屋久島六角堂便り~手紙

自然と人が織りなす屋久島の多様性を屋久島六角堂から折々にお伝えします

「海神」台風10号到来覚書 明日のために

拝啓

前回のブログ更新(8/28)からこの10日ほどの間、二つの台風が接近。

9号Maysak(カンボジアの木)さんは9月3日に屋久島の西方を通過してホッとする間もなく、

10号Haishen(中国の海神)さんが接近してアタフタ。
10号は当初の予想ほどには発達せずに済みましたが、暴風域に入った屋久島にも海神様の足跡・爪痕が。

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そんな一週間を少しばかりご案内。


8月29日、一艘の漁船が漁にいそしむ静かな麦生沖。

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しかし、その頃既に、Windy.comの予測では9月2日に9号、6日には10号が屋久島に接近することを予測。

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その様子は9月1日のひまわりの画像でもはっきりと。

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9号は予測よりも西側に進路を取り、屋久島は9月3日に強めの風が吹き、フェリーが欠航する程度で済みましたが、長崎の五島列島北朝鮮では大きな被害も。

長崎新聞台風9号長崎県被害状況 離島中心に家屋倒壊など、5人軽傷

NHK WEB NEWS 北朝鮮 台風9号被害 キム委員長が復旧へ1万2000人派遣指示

9号の後を追う10号は「これまで経験したことがない猛烈な台風」に成長すると予想され、十島村・三島村では史上初の島外避難も。

NHKニュース「台風10号接近 鹿児島県の離島 十島村・三島村 初の島外避難避難」

9月4日のひまわりの画像には沖縄に向かう10号の姿がくっきり。

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六角堂もこれまでにない警戒態勢を取ることに。

まずは、春牧の建築資材屋合同さんで角材や金具を購入し、以前作ってばらしてあったコテージ山の手作り雨戸をリニューアルして設置。

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その間にも10号は刻々と近付き

9月5日のひまわり画像では海神の目に睫毛が付いて眉毛まで。

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そこで春牧の有水製材所さんで板と垂木を追加購入しに伺うと、次から次へと資材を求める方が訪れておりました。

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頂いた資材でコテージ山-恋愛羅房とコテージ海-風来裸防のシャッターのない窓に台風養生。

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軒に掛かりそうな鹿児島県木カイコウズの枝を払い、

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最後に、接客担当招き猫ニャーの従業員宿舎の養生。

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当人は結構気に入った様子で、中に入ってちんまりと。

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一方、町役場の防災無線やHPでは「避難所への避難に限らず、安全な親戚や知人宅への避難も検討くださいますようお願いします。」との呼び掛けが。

島内のホテルの中には避難住民や報道取材者で満室の所も。
六角堂の二棟のコテージにも、避難場所を求めてお客様がご滞在されることに。

気を引き締め直しつつ、いよいよ台風を迎えた6日
尾之間のAコープ駐車場には島の南部の電気を支える屋久農協の高所作業車がスタンバイ。

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予想通り、午後3時過ぎから停電開始。
夕暮れ時の麦生の海は、逆巻くうねりと波しぶきに海鳴り。

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台風通過の午後8時頃には母屋が時折ミシッと揺らぐ突風も。
そんな最中、ニャーを気にかけて下さるお客様から安否を問うメールを頂き、様子を伺いに行けば……

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寝ているところを起こされて不機嫌そのもの。

麦生地区の停電は思いの他早く、深夜11過ぎに復旧。

そしてあくる7日、
麦生沖の海は不思議なエメラルドに輝き、ニャーはゴロリとストレッチ。

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残念なことにティーツリーは半分にボキリと折れてしまいましたが、

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レモンもバナナも実を落とさずに堪え忍び、

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この夏、コロナ対策で母屋のデッキに新設したカウンターテーブルやテイクアウト小屋も、リニューアル看板も、コテージも無傷で済みました。

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コテージにご滞在下さったお客様も、停電によるご不便以外は快適にお過ごし頂けたとのことで一安心。

 

島民のSNSでは「たいした被害も無くてよかった」の声がいくつも上がっていましたが……

24時間経っても停電が復旧しない地区は各所にあり、深刻な被害を受けたとの情報も。

 

そこで8日、

台風養生の後片付けやコテージの掃除をし終えた後、まずは湯泊へ。
県道から温泉への坂を下れば、湯泊堤防の驚くべき姿が。

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激しい波の力で引き離された堤防の先端が数メートルもずれて分断。
Googleの航空写真と比べると何が起きたのかが明瞭に。

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次の台風までには到底補修は無理かと。

そして湯泊温泉に向えば無残な姿。

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奥の磯の温泉が無事だったのは幸いですが、

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堤防際の温泉を皆が使えるようになるまでに、どれほどの労力と時間が掛かることかと。

 

その夕方、宮之浦へ。
途中の小瀬田の県道沿いには小型漁船が5隻陸に避難されたまま。

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クレーン車で揚げたり下ろしたりするだけで、どれほどの手間や費用がかかることやら。

 

そしてその先、屋久島高校の校門から山手を望めば、傷んだ町営宮之浦体育館の屋根が遥かに。

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体育館の前に車を回せば廃材の山。

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脇の坂から中をのぞけば窓越しに、剥がれ飛んだ屋根の無残な姿が。

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避難所に指定された体育館に避難して被災とは。
負傷者は出ず、隣接する屋久島高校の元寮の建物に移動して夜を明かされたそうですが、その心中察するに余りあります。

その帰り途、体育館にほど近い中島タタミ店さんに寄り、折れたプルメリアの枝を分けて頂き、六角堂に戻って「メネデール」で養生。

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この台風のあれこれを忘れないための記念樹にと。

島を過ぎ去った10号の様子をNHK WEB NEWSの特設サイトで確認すれば各地でひどいことに。

 

一方、島内の被害状況を屋久島町役場のHP「被害状況・避難所情報」で確認すると、湯泊のことも体育館の被災報告もなし。

「宮之浦体育館の利用禁止について」の連絡はあっても、避難所で島民を危険に晒したことへのお詫びはなし。

 

こんな時こそ、町長自ら「怖い目に遭わせてすんませんでした。次の台風襲来までに島内すべての避難所の安全を再確認します」のメッセージを発してほしいものだと思い、
HPの「町長の部屋」を開けば、2019年7月18日の「屋久島観光安全宣言」が“最新情報”。
台風どころか、コロナ災禍への言及も詐欺罪での告発への弁明もなかったとは情けなや。

自然災害は神の怒りでも罰でもなく自然の摂理、宇宙(物理)の法則に従って起きているにすぎません。
だからこそ被害を最小限に抑えるのは、人間の自然に対する畏敬の念と十分な情報、そして合理的な判断かと。

屋久島の台風シーズンは11月半ばまで。
「災害は忘れる前にもやってくる」

みなさま、ご安全に。

敬具

追伸

2年前の2018年9月30日、屋久島を襲った台風24号チャーミーさんの顛末についてはこちらからどうぞ。

たった2年しか経っていないのに、あの時の被害を忘れていらっしゃる方も多かったのではと。


追追伸

屋久島町の一地区、口永良部島の様子は“本島”にほとんど伝わることもないまま、ご苦労が続いているご様子、FBの投稿をご紹介。

www.facebook.com