屋久島六角堂便り~手紙

自然と人が織りなす屋久島の多様性を屋久島六角堂から折々にお伝えします

屋久島カレー事情 第78回 神さんの御利益沁みる浜カレー 宮之浦 悠楽

拝啓

昨年5月にいったん閉じたシリーズ「屋久島カレー事情」ですが、思うところあって再開することに致しました。

そのきっかけはこれ。

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年明け早々、大風による倒木で屋根が傷むやら、地区の断水やら停電やらでブックカフェの営業も結局1月いっぱいお休みに。

ここは一番、少しばかり古びた神棚を新調して厄払いをと宮之浦の益救神社に伺うと、

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駐車場に見慣れぬ看板がぽつねんと。

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2年半前に伺った浜焼き 悠楽」さんの看板。

ほう、「御利益カレー」とはいかなるものかと店先まで歩みを進めると。

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カレーカリーの違い分かりますか?」と挑戦的なブラックボード。

これは頂かないわけにはなりません。

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店の内装は板張りの桟敷席ができており、流れている曲も以前と違い、

開いたメニューも変わっていて、コルクボードに「Cutlet curry」の表示も……

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水を持ってきた奥さんまでもが異なっていたので、オーナーさんが変わったのですかと伺えば、「店を始めた娘夫婦は夜だけすることになって、昼は私ら親夫婦でやってます。ランチメニューは息子が仕込んだカレー中心に」とのこと。

重ねて、ご利益カレーはどれですか?と尋ねれば、

「うちのカレーは全部御利益あります」とのお答え。

それならせっかくなので、ボードに掲げられた「カツカレー」を注文して待つことしばし……

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ほう、立派なカツだこと。

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風味は円満、神様の優しさがジンワリ伝わって来るカレーライスでした。

 

で、「カレーとカリ―の違い」

日本の「カリー」の本家本元、作春のNHK朝ドラに登場した「カリー屋」のモデルともなった新宿中村屋のHPによれば……

昭和初期、日本で普及していた「カレー」はイギリス経由で渡ってきた小麦粉を使った「欧風料理」
それに対して、昭和2(1927)年に中村屋で出された「カリー」はインド人ボースが作ったスパイスの強烈な香りが漂う「インド料理」
10銭ほどだった町の洋食屋のカレーに対し、中村屋のカリーは80銭したにもかかわらず飛ぶように売れたとのこと。

 

昨今では、インド人やネパール人、スリランカ人やバングラディッシュ人やパキスタン人の営む「インド料理屋」でも「カレー」と表記してあるので、どちらでもよい話なのかも思いつつ完食。

その上、コルクボードの「鹿児島県産小豆ぜんざい」が気になってたまらず注文。

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粒餡丸餅の関西風仕立て。甘過ぎずほろほろの小豆が舌触り良し。

