屋久島六角堂便り~手紙

自然と人が織りなす屋久島の多様性を屋久島六角堂から折々にお伝えします

森にいて杜の守する流し虫

拝啓
 
「今年は虫の外れ年だ」と昨日聞いたばかりでしたが、今夜八時ちょうどに六角堂にもやって参りました『流し虫』。
六角堂の母屋から約30m離れた街路灯に降りしきる雪のように群がっていました。
写真はNikonD80にタムロンの300mmズームを付けて撮影したものです。
 
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屋久島では梅雨のことを「流し」と称し、その時に大発生する虫なので流し虫と呼びならわしているそうです。
湿度と温度がともに高い、モワ~っとした日の夜ちょうど8時頃、大群で押し寄せるので「8時虫」と呼ぶ人もいるようです。
 
「流し虫」などというと風情を感じますが、その実態はイエシロアリ。
学名はCoptotermes formosanusで、シロアリ目(等翅目)ミゾガシラシロアリ科に分類されるシロアリの1種です。
同じ幼虫が女王アリや働きアリに分化する中、交尾をするために羽をもった羽アリになったのが流し虫。
他のシロアリと同様社会性昆虫で、集団をなし、枯れ木や朽木を食べその、内部に巣を作ります。
特に湿った木材を好み、巣は木材に掘られた巣穴と、木材の外に続く巣穴に作られた塊状の巣からなるそうです。
巣は湿ったところの地下に作られ、そこからあちこちの木材へとトンネルを繋げ、大規模に食害するとのこと。
一群を構成する個体数は、最大で100万に達するそうです。
 
有限会社ハクエイシロアリさんのサイトに、その生態が詳しく紹介されているので、一部転載させていただきました。
シロアリは、アリの仲間ではなくゴキブリの仲間だということを知る人は少ないのではないでしょうか。
 

1. シロアリとアリの違い

体形や生活がアリに似ているためシロアリという名がついていますが、
シロアリはゴキブリの仲間で、アリはハチの仲間です。
 
  1. アリの触角は「く」の字をしていますが、シロアリの触角は数珠状になっています。
  2. アリの翅は前翅の方が後翅より大きいのに対し、シロアリの翅は前翅・後翅ともにほぼ同じ大きさをしています。
  3. アリは腰の部分がくびれていますが、シロアリは寸胴な体形をしています。

2. ヤマトシロアリ・イエシロアリの分布

 
日本には、22種類のシロアリが生息していますが、建物を加害するのはわずかで、代表的な種類として、日本全土的に生息するヤマトシロアリ、関東以南に生息するイエシロアリです。

そのほか、乾材シロアリの仲間であるアメリカカンザイシロアリやダイコクシロアリの被害も増えてきている傾向にあります。

3. シロアリの生態・種類

シロアリは社会性昆虫で、女王~働きアリなどの階級がありヤマトシロアリの場合、
下図の通りとなります。
 
シロアリの種類
イエシロアリ
兵蟻:4~6.5mm程で頭部が卵型で威嚇すると乳白色の粘液を出す
職蟻:3~5mm程
有翅虫:7~9mm程(大部分は黄褐色)
多湿なところを好み、土中や建物内に塊状の巣を作ります。
6月~7月の雨が上がった日の夕方頃から光に向かって有翅虫が飛び出します。
 

4. シロアリの階級ごとのお仕事

女王・王
交尾・産卵により子孫を増やします。女王の腹部は産卵につれ肥大していき、イエシロアリでは体長40㎜に達することもあります。
寿命は10~15年程で、一生の間に100万個以上の卵を産みます。
副女王・副王
女王や王の死や傷ついた場合に副女王・王が代わりに女王・王になります。
兵蟻
外敵からの防衛が役目で、巣の2~3%をしめます。
職蟻(働きアリ)
最も多い個体数で全体の90~95%をしめます。
巣や蟻道の構築や修理などをする他、餌の採取や他の階級の世話などをうけもっています。
 
 
人間にとっては家屋を損壊するいやな虫ですが、森の中では朽木や枯葉を土に戻す大切な役割を担っています。
流し虫一つにしても「気持ち悪い」で片付けず、 それが何であり、どんな役割を持っているのかをちゃんと知ろうとすることが自然保護の原点であり、自然との共生の道を歩むことの始まりなのでしょう。
気味が悪いからと言って何かを強制的に排除することは、何者かによっていずれの日か自分もまたこの世から排除されることを意味します。
 
とはいうものの、早く流し虫の季節が去ってほしいとい思うのが「人情」といいうものでしょう。
 
敬具