屋久島六角堂便り~手紙

自然と人が織りなす屋久島の多様性を屋久島六角堂から折々にお伝えします

おみずの島プロジェクト-HOYHOYで、未知なる食と人との遭遇

拝啓

先日配布された「町報 やくしま10月号」

屋久島環境文化村センター」の空き店舗(喫茶コーナー)入居募集が。

島を代表するカフェの一つだった宮之浦「JANE」さんが入っていらっしゃった場所。

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■喫茶コーナーの入居者を募集します
鹿児島県では、屋久島環境文化村センター内の喫茶コーナーの入居者を募集します。
入居場所:屋久島環境文化村センター1階(127.61m2)
応募締切:10/24(木)※消印有効
問合せ:県自然保護課自然保護係
【電話】099-286-2613

どんな様子か買い物ついでに立ち寄れば……

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[Long Goodbye JANE]となんとも切ないお別れの挨拶が張られていて(´;ω;`)ウゥゥ

島の南の安房でも、9月に「日の出弁当」さんが廃業

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麦生お好み焼き&居酒屋「いっぷく」さんは、

ずいぶん前から看板を外して長期休業に。

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やはり9月から「しばらくお休みさせて頂きます」の張り紙が張られたままだった安房「かもがわ」さんは、

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どうやらリニューアルオープンのご様子なのが、せめてもの救い。

 

ご存知の方は少ないかと存じますが、

屋久島町第二次振興計画 わたしたちのまちの未来」44ページには次のような課題・方針・施策・目標が記されています。

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 課題の設定や方針については異論ないのですが、

「新たな消費に沿った、創業、事業拡大に対する支援と後継者への支援」に付された施策や目標にはかなりの違和感を覚えます。

また、「消費者のニーズに即した販売手法・戦略への対応の必要性」に対して「施策」や「目標」が示されていないのはなぜか。

屋久島町第二次振興計画 わたしたちのまちの未来」をまとめた委員や町職員の方々は、島内にある何軒の飲食店で食事やお茶をされたことがあるのか。それを営んでいるオーナーさん、特にI・Uターンのお店の店主さんとどれほど話をしたことがあるのか。

そうした足と舌と耳の実感が伝わってきません。

 

六角堂ブログのシリーズ屋久島飲食店盛衰記』では2014年以降、

私自身が食べ歩いてブログで紹介したお店の紹介と、

集落ごとにどんなお店が開いては閉じられたかをご案内しております。

その数だけをまとめた一覧表がこちら。

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ブログに掲載していないお店も含めれば、

島に訪れるようになってからの10年間に島内180軒ほどのお店で食事やお茶やテイクアウトをしましたが、

この5年半ほどの間、知る限りで88店が開店・リニューアルオープンし、42店が廃業・休業され、差し引き46店の増加。

世界自然遺産の観光地とはいえ、

人口1万3000人ほどの小さな離島でこれだけ多くのお店が、これほど短期間で浮き沈んでいる島はなく、

その新陳代謝の激しさもまた屋久島らしさかと。

ここで気を付けるべきは廃業されたお店の多くがI・Uターン移住者のお店だということ。

そしてその開業や廃業の理由には一定の共通点や背景があるということ。

「安定した就職先」の少ない離島(田舎)でとりあえず日銭を稼ぎたい場合、飲食業は未経験の素人でも、手持ちの資金が少なくとも開業しやすい上、屋久島は観光客の需要も見込め、テナント料も安いので都会より容易(安易)に始められる条件も。

食の安全や地産地消などに関心のある移住者ならなおさらのこと。

島に数ある移住者飲食店をメニューではなく経営者で分類してみると……

1.退職後、田舎暮らしの楽しみや生き甲斐の一つとして開業する子育てを終えた世代

2.移住前後を問わず、食への関心や飲食の経験がある子供のいない夫婦やカップ

3.未婚、あるいは離別死別別居による単身者(主として女性)

4.ガイド業や宿泊業など他業種との兼業世帯

5.乳幼児や小中学生を養っている子育て世帯

そして開業したものの数年して廃業された方の理由は

1.飲食業だけでは生活に不足する年間を通しての利益

2.島外にいる家族の介護や看護のための離島

3.傷病による治療や入院

子育て世帯の飲食専業店が圧倒的に少ないのは進学期を迎える子供の教育費の負担が重く、

そこそこ流行っていても飲食業の収入では暮らしが立てられないことも理由の一つかと。

事実、島を出て別の土地で同じ飲食業を続けていらっしゃる方も。

お店の魅力を引き出し、収益を上げるための工夫と努力がなければ続かないのは都会も田舎も変わらぬ事実ですが、

地元民と密着していない移住者飲食店は、ややもすると観光客頼みに。

観光客が減少し続ける島、観光客が少なくなるシーズンオフでも集客できるようにする工夫は容易ではありません。

屋久島ブランドを活用して加工品販売やネット販売に乗り出すには、それなりの店舗の実績と経験の蓄積、時間と労力と資金が必要。

一方、集落や特定業者と深く結びついた地元の方が経営するお店の廃業は、

「3.」以外に高齢化や後継者難によるものが多いことは、農林水産業と事情は同じ。

新たなメニューや販路の開発への意欲は、店の存続の展望があってこそ。

 

