拝啓
一・二か月に一度、定期的な診察を受けて薬を頂いている栗生診療所まで出向くと、先生は不在。
この4月から口永良部の先生がいなくなり、毎週口永良部に出かけることになったそうな。
そのまままた40分かけて同じ道を戻るのもしゃくなので、西部林道を抜けて時計回りで帰ることに。
目当ては「Yakushima Pocket Navi」で紹介されていた一湊の「なっちゃん食堂」。
以前から「この食堂のカレーうどんは凄い。日本中どこでも食べられない上に激安」と聞いていたので、診療所空振りアウトは絶好の機会かと。
シカやサルには目もくれず、いつもは立ち寄る灯台もスルーして一路一湊へ。
県道から集落に入るとすぐのお店を通り越し、消防団の建物脇に駐車してテクテク。
期待に膨らんだ胸を深呼吸で落ち着かせ、暖簾をくぐると昔ながらの店らしく招き猫やら七福神やらがお出迎え。
メニューを見ると、噂にたがわず……サラダとカレーうどんが同じ値段とは!
カレーうどんだけでは何やら申し訳ない気がして、天丼も合わせて注文して待つことしばし……
カレーうどんの概念を打ち砕く澄んだスープに浮かぶ二枚のナルトとワカメ。
ぼそっとした素朴な歯触りの麺に思いのほかヒリッとするカレー風味の出汁。
これまで島で、いや日本のどこでも食べたことのない新鮮な味わい。
百閒は一見、いや一食に如かず!
ちなみに天麩羅は掻き揚げ天かと思いきや、これでもかという程の玉葱の下に海老天二匹。
ガソリン代が高くついても足を使って体験しに行ってこその出会い。
納得して集落をぶらりとすれば島には珍しい和菓子屋が。
パンも販売している平海(ひらみ)製菓さん。
愛想の良い店員さんにお菓子の説明を聞きつつ二種類ばかり頂いて、ぐるりと巡れば以前「島のえべっさん巡り第10回 一湊追加編 神々と湯に浸りたる島の旅」でご紹介した“まちえびす”さんが今日もにこやかに。
こだわり云々の自意識が孕む脆さと対極にある自然体のオリジナリティ。
その根の生えた底力こそ息の長い商売の元じゃと恵比寿さんが教えて下さっているかのよう。
島を一周して六角堂に辿り着き、分けて頂いた和菓子を皿に並べてにんまり。
右はどら焼き、左は羊羹を紅白の落雁で挟んだ「しきし」と呼ばれる島の和菓子。
島の素朴なパワーをしみじみ味わうために、しばらく食べずに飾って置こうと思います。
敬具
追伸
お菓子は六角堂コテージにご滞在中のお客様に“島の味”を体感していただきたく、六角堂特製マサラチャイのお供として差し上げました。
味とにおいは記憶の奥深くに刻まれるもの。
島を巡る楽しみとして、集落ごとの小さな飲食店や商店をもっとアピールすれば、旅の思い出を深くして屋久島へのリピーターさんが増えるのだと思います。
町長や町役場がどこぞの大手広告代理店などに踊らされず、島内大手の企業や団体にすり寄らず、つつましく暮らす島民目線、島独特の魅力を求めて訪れる旅人目線で島の未来を切り開いていってもらえるよう、住民のたゆまぬ働きかけが必要だと改めて思うカレーうどんとお菓子でした。
これまで紹介した「屋久島カレー事情」インデックス
第53回 春陽の海を越えゆく森カレー
小瀬田 「mori cafe STAND」
原 「ノマドカフェ」
安房 「山カフェ 」
第50回 島の濃き緑染み入るカフェカレー 最北のカレー
永田 「水照玉」
第49回 段々の青き棚田に福来れ 爽やかな女将さんの前途を祝して
椨川 「たぶ川」
第48回 島に居て上機嫌なる腹の虫 一食の価値あるアートカレー
麦生「DAVIS」
第47回 夏雲の島に生まれし海カレー 根っからの島民による全国民のためのカレー
宮之浦 「やくしま食堂」
第46回 赤き子の島に生まれし雨後の昼 和洋の狭間に知るカレーの深み
安房 武田館キッチンハウス「かたぎり」
原 「ノマドカフェ」
第44回 年の瀬に飛び立ちて行く背や丸し EBI Fly to the distance
安房 「田中屋」
第43回 和も洋も隔てなきなり島カレー 受けて立った宮之浦の戦い
宮之浦「雲水」
