拝啓
入院五日目。
これまでに朝・昼・夕の12回、病院食を頂きました。
そのうち4回の主菜が魚。
皆美味しく頂きましたが、西京焼きがことのほか気に入りました。
「西京焼き」とは……
「西京味噌」とみりん・酒などを加えた漬け床で、
さわら・銀だら・まながつお・鮭などの切り身を漬けた
「西京漬け」の魚を焼いた料理。
西京味噌は、米麹をふんだんに使った甘口の京都の白味噌。
明治維新で江戸に遷都後、京都は西の都ということで西京、
京都の白味噌を西京味噌と呼ぶようになったとか。
古来、京の都は海から遠く離れており川魚以外鮮魚が手に入らぬ地。
若狭から通じる鯖街道に象徴されるように、海産物を塩漬けやら味噌漬けやら酢締めやら様々に加工・調理した魚料理が発達。
刺身(=生の魚)が庶民の口に届くようになるのは冷蔵庫が普及する昭和40年代以降のこと。
だからこそ、
旅先の豪華なお膳に「刺身」は欠かせない一品になったのですが、
冷凍、輸送技術が発達した今日では、
回転寿司の興隆に見られるように、
刺身はよほど新鮮なものや地魚でもない限り気を惹くものでなくなったのも事実。
山間の旅館やホテルの夕食に鮪や鯛や伊勢海老の料理が出てきて興ざめといった声もしばしば。
では、屋久島のお宿の魚料理はどうなのか?
試しに島の南部の「JRホテル屋久島」のHPを覗いてみると
レストラン | JRホテル 屋久島 (jrk-hotels.co.jp)
本日のお造りの他に、
地魚の燻製 大根と和辛子のマヨネーズ和え
屋久サバ節のクリームチーズディップスタイル
屋久島の地魚の赤出し汁
飛魚の揚げつみれのおすまし汁
鹿児島県産うなぎの白焼き
鹿児島県産ブリの幽庵焼き
などが。
島の北部で最近リニューアルしたばかりの
「THE HOTEL YAKUSHIMA」(旧シーサイドホテル)のHPを覗くと……
お食事 | シーサイドホテル屋久島 (ssh-yakushima.co.jp)
事前予約の注文料理として
首折れサバの刺身
飛魚の刺身
ミズイカの刺身
飛魚の唐揚げ
かんぱちのカマの唐揚げ
とこぶしの旨煮
亀の手の味噌汁
アサヒガニ
などが。
島では定番と言えるようなトビウオやサバ、亀の手などがありますが、
残念ながらその調理方法に目新しさはありません。
もっと言えば、
魚好きの目を惹いたり、
魚が苦手な若者の興味を誘ったりするパワー不足。
季節折々に水揚げされる魚の多様性を活かせていないのは、
オーシャンビューを売り物にするホテルとして努力の余地ありかと。
様々な島の魚の味噌漬け焼きぐらいあってもよさそうなものなのに。
味噌漬けなど田舎臭いと思っていらっしゃるなら大間違い、
発酵食品は世界的な潮流であると同時に、
観光客が求めるのは“洗練された田舎臭さ”なのだとも。
できうれば、
屋久島在住のデザイナー田中ミエさんによる
屋久島の「魚介イラスト図鑑」の魚を
日替わり週替わりで、
様々な調理法を用いた創作料理をメニューに載せるくらいの勢いが欲しいもの。
「屋久島ことばでさがす魚介イラスト図鑑」展 島の魚を親しみやすいイラストで紹介 - 屋久島経済新聞
ただ、
大きなホテルでは漁獲量の少ない魚をメニューに載せるのは厳しいかもしれませんが、
それこそ数量限定プレミアムメニューにするのもあり。
一方、
小さなお宿では和・洋・中・エスニックなどのメニューの独自開発は厳しいかと。
そこで、島の魚の活かし方を研究されている
「屋久島おさかなnet | Facebook」さんなどの力を結集して、
開発された季節折々の屋久島魚料理のレシピを公開、
必要な食材や調味料を共同仕入れし、
小さな店にも利便を図りコストを下げる。
さらにはお昼を頂けるカフェや定食屋さんにもすそ野を広げる。
それを実現できるような働きかけを、
民間にとどまらず島の行政、
先月の選挙で当選された議員さん方がフットワークよく進めて下されば幸い。
全国どこでも同じかもしれませんが、
屋久島の課題もまた同業、異業種、官民の壁を越える事かと。
次回は地域の活性化を促す食の役割を探ってみます
敬具