拝啓
今「あい(愛)」で始まる日本の言葉は、昔は「いろ(色)」で始まりました。人と人とを睦み合わせる素敵な言葉の力を学びましょう……
とかつて国語の教師だったころ、文法の最初の授業に教えた「50音図」と「いろは歌」。
いろは歌はいろんな解釈が巷に流れておりますが、基本は仏教的な「無常」を同じ仮名を一度しか用いずに詠んだ歌。
いろはにほへと(色はにほへど)
ちりぬるを(散りぬるを)
どんなに美しく咲き誇っている花も
いつかは必ず散ってしまう
わかよたれそ(我が世たれぞ)
つねならむ(常ならむ)
この世で誰が
変わらぬままでいられようか
うゐのおくやま(有為の奥山)
けふこえて(今日越えて)
愛や憎しみがどこまでも続く深い山のような現世を
今日もまた一つ越えていくのか
あさきゆめみし(浅き夢見じ)
ゑひもせす (酔ひもせず)
はかない夢などもう見ないでおこう
酔い痴れることもないままに
とうとうと流れる安房川の岸辺から雲の湧き立つ上流の峰々を仰ぐと、つくづく無常が身に沁みます。
さて、チェーン店でもないのに北は北海道から南は沖縄まで、日本全国津々浦々にある食堂の名は「いろは食堂」。
御多分に漏れず安房大橋のたもとにもお食事処「いろは」が佇んで、島に流れ着いた人々を迎えています。
店のレジ脇には時の流れを感じさせる黒い招き猫が手招き
壁一面にずらりと張られたお品書きを眺めつつ
注文を取りに来てくれた娘さんに「この店のお薦め丼は何ですか?」と問えば、
「おすすめは特にありませんが、カツ丼を頼まれるお客さんが多いです」とのこと。
ならばとカツ丼を注文し、ついでながらに600円のラーメンも。
島のならいで待つこと、かなりしばし……
かつてどこかの観光地の食堂で食した丼と相通じる、何とも言えぬ懐かしさ漂う出汁の香り。
街のファストフード店の丼とはまるで違う、あくまでも柔らかなご飯の炊き具合。
鳴門の渦の鮮やかさ、茹で上げられた麺の柔らかさ、コショウが似合うスープのコク。
丼、ラーメンそのいずれも、沖縄・奄美が日本に返還される以前、
安房の町でしばし灯ったお店の灯も、秋にはいくつか消えていくそうな。
諸行無常は人の営みに止まることなく、永久不変に思わるる「洋上のアルプス」もやがては浪間の泡と消え去るでしょう。
さて、この『屋久島丼紀行』も次回第40回を節目に筆を置こうと思います。
「あの丼を食べずに終われるわけがない」という島の一品、ございましたら是非ともお知らせ願います。
敬具
屋久島丼紀行インデックス
宮之浦 ヒトメクリ 「自家製ベーコンエッグ丼」
安房 あわほ 「中華飯」
安房 いその香り 「14周年感謝限定ランチ-海鮮丼」
椨川 お食事・酒処 たぶ川「親子丼」
麦生 DAVIS 「黒豆ご飯とトビウオすり身揚げレッドカレー丼」
尾之間 ボンクラード&La table 「丼風ライブ弁当」
原 ノマドカフェ 「ラープ丼」
春牧 みち草 「豚のねぎ塩焼き丼」
安房 散歩亭 「黒豚なんこつ丼」
春牧 喜楽里 「豚丼」
小瀬田 エアポートやくしま「豚とじ丼」
安房 じいじ屋「ミニ豚なんこつ丼」
小瀬田 エアポートやくしま「トビウオ丼」
宮之浦 四季(とき)亭 「ヒレカツ卵丼」
宮之浦 島むすび 「豚下ロースカツ丼」
尾之間 A-coop 「カルビ丼」
船行 DINING CAFE BAR SLOW「ロコモコ丼セット」
安房 田中屋「タンドリ丼」
春牧 喜楽里 「喜楽里カレーう丼」
宮之浦 雲水 「天丼 海老三本野菜四種」
尾之間 そば屋 「とり天丼セット」
尾之間 モッチョムビュー トーン 「味噌カツ丼」
春牧 安永丸「海鮮丼」+「トビウオの漬け丼」
春牧 喜楽里 「鶏めし丼+ミニうどん」、「カツ丼」
安房 いその香り 「海鮮丼」
安房 武田館キッチンハウス なつみ庵「親子丼」 ※ 2015年11月に閉店
島外の丼
小瀬田 エアポートやくしま 「とろろ丼」
宮之浦 ふるさと市場「お勧め料理 あら汁・小鉢お漬物付き海鮮丼」
原 食堂 モッチョム山荘 「天丼」
安房 レンガ屋「ミックス丼」
小瀬田 ラ・モンステラ「親子丼」 ※ 2015年10月より無期休業
安房 ファミリーレストランかもがわ「エビ丼」
宮之浦 Bay’s Caf’e Jane「飛魚丼」
安房 島・しまキッチン「ステーキ丼」 ※2015年12月に閉店
尾之間 味徳「牛丼」
春牧 みち草「カツ丼」
栗生 松竹「天丼」