拝啓
まえがき
前回は、宮之浦のインド・ネパール料理店『すばらしい』さんの「ガネーシャ」と「ブッダ・アイ」とのネパール版神仏習合によるbon curryをご案内しましたが、
今回はその続編として『雪苔屋』さんの「天」のご案内。
「初版」をアップした後、何度更新したか分からなくなったので取り敢えず「六訂版」と名を付け替えました。
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『雪苔屋』さんには神さんのお札も福飾りもマスコットも皆無でしたがこの冬、お店のいたるところに壁画や摩訶不思議な文字?が出現。
いずれも雪苔屋さんのお宿『雪苔荘』に滞在された画家大岡弘晃さんの作品。
その一つがこちら。

左手の壁画をよく見れば3本の草のようなものが点線で繋がれた「天」。
その傍らには「∞」。

これは「三つの地上の命、雪苔屋の家族3人それぞれが無限に拡がる一つの天と結びついているのだ」とのお告げなのか?
神道的には「天(あめ)」と「人」は守護と感謝の循環による密接で一体的な関係。
神は人がこの世に生まれる以前から森羅万象に宿ると共に、人の祈りによって祀られた依り代(よりしろ)に天から降りるとも。
ならば壁画の点線は「作者の祈りによって神がここに降臨し雪苔屋は聖地聖域となった印」なのか?
はたまた人は死後魂となって産土神(うぶすながみ)の森に帰り守護神となるように、「雪苔屋ファミリーがやがては島を見守る守護神となる」との暗示か?
一方、カウンターに置かれた一枚のカード裏面には

「森に3つの ?¿ 天使」の文字。
「天使」はユダヤ・キリスト教的な「絶対神」に仕え、守護する神の意志を人間に伝える霊的存在。
ならば「雪苔屋ファミリーは天から屋久島の森に降り立ち島の人々に神の意思を伝える天使である」という啓示なのか?
いやまて、この壁画の向かって右には太陽のような金色の光が。

そして厨房入口上をよく見ればうっすらとyukigokeの金文字。

サンスクリット語で古代インドの神々、仏教の天を表すデーヴァ(Deva)は、ギリシャ神話のゼウス(Zeus)やラテン語のデウス(Deus)と同じくインド・ヨーロッパ語族の共通神話における「天空の神」を指す言葉。
「輝くもの」「天空」を意味する語幹 dyēus に由来する同根語。
また幕末に開かれた日本固有の宗教『金光教』の祭神は天地万有を生かす無限の働きをなすと言う「天地金乃神」。
そういえば屋久島にも原集落に金光教の教会が。
ならばこの天は……と書き続けようとすると
「ようそんなえぇ加減なことを次から次へと勝手にまぁ、ボケもそこまで回ったか!」と天からの声が聞こえたようにも。
しかし!絵画も含め芸術は、否あらゆる表現は作り手を離れた瞬間から受け手に解釈は委ねられるもの。
もっと言えば受け手によって作品は多様な価値を発見されるばかりか、時には作り手の意図せぬ価値が創造されるもの。
そう開き直って妄想スイッチを再ONすると別の天の声が。
「ユキコケヤワベンテンケシンノミセナリ」
この声の意味するところは何か?
その解釈を少しばかり……
まず「天」と聞いて即座に思い浮かぶものは天下一品、天丼、天ざる

天気図、名古屋城天守閣、鹿児島の天文館。
そして宮沢賢治の詩の一節。
「雨ニモマケズ」の一節を耳にした方も多いかと思いますが、それが詩ではなく「手帳に記された賢治のメモ」であり、その次のページに書かれていたのが法華経の「曼荼羅本尊」であることを学校では教えません。

(新潮日本文学アルバム 30 宮沢賢治より)

「南無妙法蓮華経」の向かって右手には
多宝如来と上行、無辺行菩薩
左手には
釈迦牟尼仏と浄行、安立行菩薩
そして手帳に書き込まれていませんが、大曼荼羅本尊の四隅には仏教の守護神四天王の持国天、増長天、廣目天、多聞天が常住。
※宮沢賢治の曼荼羅本尊 | 大角修のブログ参照 https://share.google/7kxlXLApWdeGFQz2a
また賢治の妹“とし”も熱心な法華教の信者でした。
その最愛の“とし”との死別を詠った賢治の詩「永訣の朝」には、“とし”の「うまれでくるたて」と言う言葉に対し、賢治の「兜率(とそつ)の天」と言う言葉が出てきます。

ここには「六道」を巡る輪廻転生の信心がにじんでいます。
“とし”には将来仏となる弥勒菩薩が住む修行者憧れの地「六欲天」の一つ「兜率(とそつ)天」に生まれ変わってほしいと賢治は願っているのかも。
一方、大河ドラマ『豊臣兄弟』を視聴されている方は、第4回で桶狭間の戦いに臨む信長が『敦盛』を舞う場面を見られた方もいらっしゃるかと。

