拝啓
世知辛く、ときに切ない世間を渡っていると、何とも言えぬ倦怠感、軽い無力感や脱力感に憑りつかれがちです。
そんな時、自分がぼんやり思い描いていた素敵な何かと出会ったり、自分の既成概念をガシャリと打ち砕いてくれるような発見をした時、大げさに言えば生きる希望や生きている実感が湧いて来ることも。
今回ご紹介する二軒の丼は、そんな可能性を秘めた島の丼です。
東京から移住されてきたご夫婦が2008年に開業されたオムライス屋さん。
運が良ければここで毎日10食限定の親子丼をいただくことができます。
前回は売り切れ。
今回は絶対食べそびれまいと開店一分前に到着し、ママさんが「Open」の掲示を持って出る矢先に「親子丼お願いします」と注文。
待つという時間も感じさせないほどに素早く登場。
島に移住して養鶏場を営んでいらっしゃったマスター自家製の卵がふんだん。
絶妙な火の通り具合のカシワと絡むフワトロ半熟卵と生卵の滋味との麗しいコンビネーション。
「親子丼はこうあってほしい」という願いをかなえてくれる一品です。
おまけに七味と山椒が民芸風容器でそれぞれちゃんと用意されているのが嬉しい限りです。
さて、もう一丼は以前カレーやトンカツのご紹介をした安房のお食事処『ファミリーレストラン かもがわ』さんの丼です。
屋久島に足を運ぶようになってから数十回はこのお店でご飯を頂いてきましたが、思い起こせば一度も丼を食べたことがありませんでした。
そこで今回はそれを目的に。数ある丼メニューの中で目を引いたのは「エビ丼」。
かもがわのエビフライ定食はなかなかのものだからです。
そこで「エビはエビの天麩羅ですか?」と問うと、「いえ、エビフライを卵でとじた丼です。美味しいですよ」との返答。
「嘘やろ!」と口には出せず、美味しいですと言われて断るのもなんだと思い「ではエビ丼を、あっ大盛りでお願いします」と注文。
好奇心と不安感で落ち着かないまま待つことしばし。
やって来たのは間違いなくエビフライ丼でした。
美味しいとか不味いとか言う以前に「ああこういう丼も存在するんだなぁ」と感慨ひとしお。
大盛りだけに、これでもかというくらいのご飯とエビのボリュームは満足とか満腹とかを通り越した地元の飲食店の面目躍如。
完食後もエビの天麩羅ではなくエビフライを卵でとじた丼に納得がいかず、六角堂に戻ってネットで検索。
するとなんと言うことでしょう。
クックパッドにはいくつもレシピがあり、「名古屋名物-鎌倉丼」というタイトルのエビフライ丼の紹介までも。
私は名古屋生まれですが、一度もエビフライを卵でとじた丼に出会ったことは皆無。
おまけに「鎌倉丼」なるものの存在を初めて知りました。
さらにグーグルで検索するとウィキペディアにも「鎌倉丼」のページがあるではないですか。
島では「天丼」を頼むとたいていはエビ以外の野菜やらがいくつも同居し、時にはエビの掻き揚げやらの丼。
エビのみ天丼とは出会ったことがありません。
「エビ丼と書いてあるならきっと純粋なエビ天丼だろう、ひょっとしたらとろりと卵でとじてあるエビの天とじ丼かもしれない」という思い込みをバサッと切り落としてくれた上、鎌倉丼の存在を知らしめてくれた「屋久島の鎌倉丼」に感謝。
ついでながら、「かもがわ」のカツカレーに「常識を覆された」方もいらっしゃるようです。
ご興味がございましたら、次の「食べログ 鹿児島」の投稿をどうぞ。
敬具