。戦争はいつも、武器も持たず、どこにでもいる普通の人の命をあっけなく数えきれないほど奪います。
 
■ 『サニー、アフガニスタンへ 心をこめて地雷ではなく花をください』
 
文:柳瀬房子、絵:葉祥明、発行:自由国民社2002年初版
 
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繰り返された戦乱で埋められた地雷が、アフガニスタンの人々の暮らしをどう変えてしまったのか、そして日本にいる私たちに何ができるのかを知ることができます。
 
■ 『絵本 世界の食事』
 
第10巻『トルコのごはん』
文:銀城康子、絵:高松良己、発行:農文協2008年初版
 
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第17巻『インドネシアのごはん』
文:銀城康子、絵:加藤タカ、発行:農文協2009年初版
 
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トルコもインドネシアもムスリム(イスラム教徒)が多数を占める国です。食べることは生きることの基本。ごはんを知ることは「イスラム」を知る大きな手掛かりとなるはずです。
 
太平洋の西の端にへばりついた小さな島国日本の、その九州の南に種子島と対になってぽつりと浮かぶ屋久島の、そのまた南東の端にある小さな小さな六角堂イートハーブから、一杯のコーヒーと共に多様な世界を覗いていただければ幸いです。
 
敬具