拝啓
屋久島町長選挙前日、安房の集落では荒木候補と小脇候補が街頭演説会。
どんな話で選挙戦を締めくくるのかと傍聴。
荒木候補はあれを作ったこれを建てた、空港・港湾整備を推し進めたと、
主に箱モノ実績をアピール。
小脇候補は森林トロッコを核に観光業の振興と、
給食やスクールバスなど教育支援に重点を。
共に防災に触れてはいるものの、宮之浦の消防や学校移転程度。
南海トラフ大地震による大津波の被災への危機感・切迫感の乏しさにがっかり。
被災予定地の中でも、種子島から回り込んだ津波をもろに受けることが予想される安房集落。
写真に写っている家やお店はすべて津波に飲み込まれ存在しなくなります。
2015年9月28日の朝日新聞デジタルで報じられた、
朝日新聞社と関西学院大学災害復興制度研究所の共同調査「南海トラフ地震の被害想定」では
荒木候補が演説をしていた安房の「レストランかもがわ」さんの海抜標識は6m。
かもがわさんの脇の神社より下、
小脇候補者が演説していた古い集落や商店が並ぶ路地もAコープも安房漁協の販売所も完全水没・流出・更地に。
そして、暮らしや産業・経済を支える団体組織の拠点……
仲医院、高速船乗り場や安房漁協など、はことごとく破壊。
津波はその高さの2倍ほどまで川や斜面を登ると言われているので、
海抜20m地点にある安房支所や観光案内所、
屋久島警察署や避難所にもなるはずの体育館も被害を受けることが想定されます。
郵便局や銀行の建物が、流されなくとも水に浸かればどうなるのかは、
今年の台風19号や各地の浸水被害で容易に想像できます。
2019年5月の豪雨によって高速船が安房港に入れなくなっただけでも島の南部のお店は大打撃。
それを思えば、大津波で家も店舗も公共施設も流されてしまえば、
生活再建どころの騒ぎではありません。観光客を受け入れることができなくなれば、
宿泊・飲食・土産物・ガイドなどを営む観光関連業者の多くは廃業して島を出る。
家を失った高齢者は本土の家族親類縁者に引き取られて島を出る。
観光業を支える農林水産業も打撃を受け、生活基盤が破壊された島への移住者は減る。
復興どころではなくなった島では店や住居の再建もままならず、新規投資や新築件数も激減して復興目当ての建築業者も仕事がなくなる。
2011年の東日本大震災で避難した方は、
8年経った2019年3月11日現在でも5万人以上。
別資料
復興庁 | 全国の避難者の数(所在都道府県別・所在施設別の数)
これらの数字は如何に被災地復興が困難であることか、
悲しい現実が物語っています。
しかし、それらを教訓にし、
明日来てもおかしくない南海トラフ大津波への対策を考えるべきはずの
「屋久島町第二次振興計画 わたしたちのまちの未来」の【安全で快適な暮らしを守る】P52-54では
☆海抜が高く、災害時に安全な避難場所となり得る避難場所の確保に取り組み ます。
・町防災計画の見直しと住民への周知徹底を図ります。
・自助、共助、公助の精神に基づく安全な避難方法の構築と周知を図ります。
と言う「施策」と
・備蓄品等含む避難用品一式を各世帯で準備するよう周知
・防災計画の見直しと住民への周知
・避難訓練の実施:2回/年
と言うだけの「目標」のみ。
これでは実際に被災した後の島の存亡への想像力があまりに欠如しているとしか言いようがありません。
町長も役場職員も「危機感を持って」……いないのです。
そこで二つの提案。
その1、「屋久島HOYHOY」で知って逃げる
2年後に整備完了予定の光通信網を活用した「屋久島アプリ-屋久島HOYHOY」を早急に開発、運用。
一周100㎞の島に点在する集落住民は全員、
観光客は入島時に登録しておけば、
多言語対応の情報がスマホ・携帯・パソコンに自動着信。
「屋久島HOYHOY」の非常時の防災機能は、
ⅰ.土砂崩れの警戒地域の観測と予報、警報
島の土砂災害警戒地域や反乱の可能性の高い河川、
漁港などに傾斜計や水位・潮位計などの機器を光回線と結んで設置し、
常時数値を計測。その情報に基づき自動的にアラームを発信。
ⅱ.各種団体の情報やネット情報の総合統括発信
すでにネット上にある防災アラームと連動して、
島のどこに居ても最寄りの避難所や通行止め区間、バス・船・飛行機の運行など、
各種情報を一括して簡便かつ一括して受信。
昼夜・山中・里・畑を問わず、
今自分がいる場所で、今どう行動すべきが判断できる。
ⅲ.避難所情報の提供
島民、各国外国人も含む観光客に避難所の状況を送受信。
各集落や個人にとって必要な物資や人の救援要請の発信も可能。
先にも述べたように復旧復興には多大の時間と多額の費用が掛かります。
被災してから復興計画を立ているようでは、観光地屋久島としての存続はあり得ません。
そこで、被災後の復興計画を予算も含めて遅くとも2年以内に立てるべき。