移住、在住を問わずお客様で賑わっているお店の特徴は……

1.食材や調理方法を吟味し他店との差別化に成功している店

2.島内他店では満足できないお客様を意識したメニューや、他店が営業していない午前11時前や午後2時以降などの時間帯に開けているニッチな店

3.ボリュームや味に割安感があり価格設定が妥当で常連客がついている店

4.日替わりメニューや季節限定メニューなどでお客様を飽きさせない工夫をしている店

5.立地が良く、観光客の眼にもつきやすく通勤・買い物客も利用しやすい店

6.お一人様にも利用しやすく、友達同士でもゆったり過ごせる雰囲気の店。

7.メディアに取り上げられたり、ネットの口コミが拡散している店

飲食店を存続させることは、

それと補完関係にある暮らしや観光、農、水産業を支える事でもあり、

雇用の場を増やし若者を引き留め、I・Uターン者を惹きつける原動力にも。

課題克服のためには地産地消奨励や観光客誘致以前に、

年間を通して売り上げが伸びるよう島内消費者の行動パターンを変えること。

そして事業者のみならず行政も多種多様な住民の情報交換・人材交流の場として飲食店を位置付け直すことかと。

島育ちの委員や役場職員の方々は、それを体感していらっしゃるでしょうか。

 

さて、「第二次振興策」の第2章 基本構想(1)基本理念には次の記述があります。

1.自然と共に生き、あらゆるものが循環する暮らしと営みを守り、持続させ、育んでいきます。

2.多様性ある暮らし、多様な集落の文化を持続していきます。

3.あらゆる人が輝き、住民自らの手でつくる屋久島スタイルのまちづくりを進めていきます。

【基本理念の考え方】

屋久島町には、奥深い山の自然、生活の背景となる森や山、

そこから流れ出る川、清らか な水、表情豊かな海があります。

その中で育まれてきた農業、林業水産業があります。

それらを支えとして培われてきた集落固有の祭りや民俗芸能、神社・仏閣などの

歴史・文化があり、それらに根ざした暮らしぶり、集落の営みがあります。

これらすべてが個性的であり、多様性を持っていることが屋久島町の価値と言えます。

悠久の流れという果てしなく続く時間の中で、

脈々と息づいてきた島の生い立ちや歴史を振り返り、

先人たちが培ってきた自然と共に生きる暮らしぶりや心の優しさ、

思いやり、強さを掘り起こし、新たな価値を創造するとともに、

集落固有の多様な歴史・文化を受け継ぎ ながら、

これらの多様性を語り合い、認め合い、とけあわせた中で

島に暮らす人々の営みを未来永劫絶やすことなく循環・持続させていくということを「まちづくりの基本理念」とします。

 

「多様性」という言葉が繰り返し使われていますが、

それは島を取り巻く世界や時代、未来を意識した「多様性」ではなく

島の集落ごとの独自性に重きを置いた内向きの言葉遣いでしかありません。

すでに島内人口の3割近くをいわゆる「移住者」が占める離島は全国的にも珍しいはず。

農林水産業を営む屋久島生まれの親世代も祖父母を辿れば島外出身、

島を出たことの無い男性の妻の多くが、

島外からやってきた女性というのも皆が知っていること。

ならば屋久島町の重要な特徴を「日本のどの田舎とも比べようがないほど伝統的に移住者比率が高く、移住者人口が多い離島の田舎町」と捉えることが重要。

そうでありながら、

否、そうであればこそか、自身のアイデンティティーにまつわる島の集落、伝統文化を守ることに比重が掛けられ、

島の未来を支える「多様な人々」から心がそれた振興策になっているのかと。

振興策の基本理念では「多様性を語り合い、認め合い、とけあわせた中で」とありますが、

溶け合うのではなく「本来的に多様な個人が粒粒の存在のまま程よく混ざり合う」といったイメージこそが多様性尊重の在り方。

 

