拝啓
旅のまとめ⑥を書いてから、あれこれ立て込んで続きを書くゆとりがなくなっておりました。
今更感もありますが、このまま途中で終えるのも何なので速足で巡り終えたいと。
そこでは屋久島の未来を切り開くヒントも多く採取することができました。
2月5日の早朝(と言っても午前6時半過ぎ)、宿を出てバスセンターへとことこ。
バスに乗ること30分ほどで富岡港へ。
長崎茂木港に向う高速フェリーの切符を購入。
風情のある富岡港ターミナル。
屋内にはストリートピアノ。
売店には天草特産の真珠のアクセサリーも。
岸壁に向かうと……
熊本県立天草拓心高等学校海洋科学科の実習船「熊本丸」の姿が。
この高校の海洋科学科については、後ほどまた。
店内のポスターには名勝『おっぱい岩』の案内も。
見るべき場所をとても二泊では周り切れませんでした。
そして19t乗客55人乗りのフェリー『KIZUNAⅡ』に乗船。
カジキ釣りでもできそうな後部デッキ。
船内は二段。
出航後、後部デッキから19ノットで去り行く天草の写真を撮っていたら、
「出航後は立ち入り禁止です!」と叱れて「すんません」と客室に。
下段の船室から眺める海は迫力満点。
1時間もしないで長崎茂木港に入港。
長崎行きの長崎県営バスに乗り換える間、港をふらふら探索。
すると港の正面に立派な石の鳥居が。
その鳥居の内側にはえびすさんの一群。
お顔もポーズも違うえびすさんの群像に、
長崎県民の魚や漁に対する思いの深さを実感。
降車ボタンのレトロ感に感慨ひとしお。
大改装中の駅前、駐車場にはさらにレトロ感漂う小型バス。
とりあえず長崎アミュプラザの食堂街の「皿うどん」で腹ごしらえ。
駅裏からホテルの無料送迎バスで伊王島へ。
この日、長崎ランタンフェスティバルの最終日。
ホテルにも『長崎燈会(ながさきとうかい)』の文字の入った提灯が飾られておりました。
ちなみにランタンフェスティバルとは、中国の旧正月を祝う「春節祭」を起源として、長崎市内中心部にランタン(中国提灯)などたくさん飾られ、街を彩ってくれるイベント。
それを知ったのはホテルに着いた後。
相変わらずの行き当たりばったりの旅。
それなら夜まで市内に居ればよかったと思ったのも後の祭り。
この夜はホテルの売店と温泉巡り。
そこで気になったのがこちらの「あご=トビウオ」加工商品。
長崎も屋久島同様トビウオが売りの一つのようですが、
商品の中にはベトナム産のトビウオを使用している商品が。
また説明書きでは長崎沖合で獲れたトビウオと謳いながら、
原材料表示の中ではブドウ糖は「国内産」と特記しつつ、
トビウオには産地表示なしの商品も。
豚もまたしかり。
原材料に気を遣い裏書を注意深く確認するお客様が増えている昨今。
どんなもんじゃろう?と首をかしげる方もいらっしゃるのでは。
そしてとっぷり温泉に浸かって明けた翌6日。
ホテルの無料レンタルシェア電動アシスト自転車で島内巡り。
トゥクトゥクも利用できましたがやはり自転車で。
島の其処此処にサイクリング用のマップが設置。
主要道路にはちゃんと自転車専用レーンが設けられておりました。
まず向かったのは、
この旅の動機、映画『家族』のロケ地の中心、馬込教会。
思った以上に立派なたたずまい。
残念ながら教会の中に入れませんでしたが、
信心深い人々の祈りの場所であることを実感。
教会の尖塔が下に見える倍賞千恵子の家はどこかとうろついていると、
住民の方と思しき高齢の男性が、ロケに使った家の跡地を案内して下さったばかりか、
閉山された炭鉱の坑道跡地まで案内してくださいました。
今では藪に閉ざされて立ち入ることはできませんでしたが、
案内して下さった方は、若い頃この炭鉱で働いていた方で、
「地下1,000m以上まで下りて行った炭鉱の中は蒸し風呂のようで、
持って行った弁当の白飯がススであっという間に真っ黒になってしまうのが辛かった」などと語ってくださいました。
偶然出会った土地の方の話を伺うのもまた、こうした旅の収穫です。
教会の裏手にはキリスト教様式の墓も散見。
坂を下って、トロトロ自電車に乗り、
下った先は港のカフェ。
数種類ある中から気に入った豆を選び、自分で手回し挽き。
専用紙ドリップで淹れて飲む。
これがなんと「無料」!
次に向かったのは灯台。
なんと六角形。
先代の灯台の六角形の基礎石には相合傘の彫り物がいくつも。
昭和の時代「写生大会に来た中学生が彫ったもののよう」との案内板までありましたが、
この子達は今どうしているのかしらんと想像するのもまた楽し。
その脇にはブランコ付きカフェ。
こちらは数種類の中から好きな日本茶の茶葉を選び、
自分で焙煎。
ポットのお湯で煎れて飲む。
こちらもまた「無料」!