歌の意味は『人の世の五十年は天の時間と比べれば夢や幻のように儚い。一度生を受けても死を免れることはできない人生だからこそ惜しみなく生きよう』と言ったところ。
この歌詞の「下天(げてん)」とは「六欲天」の下部、四天王と呼ばれる持国天・増長天・広目天・多聞天や七福神のメンバー毘沙門天や吉祥天などが住む天。

左の毘沙門天さんと右の吉祥天さんはご夫妻。
下天(四天王界)に住む天人の寿命は500歳ですが、下天の1日は人間界の50年なので人間界に換算すると約900万歳。
ちなみに一つ上の天、忉利天(三十三天)の主宰者である帝釈天(インドラ)の寿命は1000歳ですが、忉利天の1日は人間界の100年なので人ならば3600万歳。

映画「男はつらいよ」でもお馴染みの帝釈天さんは象に乗るお姿も。
また横道にそれましたが「天」の時間は人からすれば無限とも感じられるほど長いということ。
では、雪苔屋に書かれた「天」はこの「六欲天」を指すのか?
それを突き止める上で、まずは「六道」と「六欲天」の関係を次の図で。
仏教にも様々な宗派がありますので「んん?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、そこはご容赦を。

要するに天に住まう者もまた輪廻転生(死と再生)の輪からは逃れられず、天もまた人と繋がり循環する存在だということ。
(これを伝えるために作った図の製作は二日掛かり。そんなもんやな)
では雪苔屋と繋がる「天」とは?の妄想開始。
雪苔屋さんは2013年、六角堂でかき氷屋台として出発。

2014年5月18日、六角堂「Spicy Book Cafe Eat Herb」のオープンの日にはくまちゃんがライブ演奏もしてくれて、毎週日曜雪苔屋と共に営業していた時期も。
六角堂から離れて2015年には宮之浦のフェリーターミナルにお店を出し
島内外のお客様から愛されるお店になって屋久島PRのポスターにも。

2018年5月に宮之浦のお店を閉じて
2018年9月に今ある永久保のお店をオープン。
それから早や7年半。

六角堂→フェリーターミナル→永久保と場所は移りながらも生まれ続けた幾多の歌。

それも氷≒水を操り歌を愛でるまりなちゃんが居たからこそ。

かき氷を欠いているのは高畑充希や忽那汐里の親戚ではなく

インドの女神サラスヴァティーを祖とし

中国を経て日本に帰化した弁財天さんの”化身“。

弁天さんは全国各地、様々なお姿で現れます。
下の二枚の画像は共に江の島にある江島神社の弁天さん

左の八本腕が「八臂(はっぴ)弁財天」さん。
仏教の経典『金光明最勝王経』にもとずいたお姿で弓、矢、刀、鉾(ほこ)、斧、長杵(ちょうきょ)、鉄輪、羂索(けんさく)など、衆生を守り邪悪を退けるための武器を携えた戦神・守護神。
右は琵琶を抱えた「妙音(みょうおん)弁財天」さん。
裸弁財天とも呼ばれますが、裸なのは季節や祭礼に合う着物を着せるため。
屋久島のカフェに立たれる時はチェックのシャツを着られるかも。

「妙音」とは「非常に美しく尊い音」のこと。
弁財天のルーツであるインドの女神サラスヴァティーが音楽の神とされたことから、美しい調べを奏でる神としてこの名が。
それ故、特に音楽や芸能の神様として、多くのアーティストや芸能関係者から厚く信仰されているそうな。
更には日本古来の食物の神である宇賀神とも合体習合。

人頭蛇身の老翁がとぐろを巻く穀霊神であり龍神の化身とされる宇賀神さんをちょこんと頭の上に載せているお姿。

上は平塚市妙圓寺の宇賀神さんを頭に載せた土屋銭洗弁財天さん、左下は同寺岩屋霊穴に住う宇賀神さん、右下は宇治市三室戸寺の宇賀神さん。
弁天さんは本来の芸事上達や学業成就に加え、「弁才」から「弁財」に表記も移り変わって金運上昇・商売繁盛、更には五穀豊穣のご利益まで備えた七福神紅一点の美女神。
こうなればまりなちゃんはお店を繁盛させて歌唄いのくまちゃんの作詞作曲を支える弁天様の化身、“マリナ弁天様”と呼ばせてもらってもバチは当たらぬのではないかと。
おまけに弁天さんの功徳を説くお経は、8世紀日本に伝来し聖武天皇が写経して全国に配布した『金光明最勝王経』。
『金光明』とは「黄金の輝き」のこと。
まさにあの壁画の光そのものかも?と。
加えて壁画の「天」の右上と、輝く円盤の左手にある「∞」(無限)マーク。