移住者は地元に古くからある定食屋にはあまり足を運ばず、

島生まれの島育ちの地元民は移住者が営むカフェを敬遠しがちなのは一種の棲み分け。

気の置けない居心地の良い場所を求める自然な行動です。

しかし、

そうした「異文化の壁」を乗り越える場として重要な働きを持つのも飲食店であることは、全国の先進的な田舎ばかりでなく、都会の下町でも同様。

飲食業の支援と言うならば、

観光客の誘致以上にこうした「時空の改革」をこそ念頭に置き、

移住者・地元民とが時間と空間を共有し「多様性を受容し包含する場」として育てることが、島の未来を変えていく力になるはず。

 

そのためのツールとして光回線網の有効利用する

屋久島アプリ「MAIDO屋久島-屋久島HOYHOY」の提案。

現在、島の飲食店情報は様々なサイトやFBで発信されています。

例えば……
屋久島マルシェ
http://www.yakushima-marche.com/
屋久島マルシェ(@YakushimaMarche)さん | Twitter
https://twitter.com/YakushimaMarche
屋久島リアルウェーブ
https://www.realwave-corp.com/index.htm
屋久島経済新聞 - 屋久島のビジネス&カルチャーニュース
https://yakushima.keizai.biz/
https://www.facebook.com/yakushimakeizai


貴重な情報が発信されているにもかかわらず、

その存在を知らない島民や観光客も多く、

永田-栗生間の県道を何百回も往復した人でも、

それぞれの集落に様々なお店があることに気付かないのが現状。

一般的なSNSFacebookはメンバー制のページも多く、Twitterも登録していなければ活用できません。

しかも、いま自分が欲しいタイムリーな情報もSNSの「ともだち」が知らなければ得られぬこともしばしば。

加えて、いいねの数や星の数には偽りありのご時世。

島民も観光客も様々なお店を求めています。

ベジタリアン対応のメニューや地元農家の無農薬有機栽培の野菜が出される店

・採れたての野菜や獲れたて鮮魚を頂ける店

・焼き立てパンが焼きあがる時間が分かる店

・都会でもなかなか味わえない風味豊かなお店

・お一人様でも気兼ねなくゆったり過ごせるお店

ムスリムOKのお店etc.


そんなお店が何処にあるのか、今日開いているのか知ることができれば、

消費も進み、観光客や移住希望者の印象も好感度アップ。

そこで自動着信可能な屋久島HOYHOY」

アプリをダウンロードして、好きな項目やお店を登録してさえおけば、

知りたいお店の近くを通っただけで、

本日の日替わりメニューも検索の手間なく手軽に知ることができる。

アプリによって様々なサイトの情報が一つに繋がり情報共有されることで、

参加店舗も増え、年間を通してお店の売り上げも安定し、潰れるお店も減るのかと。

自分自身が意識していなくとも潜在的な願望に訴えかけるアプリによって、

消費・生活スタイルも変わるだけでなく、事業者の意識も変わりメニューも変わる。

また、意外なことに、

同業他店に足を運ばれない飲食店主の方も多い様子。

互いにケチをつけ合うのではなく、刺激を受け合い共同開発できるものを開拓する関係が作れれば……

一層島の空気を換え、人々の繋がりをも変化させ、島の未来につながる新たな発想と創造へと。

それを後押しするのが行政の責務かと。

メディアや通信手段の活用方法を開拓せずして、多様な消費の拡大は果たせず、島の変革もなし。
それはまた、高齢者の暮らし改善にも、劇的な変化をもたらす物となるはず。

 

屋久島HOYHOY」の開発・運営費の捻出方法の例として……

ⅰ「屋久島アプリ」参加店舗は一定の参加料を支払う。

島内200店舗×1,000円=年間200,000円

ⅱ 観光客には飛行機や船舶でアプリをダウンロードしてもらい、

入山・入園料や入島税の代わりにダウンロードを課金。

年間20万人の観光客×1,000円=年間2億円。

ⅲ 全国離島振興協議会・日本離島センターとの連携
屋久島町長荒木耕治氏が会長を務める「全国離島振興協議会」と

そこを母体にして作られた公益法人日本離島センター」との連携により、

屋久島で開発したソフトやアプリを全国有人離島137市町村で展開。

全国離島の振興に役立てることで開発コストや運営費の軽減を。

「そんなの無理だし、どうなんや?」とおっしゃる向きは是非、

より有効な提案をお聞かせください。

大切なのは叩き台を提示し合い、みんなでワイワイ叩き合うことかと。

それがまた、振興策のテーマの一つ「住民の結びつきを強くする」を実現する事に繋がるのかと。

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敬具

6kakudo-tegami.hatenablog.com