鏡餅のようなぜんざいに、神様も善き哉とおっしゃっているようで。

島のカレー事情、今しばらく続けさせて頂こうと思い直した次第です。

ちなみに、悠楽さんの左手で「キーマカレーピザ」を商っておられた「こむぎこ」さんは、開店して半年経たずに店を閉め、島を去られたとのことでした。

 カレーもカリーも栄枯盛衰、諸行無常の響き有り。

敬具

屋久島カレー事情インデックス

第77回 流れゆく沢音楽し島カレー
原 「木村珈琲」 ココナッツ風味のチキンカレー
第76回 鹿児島の今風間借りカレー
鹿児島市ヒルハナキ」 キーマカレーwithピクルス&アイスコーヒー
第75回 平静でいられぬ特大カツカレー
横峯 「のどか」カレーライス特大カツ
第74回 ラーメンの脇にほころぶカレーかな
安房日高屋日高屋カレー
安房 「万福」 カレーライス
第73回 島外編 胃袋を掴み舌に刻み込め
鹿児島中央駅西口 「匠」 黒豚バラカツカレー
トカラ列島宝島 島バナナカレー(レトルト)
徳之島 地 福咖喱(レトルト)
第72回 タンカンの揺れる畑にカレー咲く
原 「冬季限定 nicoichi食堂」 ピリ辛チキンカレー
第71回 平成の終わりに昭和を食らいけり
原 「木村珈琲」 黒毛和牛のすじ肉カレーライス
第70回 香り立つうまし島ぞとあきもせず
小瀬田 「ひよりや」
麦生 「ティールーム トローキ」
第69回 ココナツの花咲きにけりカレー皿
平内 「naa yuu cafe」ココナッツチキンカレー
第68回 台風に勝てるものかはカツカレー
宮之浦 「屋久島ふるさと市場 島の恵み館」
第67回 持つものを活かし味わう恵比須顔
宮之浦 「カフェギャラリー 百水」
第66回 神山を愛でる花火に幸願う
宮之浦 「こむぎこ」
第65回 縄文の暮らし偲ばん筍の旬
横峯 「のどか」
第64回 やまがらのかれいなるひぞ梅雨の入り
宮之浦 「やまがら屋」
第63回 歳月の深めしことばあじわえり
原 「ノマドカフェ」
第62回 森の宮緑茂りて海開く あわほの夢を泡と帰すまじ
安房 「umi cafe」※2018年閉店
第61回 春雨に閉じて開いて萌える山
安房 「喫茶ケルン」※2018年閉店
第60回 猫舌に優しきごはん冬の海
安房 「Warung Karang」
第59回 森に虹魚介香し島カレー
宮之浦「浜焼き 悠楽」
第58回 あざなえる縄の目の間のカレーかな
鹿児島市
「田中屋」
鹿児島市立病院レストランだんらん」
安房 「ちーぞー」
第57回 梅雨空のひょうたん島を臨むチャイ
永田 「sea & sun」
第56回 薫る風命育む薬の島
原 「食堂 もっちょむ山荘」※2017年閉店
第55回 宮参るカレーひと匙厄払い
宮之浦「宮カフェ」
第54回 しぶとさの秘訣は迷わぬ自然体
一湊 「なっちゃん食堂」
第53回 春陽の海を越えゆく森カレー
小瀬田「moricafe STAND」
第52回 冬籠るカフェの新たな春待たん 今年最後の豆腐カレー
原 「ノマドカフェ」
第51回 勤労の香りぞ高き島カレー 夏には夏の冬には冬の味わいを
安房 「山カフェ」※2018年閉店
第50回 島の濃き緑染み入るカフェカレー 最北のカレー
永田 「水照玉」
第49回 段々の青き棚田に福来れ 爽やかな女将さんの前途を祝して
椨川 「たぶ川」※2018年閉店→楠川へ移転
第48回 島に居て上機嫌なる腹の虫 一食の価値あるアートカレー
麦生 「DAVIS」
第47回 夏雲の島に生まれし海カレー 根っからの島民による全国民のためのカレー
宮之浦「やくしま食堂」※2018年1月閉店
第46回 赤き子の島に生まれし雨後の昼 和洋の狭間に知るカレーの深み
安房 武田館キッチンハウス「かたぎりさん」
第45回 物騒な世を鎮めるや島カレー 明日に向かって撃て
原 「ノマドカフェ」
第44回 年の瀬に飛び立ちて行く背や丸し EBI Fly to the distance
安房 「田中屋」
第43回 和も洋も隔てなきなり島カレー 受けて立った宮之浦の戦い
宮之浦「雲水」※2019年閉店
第42回 春牧に昇る旭日を拝みけり 笑顔は究極のスパイスなり
春牧 「喜楽里」
第41回 軒先の雫気にせずカレー買う 県道脇のコンテナで作るオヤジに買うオヤジ
小瀬田 「モリカフェ」
第40回 新月に隠れてうさぎカレー食い カレーが地球を回している
麦生 「DAVIS」
第39回 人の世を写して流る秋の雲 ブタにも「六」がありました
安房 「ポルコ」※2017年11月閉店
第38回 春にまた戻る日を待つ渡り鳥 また来ってこいよ南国Amara
安房 「Amara」 ※2016年閉店
第37回 神代より天下りたり愛の秋 姉弟そろって豆カレー
平内 「アイノワレストラン」(サウスビレッジ内) ※2015年閉店
第36回 あきもせず くるりくるりの島時間 港に香るカレーの風味
宮之浦 「雪苔屋」※2018年5月閉店→永久保に移転
第35回 島に逃げ極楽とんぼの島カレー 南の村の豆カレー
平内 「サウスビレッジ」※2015年閉店
第34回 透き通る海を背中に浜カレー 浜辺でスパイシー
一湊海水浴場 「カレー専門店 屋久島カレー グロース」
第33回 梅雨明けを手土産に来い11号 ここは南国
安房 「ジャングル・キッチン近未来」 ※2018年閉店
第32回 どこにでもあれどどこにもないカレー どこでもカレー
楠川 「楠川ふれあいセンターじょんこう茶屋」
第31回 梅雨空に割りてすがしきカレーパン モーニングカレーパン
尾之間「ペイタ」
第30回 海山にガッツリカレー連れテイク ガッツリ登山弁当カレー
安房 「かもがわ」
第29回 台風も賑わうアジアの交差点 パワーアップして帰ってきたAmara
安房 「新Amara 南国酒場」※2016年閉店
第28回 屋久島にアジアの緑風巡り来る 京都からやってきたアジアンカレー
尾之間 「バリスタイル レストラン&バー Warung Karang」 ※2017年6月閉店→安房へ移転
第27回 ラーメンをスープにさらう島カレー ラーメン屋のカレー定食
宮之浦 「王龍(ワンロン)」 ※2016年閉店
第26回 脇役のカレー目当てに蕎麦すする カレーやってます
尾之間 「手打ちそば屋」※2016年閉店
第25回 春雨に煙る木立のカツカレー 縄文登山のカレー
安房 「杉の茶屋」
第24回 春の午後カレーも香り桜咲く 新しい春のカレー
尾之間 お食事処「春」(リニューアル店) ※2016年閉店
第23回 県道に萌え出づる春カレーあり 年季の入ったかわいい系喫茶店
小瀬田「花鈴」
第22回 花咲ける島のカレーに恵比須顔 島に溢れるなんでもありの多様性
安房屋久どん」
第21回 雲間より漏れ出づる陽のカレーかな 輝くカレー
安房 「島・しまキッチン」 ※2015年閉店