賢治が自分の「すべてのさいわいをかけてねがった」兜率(とそつ)天の住人の寿命は4000歳、兜率天の一日は人間界の400年に当たるので人ならば5億7600万歳。
そこで修行を続ける「弥勒菩薩」は釈迦の死から56億7000万年後の未来に兜率天から地上に降臨し、人々を救済するとされる未来仏。
もはや無限と呼んでよい時間。
天の横の∞は仏教で言う融通無碍(むげ)を表すものなのかも。
人が天や自然と一体になることで個人の小さな枠を超えた自由が生まれ、こだわりや欲望から解放された境地に至る。
“マリナ弁天”に支えられたくまちゃんの楽曲は更なる広がりと深みを得ることができるのでは。
くまちゃんが庭で育てたローゼルをまりなちゃんがジャムにして焼いた「ビクトリアケーキ」と

くまちゃんが焙煎して淹れた珈琲「雪」を頂きながら改めてそうしみじみ感慨に耽るひと時。
六角堂の蔵書『弁才天信仰と俗信 』(笹間良彦著:雄山閣刊行)に寄れば

弁天さんは関東での信仰が厚く、特に上野・浅草近辺には弁天さんが各所に。

『浅草寺』の弁天さんは白髪なので通称「老女弁天」

『不忍池辯天堂』は六角ならぬ八角堂

https://share.google/vR0SWEPEGfERs0fJA
同じ台東区の『岡倉天心記念公園』(岡倉天心旧居跡)には六角堂も。

ちなみに次男への腎臓提供手術をした京都府立医科大学病院からほど近く、リハビリがてら毎日散歩した鴨川の川辺り、出町柳「妙音弁天」さんがいらっしゃる『出町妙音堂』は六角堂。

出町妙音堂(妙音弁財天),Demachi-myoon-do Temple "Kyotofukoh"には詳しい説明も。
また栃木県足利市の『明石弁天厳島神社』の御祭神は「市杵島姫命」の分身とされる「美人弁天」さん。
そのお堂も六角形でなんと「美人証明書」を頂けます。

https://bijinbenten.com/about/
こうして巡るほどに弁天さんへの親しみは増すばかり。
2026年新春初商いで頂いたのはココナッツぜんざい。

トッピングされたピスタチオの彩りは如何にも雪苔屋風で佳し。

「真っ黒チーズケーキ」と珈琲「雪」のコンビは雪苔屋のベーシックセット。

テイクアウト用の焼き菓子『おはな』はマリナ弁天様の原点?
その新作『パウンドサンドケーキ』は

あたかも苔むした弁天さんの祠のように見えました。

https://www.kanzaki-museum.com/frmDataDetail.aspx?id=1038
ご馳走様でした。
長らくお世話になった雪苔屋さん。

六角堂の住人としては雪苔屋の入口に置かれた六角形の蚊遣入れ程のお役に立てたなら幸いです。
どうぞ夫婦円満家内安全商売繁盛、マリナ弁天焼くお菓子とくまちゃんの歌が末永く人々の幸となりますように。
https://www.instagram.com/yukigokeya

ところで、
屋久島には弁天堂は無く、吉田の「森山神社」境内に「弁天石像」があるのみ。

場所は吉田バス停の真ん前。

台座の正面には『屋久島七福神霊場一番』の文字。
裏に刻まれた開眼供養した高野山の大僧正の名がお飾りでないことの証明。
そしてこの弁天さんが『屋久島七福神心霊会』の活動の起点。

https://www.jk-7.com/729/info/idea.html
このブログ記事を書くにあたって島の弁天さんに一度はお詣りをと出向いた帰り伺ったのは、4ヶ月ぶりに営業再開された宮之浦の『やまがら屋』さん。
お札や福飾りは見当たりませんが、

店の入口では愛らしい招き猫が慎ましくお出迎え。

食事は完売だったので「昔懐かしいカスタードプリン」と「できたて本葛餅」と「甘酒」を。
三つ合計で1000円は申し訳ない限り。
南に下ったmori cafe前では今日も天に向かってスックリと立つ虹の脚。

それともそっと天から降ろされた七色の階段か?
それを登ってもアーチゆえ、また少し離れたところに降りてくるだけ。
それは六道を巡る『輪廻転生』の象徴のようにも。
私自身は死ねば焼かれて煙と灰の無機物に、やがては新たな有機物の元になるだけだと。
輪廻どころか魂も信じておりません。
ただ人の想像の及ばない大いなる何かがあることは確かだろうと。
それを物理の法則と呼ぶのもよし、神や仏あるいは天と呼ぶのも有り。
毎朝神棚の水を替え一礼するのは己の奢りを戒め、支えて下さっている万人万物への感謝を怠らぬようにする為。
そんな無信心な不届者が綴ってきた『お店の神さん詣』もこれにて完。
敬具