第42回 春牧に昇る旭日を拝みけり 笑顔は究極のスパイスなり
春牧「喜楽里」
第41回 軒先の雫気にせずカレー買う 県道脇のコンテナで作るオヤジに買うオヤジ
小瀬田 「モリカフェ」
第40回 新月に隠れてうさぎカレー食い カレーが地球を回している
麦生「DAVIS」
第39回 人の世を写して流る秋の雲 ブタにも「六」がありました
安房「ポルコ」
第38回 春にまた戻る日を待つ渡り鳥 また来ってこいよ南国Amara
安房「Amara」 ※2016年閉店
第37回 神代より天下りたり愛の秋 姉弟そろって豆カレー
平内 「アイノワレストラン」(サウスビレッジ内) ※2015年閉店
平内 「アイノワレストラン」(サウスビレッジ内) ※2015年閉店
第36回 あきもせず くるりくるりの島時間 港に香るカレーの風味
宮之浦「雪苔屋」
宮之浦「雪苔屋」
第35回 島に逃げ極楽とんぼの島カレー 南の村の豆カレー
平内 「サウスビレッジ」※2015年閉店
第34回 透き通る海を背中に浜カレー 浜辺でスパイシー
一湊海水浴場 「カレー専門店 屋久島カレー グロース」
第33回 梅雨明けを手土産に来い11号 ここは南国
安房 「ジャングル・キッチン 近未来」
第32回 どこにでもあれどどこにもないカレー どこでもカレー
楠川 「楠川ふれあいセンター じょんこう茶屋」
第31回 梅雨空に割りてすがしきカレーパン モーニングカレーパン
尾之間 「ペイタ」
第30回 海山にガッツリカレー連れテイク ガッツリ登山弁当カレー
安房 「かもがわ」
第29回 台風も賑わうアジアの交差点 パワーアップして帰ってきたAmara
安房 「新Amara 南国酒場」※2016年閉店
第28回 屋久島にアジアの緑風巡り来る 京都からやってきたアジアンカレー
尾之間「バリスタイル レストラン&バー Warung Karang(ワルンカラン )
第27回 ラーメンをスープにさらう島カレー ラーメン屋のカレー定食
宮之浦 「王龍(ワンロン)」
第26回 脇役のカレー目当てに蕎麦すする カレーやってます
尾之間 「手打ちそば屋」※2016年閉店
安房 「かもがわ」
第29回 台風も賑わうアジアの交差点 パワーアップして帰ってきたAmara
安房 「新Amara 南国酒場」※2016年閉店
第28回 屋久島にアジアの緑風巡り来る 京都からやってきたアジアンカレー
尾之間「バリスタイル レストラン&バー Warung Karang(ワルンカラン )
第27回 ラーメンをスープにさらう島カレー ラーメン屋のカレー定食
宮之浦 「王龍(ワンロン)」
第26回 脇役のカレー目当てに蕎麦すする カレーやってます
尾之間 「手打ちそば屋」※2016年閉店
第23回 県道に萌え出づる春カレーあり 年季の入ったかわいい系喫茶店
小瀬田「花鈴」
※ 番号の重複をご容赦ください
第21回 対岸に香れるカレー求めけり 海を渡って
第20回 どんぶりに残せる鹿よ悪しからず たしかにしか
宮之浦「カフェ・ヒトメクリ」
宮之浦「カフェ・ヒトメクリ」
第13回 食べることそれは生のあかしなり 木枯らしの吹き荒れる海ボンカレー
陳列棚のカレー 2
尾之間「モッチョムビュー トーン」
安房「田中屋」
第8回 おいどんにカレーうどんは似合わぬか Aコープのカレーうどん
陳列棚のカレー
第5回 カレー屋と聞けば目覚める腹の虫 カレー専門店
小瀬田「屋久島カレー茶房 ハイビスカス」
宮之浦「カレー専門店 屋久島カレー グロース」
安房「カレーと多国籍料理の店 Amara」 ※2016年閉店
小瀬田「屋久島カレー茶房 ハイビスカス」
宮之浦「カレー専門店 屋久島カレー グロース」
安房「カレーと多国籍料理の店 Amara」 ※2016年閉店
第3回 風を待つ街にカレーの風が吹く 「本格」「印度風」ばやり
島外のカレー
第2回 一皿の命の旨味有難し 樹林のオーロラカレー
小瀬田「樹林」
小瀬田「樹林」
第1回 独りでもカレーが繋ぐ人の縁 萬萬亭の500円カレー
小瀬田「萬萬亭」
小瀬田「萬萬亭」