※ 番号の重複をご容赦ください

第21回 対岸に香れるカレー求めけり 海を渡って
鹿児島市 「チチビスコスリランカ かごしま」
第20回 どんぶりに残せる鹿よ悪しからず たしかにしか
宮之浦「カフェ・ヒトメクリ」
第19回 寒中の陽だまりすくう金曜日 金曜はカレーの日
宮之浦「陽だまり」※2018年→百水にリニューアル
第18回 小寒の温かなるビーフカレー 家路
安房 「和が家」※2015年9月閉店
第17回 新年のカレーで初心立ち返る 求めるものは店それぞれに
宮之浦「洋食の寺田屋
第16回 冬空に一人向かいてカツカレー カァッツ!
小瀬田「愛子亭」 ※2015年閉店
春牧 「ふれあい」
第15回 幻のカレーやいずこ天狼星 ここは屋久
安房 「萬来軒」 ※2016年閉店
第14回 冬の海眺めてカレー食らう午後 海の見えるカレー
宮之浦「Bay's Caf'e Jane」
安房 「和茶灯(わさび)」
第13回 食べることそれは生のあかしなり 木枯らしの吹き荒れる海ボンカレー
陳列棚のカレー 2
第12回 穏やかな秋のバザーにカレーあり マイルドバザーカレー
安房すみれ幼稚園
第11回 カレーには味も値段も決まりなし あっぱれなカレー
原 「ノマドカフェ」
尾之間「モッチョムビュー トーン」 ※2017年閉店
安房「田中屋」
第10回 一皿に カレーの美学 香り立ち アートなカレー
麦生「屋久ヴィータキッチン」
原「屋久ノマド カフェ」
第9回 賭け事は性に合わぬとシカトする 玄関口のカレー
小瀬田「屋久島空港食堂」
宮之浦「観光センター」
第8回 おいどんにカレーうどんは似合わぬか Aコープのカレーうどん
陳列棚のカレー
第7回 南蛮の香り受け継ぐカレー蕎麦 熊毛郡ゆかりの南蛮蕎麦
宮之浦「楓庵」
安房「きらんくや」
第6回 カレーから立ち現れし店の主 レストランのカレー
安房ファミリーレストランかもがわ」
安房サンパウロ
原「オリオン」
安房「よろん坂」
尾之間「トーン」
第5回 カレー屋と聞けば目覚める腹の虫 カレー専門店
小瀬田「屋久島カレー茶房 ハイビスカス」
宮之浦「カレー専門店 屋久島カレー グロース」
安房「カレーと多国籍料理の店 Amara」
第4回 手で割って頬張る楽しさカレーパン カレーパン事情
宮之浦「ひらみ屋」
安房「ヒロベーカリー」
安房「しいば」
尾之間「Pain de Sucre パン・ド・シュクル」
第3回 風を待つ街にカレーの風が吹く 「本格」「印度風」ばやり
島外のカレー
第2回 一皿の命の旨味有難し 樹林のオーロラカレー
小瀬田「樹林」
第1回 独りでもカレーが繋ぐ人の縁 萬萬亭の500円カレー
小瀬田「萬萬亭」