そのあと向かった海岸にもカフェ。
こちらにはハーブティが用意され、同じく自分で煎れて飲む。
こちらも「無料」!。
浜辺のシャワー施設の脇には、
小さな子供用のプールが。
ファミリーを意識した視点、心配りがあるかないかは観光のお客様の満足度に大きな差がつくかと。
更に、その道中で見つけたのが展望所の据え付け型双眼望遠鏡。
100円入れるのかしらんと思ったのですが、こちらも「無料」。
遥か沖合の軍艦島をしっかり視野に入れることができました。
そしてもう一つ。
長崎市の移住促進住宅。
なんともまあ立派で小奇麗でお安い「交流滞在型宿泊施設」。
六角堂も移住促進施設と言えるかと。
その周辺には移住された方らしき家が並んでいたのは、麦生の風景にも似た風情。
昼食で利用したホテルが経営する施設にはなんと図書室。
二段構造の「寝床」ではゆったり寝そべりながら漫画を読んでいる方々が。
こちらもまた六角堂スパイシーブックカフェのコンセプトに重なるもの。
こうした島の現況がどのように生み出されたのかご興味のある方は、
こちらのサイトでその片鱗を伺うことができます。
【地域開発からの学び】
◎ 商品開発
屋久島では海産物(主にトビウオとサバ)と農産物(主にタンカンなどの柑橘類)と畜産物(黒毛和牛)と野生動物(ジビエとしてのヤクシカ)が「売り」にされ、様々な商品開発の努力が個々に進められています。
ただ、「島のブランド力を全体としてどう高めるか」といった視点が弱いようにも。
個人・企業・産業の垣根を超えた商品開発をどこが進めていくのか。
それが試されているのだと。
◎ 自転車専用レーン
屋久島にも何軒かレンタサイクルのお店があります。
ネットで「屋久島 レンタサイクル」と検索すと出てくるいくつものサイト。
ところが、実施にはもう廃業・休止されているところも。
また宿泊施設「ヴィラウルー」さんのサイトではサイクリングの案内・注意も。
結論的には自転車ではなくレンタカーがベターとなってしまいます。
その一番の要因は伊王島のような「自転車専用レーン」、あるいは原付バイクや電動カート、ランナーが安心して走れる「軽車両兼用レーン」がないこと。
島内で、自転車に乗っている子供の姿を見ることはイベントの時しかないのが実態。
まずは高校生のバイク通学を許可し、他の住民や観光客も安全に活用できるレーンを作ること。
それが新たな観光客誘致にもつながるのではないかと。
◎ cafeの連携
屋久島では三年ほど前から有志の方の取り組みで、閑散期のカフェ巡りスタンプラリーが行われています。
大変な労力と強い意志で継続されている企画に頭が下がります。
https://www.instagram.com/cafe_hopping.yakushima/
ただ、それを年間通して、より多くのお店を繋ぐには様々な課題が。
スマホで使えるアプリを開発して、より包括的かつ有機的なネットワークを作ることが肝要かと。
以前このブログの「お水の島プロジェクト」シリーズで提案した「屋久島HOYHOY」の可能性と必要性を再認識しました。
◎ 船から学ぶ
海洋航海コース(定員20名)があり、
船長・航海士になるための海技士資格取得、
小型船舶の操縦士になるための資格取得、
伝統漁法や漁具の作成や釣り技術を身につけられるとのこと。
第五熊本丸での実習では、
主に漁業や大型船舶に関する知識や運航技術を学び、
3年次には自分たちで実習船「熊本丸」を操縦し、
熊本から東京までの航路を往復。
また、栽培・食品コース(定員20名)では、
海洋生物や水産食品について学び、
実際に生産・加工・流通・販売することで水産業の6次産業化を担う人材を育成を。
海洋科学科 - 熊本県立天草拓心高等学校 (higo.ed.jp)より抜粋
一方、
鹿児島県には「鹿児島県立鹿児島水産高等学校」の
海洋科海洋技術コースには「薩摩星雲丸」が。
普通科の他に「情報ビジネス科」Information Business Courseが。
「情報処理機器を活用した科目を中心に,ビジネスに関する学習を様々な角度から行います。専門科目授業の一環で検定取得に挑戦し,多様な進路を実現できます。」
主な専門教科は
○簿記○情報処理 ○ビジネス基礎 ○ビジネス情報 ○マーケティング ○原価計算
○課題研究 ○財務会計 ○管理会計 ○商品開発 ○広告と販売促進 ○総合実践
取得できる資格は
○簿記実務検定 ○情報処理検定 ○ビジネス文書実務検定
○ 英語実務検定 ○日商簿記検定 ○ 商業経済検定
○ 珠算・電卓実務検定 等
限られた条件でしかも一学年が3クラスしかない高校です。
その中で地域の特性と人材を活かし、生徒を確保するにはこれでいいのかと疑問を持っている町民も。
一学年3クラスが2クラスになりかねないのが実情。
全国から留学生を募ってはいても集まる人数はわずか。
そこで求められるのは思い切った改革。
離島ならでは、
三年間で山と海と沢のガイドに必要な知識や技能や資格を取得できる実践的な学科の創設。
例えば、
・無線、小型船舶、救命救急などの資格取得
・登山、カヤック、スキューバーダイビング等の技能・ライセンス取得
・島の自然や産業、歴史や文化の知識習得
・農畜海産物の商品開発や宿泊・サービス業での実習
・日常会話が可能な程度の複数言語の習得
つまりは地元の産業と提携した「観光産業ガイド科」創設。
全国から入学希望者を募り、卒業生が全国、全世界で活躍できる学校に変身させる。
地元の中学生だけでなく、日本中の中学生が「屋久島高校に入りたい」と願わせる学校に改革することが、島だけでなく日本の教育を変えるかも。
それを妄想と呼ぶ限り、島の未来は開かれないかと。
次の町長選挙に立候補しようとされる方には、
本気で「県立高校」の改革に乗り出してほしいと切に願うばかり。
つづく