拝啓
屋久島カレー事情 第10回 アートなカレー
明日からいよいよ10月。食欲の秋本番です。
頭からカーッと汗をかくようなカレーが食べたかった夏が終わり、今度はふくよかな香りにぐっと包み込まれるようなカレーが食べたくなる頃です。
屋久島の南には、そんなカレーを食べさせてくるお店があることは、幸せなことです。
明るい静けさに満ちた店内に入り、屋久島らしい風情を漂わせた庭が見える席に着いてカレーを注文して待つことしばし。
爽やかな彩と新鮮な香気を楽しませてくれるサラダが先に到着。
思わず箸をつけて口に運んでしまったので写真を撮るのを忘れました。
それで、勝手にお店のHPの写真を転載。
シャッキリとした歯触りが野菜を食べる楽しさを掻き立ててくれます。
サラダを食べ終えて待つことしばし、厨房の奥からのぞくシェフの笑顔に見送られ、きちんとした接客マナーを守ったご主人の手で運ばれてきたカレーは、焦げたチーズの香りに満ちたアツアツのカレーです。
サラダを食べ終えて待つことしばし、厨房の奥からのぞくシェフの笑顔に見送られ、きちんとした接客マナーを守ったご主人の手で運ばれてきたカレーは、焦げたチーズの香りに満ちたアツアツのカレーです。
これはぬかることなく写真を撮りました。
黒豚の腕肉は煮溶けて姿がありませんが、とろみと甘みがその存在を主張しています。非日常の美学とでも言った贅沢さを味わいました。
センスが良いとはこういうことだと思わせるような盛り付け。
……なんだか分かりませんが食べていると楽しくなります。
カレーの具は分厚めのチキンと程よい硬さのひよこ豆。
風味豊かで滑らかなカレーが小ぶりで細く硬めのご飯によく合っていました。
設計士のご主人と元カメラマンの奥さんが編み出したカジュアルでアートなカレー、ご馳走様でした。
お腹一杯栄養満点安上がりの代表選手が『おうちのカレー』でしょう。
ハウス・グリコ・S&Bが徹底した市場調査で得た情報と多額の開発費用をかけて作り出すカレールーは、日本人好みかつ多様な舌に合うようなラインナップを誇っています。
それを好みに合わせて買ってきて、それぞれの家にあった味付けをすれば、はい美味しいオカンのカレーの出来上がりです。
人間の舌は案外保守的なもので、馴染んだ味や特定の記憶と結びついた味が好まれるものです。
それで言えば、「小さい頃お母さんが作ってくれたカレーが一番おいしい」のは至極自然です。
それでもお店のカレー、しかも手を掛けたそのお店独自の味と香りと盛り付けのカレーを食べたくなるのは何故でしょうか。
それは人が、安全安心無事安泰を願う日常の中にありながら、どこかで不安や期待の入り混じったときめきをもたらす非日常に憧れているからでしょう。
いわば、実用一点張りではないアートな世界を楽しむ「遊び心」を持っているからだと思うのです。
それを活かしたカレーが島あちこちに登場し、縄文杉や木霊と並ぶ「カレーの島」となることを願ってやみません。
その代わりと言ってはなんですが、2014年6月16日、屋久島町地域雇用創造推進協議会が運営する「ネクスト屋久島応援隊」の食チームが主体となり、サンカラの武井シェフが講師として行われた「屋久鹿 新商品開発セミナー」の模様を伝える「SANKARA NEWS」のページを紹介して、カレーの匙を投げます。
これまで紹介した「屋久島カレー事情」インデックス
第8回 おいどんにカレーうどんは似合わぬか Aコープのカレーうどん
陳列棚のカレー
第3回 風を待つ街にカレーの風が吹く 「本格」「印度風」ばやり
島外のカレー
第2回 一皿の命の旨味有難し 樹林のオーロラカレー
小瀬田「樹林」
小瀬田「樹林」
第1回 独りでもカレーが繋ぐ人の縁 萬萬亭の500円カレー
小瀬田「萬萬亭」
小瀬田「萬萬亭」