屋久島六角堂便り~手紙

自然と人が織りなす屋久島の多様性を屋久島六角堂から折々にお伝えします

屋久島丼紀行 第8回 名に隠された丼の真の姿二つ

拝啓
 
日本語は何かをあからさまに表すことをためらう性質を持っています。
「忌み言葉」なるものは縁起の悪い言葉を良い言葉に置き換えて果物の「ナシ」は「アリの実」、「スルメ」は「アタリメ」、結婚式の「閉会」は「お開き」などと言い換えます。
それと同様に耳障りの悪さや拒否感を緩和したり美化したりすることもしばしば。先の戦争で「全滅」を「玉砕」と呼び、「敗戦放送」を「玉音放送」などと呼んだのもそれ。
自衛隊」(実質的には軍隊)も「護衛艦」(実質的には戦艦や巡洋艦駆逐艦)もその一つ。
 
そんな中で「安全保障法案」(実質的にはアメリカと手を組んで戦争できるようにする法案)が可決されようとしています。
 
この歴史的な法案を廃案にできなかったことで、5年後10年後に「ああ、今のこれはあの時のあれが始まりだったんだ」と多くの国民が溜息交じりに思い起こす日が来る、先の敗戦で日本国民が思い知った後悔や脱力感と重なる日が来ることになるかもしれないと思うと辛くてなりません。
 
そんな胃の痛む日に「丼紀行」とは何事かとお叱りを受けるかもしれませんが、「あからさまには見えないものの真の姿に気付くことの大切さ肝に銘じるための丼」をご紹介することでお許し願いたいと存じます。
 
その一つは安房屋久どん』(http://www.yakushima-marche.com/cust-spot/5788/)さんの丼。
さしあたり店名の『屋久どん』の「どん」は何かが気になります。
西郷どん」と同様に薩摩(鹿児島)方言で「殿」を「どん」と呼ぶ愛称なのか?それともメニューが表す「屋久島うどんどんぶり」の略称と推察すべきか。
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それなら丼だけを頼むのは失礼かと思い、今回はこの中から「えび天うどん+■■■漬け丼」を注文。
屋久島なら当然丼はトビウオの漬け丼だろうと思いつつ「漬け丼」の前の言葉の黒塗りが気になります。
しかも英語では“sliced raw fish bowl”(直訳すれば「刺身丼」)。
漬け丼なのに刺身とはこれいかに。
はてさてどんな丼かと不安と好奇心を入り混ぜながら注文。待つことしばし。
やって来たのは……
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「海老天うどん+イカの漬け丼」でした。
うどんの出汁はどうやら屋久島特産のサバ節からとったあっさり系。
丼のイカは程よい甘みと歯ごたえ。
いけますが、イカの漬け丼ならメニューにそう書いてしかるべしと思わずにはいられませんでした。
 
もう一つの丼は安房『れんが屋』(http://www.yakushima-marche.com/cust-spot/5746/)さんのランチタイム限定丼。
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入り口の看板が煉瓦造りなのでレンガ屋なのか?
焼肉屋なのでお昼に丼が食べられることを知らない方も多いようですが……
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店の前には「とりめし」の幟があるので「とりめし」にしようか、それとも焼肉屋らしく「サービスカルビ丼」にしようかとも思いましたが、ここはやはり「数量限定のミックス丼」を注文。
焼肉屋でミックスとあるからには牛や豚や鶏や鹿などあれこれの肉が混ざっている丼なのかと期待。
ただ650円という超お値打ち価格であればと不安と好奇心に包まれながら待つことしばし。
愛想の良い可愛らしい娘さんが運んで来てくれた丼は……
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どう見ても牛のみの丼。
娘さんに「ミックスって何ですか?」と尋ねると「牛のいろんな部位の肉のミックスです」との返答。
ロースでもカルビでも霜降りでもありませんが、食べ応えのある肉厚の「肉食ってるぞ!」と実感できるお得な牛丼でした。
 
言葉(名前)は「言霊」(ことだま)という言葉があるように単なる記号以上の重みを持ちます。
それと同時に言葉は必ずしも「そのもの」を表すとは限りません。
 
「安全保障」もまたしかり。
それは「国民の安全」を保障するのではなく「国家(政権)の安全」を保障するにすぎないことを身をもって知る日が来ないことを願うばかりです。
 
敬具


屋久島丼紀行インデックス
 
  小瀬田 ラ・モンステラ「親子丼」 ※ 2015年10月より無期休業
  安房 ファミリーレストランかもがわ「エビ丼」
  宮之浦 Bay’s Caf’e Jane「飛魚丼」
  安房 萬來軒麻婆丼
  安房 島・しまキッチン「ステーキ丼」 ※2015年12月に閉店
  尾之間 味徳「牛丼」
  春牧 みち草「カツ丼」
  栗生 松竹「天丼」