その安房版プランが高台に集落ごと集団移転する「ニュータウン計画」。
安房周辺で津波の直接的な被害の心配がない40m以上の標高の場所と言えば、
海抜50mの標識がある伝承蔵の交差点からヤクスギランドに向かって数分の「健康の森公園」。
さる島内の土木建築関係の会社を営んでいらっしゃる方の話では、
公園の敷地は元々林野庁の土地で、杉を伐採した跡地へ植林する杉苗の圃場だった場所。それを屋久島町が引き取って公園に。
20町歩(1町歩は1町四方の土地の面積で約10,000㎡)200,000㎡=6万坪はあるとのこと。
土曜日の午後、どんな様子か視察に行けば、陸上競技場は0名、芝生広場とテニスコートにそれぞれ5~6名ほど。
なんとも……。大きなイベントでもない限り、ジョギングや散歩の趣味がある方ぐらいしか足を向けない、利用度の低い広大な土地。
そこで、次の段取りを
ⅰ.安房集落との等価交換交渉
安房集落の全世帯、全事業所と協議し、「健康の森」跡地への集団移転計画を策定。
移転希望者は土地を等価交換し、希望しない方には補償金を支払う契約を結ぶ。
ⅱ.公共施設の先行移転と先行整備
上下水道、電気通信などのインフラを整え、消防・警察・公民館などの公共施設と病院や保育・こども園などを被災前に先行移転。
加えて災害避難時には福祉避難所としても利用できるように、
デイサービス、特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など高齢者や障碍者、認知症や自閉症などの方もが安心して暮らせ、
社会的弱者も共生できる施設を新設。
ⅲ.被災に備えた臨時仮設住宅兼用町営住宅の建設
被災直後には仮設住宅が必要不可欠なのは、口永良部の噴火の際にも経験済み。
ただ、どこの被災地でも共通するのは、
仮設住宅が立てられるまでの避難所生活の苦労や、
期限付きなので長く暮らせない不安。そして、建設・撤去費用。
そこで、オリンピックの選手村と同じ発想で、
一時的な避難所として利用した仮設住宅を住民移転終了後には町営住宅として活用。
また、ペットと同居できる棟なども備えて多様なニーズに応えられ、
I・Uターン者も積極的に受け入れる町営施設として計画・建設。
ⅳ.生活に必要な商業施設や、観光の拠点の一つとする
単なる住宅や施設だけではなく、
高齢者や子育て世帯も安心便利に暮らすのに必要な商店、美容院、理髪店、薬局、歯科医院なもニュータウン内に誘致。
加えて、
今はヤクデンの管理で関係者以外立ち入り禁止となっている「森林トロッコ発着場」を縄文杉を始めとした登山や新たに開発する小杉谷への玄関口として整備。
日本国内で唯一運行されている森林トロッコを「観光トロッコ」として運行し、
今まで島に足を向けなかった観光客を誘導し、
ニュータウンは新たな商業地としても発展。
ⅴ.旧安房集落地区の再開発
集団移転した安房集落には旧「健康の森」の機能の一部を復活させ、
島内一周マラソンやサイクリングなどの大規模イベントに使用できるスポーツ施設を再整備。
加えて
安房川周辺にはリバーカヤックを中心としたガイドショップも集合する「レジャー基地」、
安房港周辺には漁協と連携した観光客が鮮魚購入、地魚料理・魚文化体験を楽しめる「お魚市場」を整備。
また、
住居に隣接しない立地を生かして音楽やダンスなどのレッスン・練習・講習にも利用できる、
程よい大きさのスタジオ(小ホール)を民間の資金・企画運営団体を募って整備。
ⅵ.島内全域への拡散、薩南諸島との連携
安房集落の復興計画を集落の独自性に応じて島内全域に拡散するとともに、
種子島・十島・三島とも連携した薩南諸島ネットワークの観光・産業開発の拠点とする。
等価交換とする土地代を除く費用(予算)は、
災害に見舞われた際に国や県から支給される補助金や義援金を主として当て、
個人の住居については被災した家屋等に掛けられてい火災・地震・家財保険などで当てる。
こうした提案を「アホらしい」「誇大妄想」「無謀かつ無神経」etc.と揶揄・無視するのが大方でしょう。
誰かが何か新しい提案すれば、それが実現困難である理由を探したがるのも世の常。
ただ、
未来に希望や夢を見つけたい人ならば、こうした提案・計画が実は非常に「現実的」であるかことを理解していただけるのだと。
ピンチはチャンス、必要なのは真摯で誠実な「イマジネーション」。
よろしければジョンレノンと共に、Imagine。
You may say I'm a dreamer
But I'm not the only one
I hope someday you'll join us
And the world will live as one
僕のことを夢想家だと言うかもしれないね
でも僕一人じゃないはず
いつかあなたもみんな仲間になって
そして世界はきっとひとつになるんだ
敬具