拝啓
所用で鹿児島市内に出向いた折、カレー専門店を探すのも楽しみの一つ。
これまでも
『第21回 対岸に香れるカレー求めけり』では「チチビスコ」さんや「スリランカ かごしま」さん
『第58回 あざなえる縄の目の間のカレーかな』では「田中カレー」さんなどを紹介してまいりました。
他にも名山町の「フレンド」さんや
中央駅の郵便局向いの「サフラン」さんも庶民的な人気店で好感が持てますが、
名山町でインド(ネパール?)人の若者が調理する「epice」さんはお薦めの店の一つ。
鹿児島市内でカレーをと思われたら一度足をお運びください。
で、先日鹿児島に出向いた折も、新たな出会いはないかと思っていたところ……中央駅から郵便局の前を通り十字路を左折して踏切を渡る手前に「カレー屋」の看板を発見。
その名は「匠(たくみ)」。
早速入店すると、シンプルこの上ない店内の壁にはメニューやら
案内書がそこここに。
カウンター席に座ってメニューシートを手に取ると
辛口和牛+中辛黒豚の「匠盛」も気にはなりましたが、「黒豚バラカツカレー」を注文して待つことしばし……
滋味深いカレールーと柔らかな豚バラカツの風味がバランスよく組み合わさった穏やかで優しいカレーでした。
聞けば、ランチタイムのチキンや豚のカレーは廉価で食べられるように具材を少し変えてあつらえたものとのこと、お財布にも優しいお店のようで。
鹿児島市内のお店にも学ぶところは多かったですが、実はここからが本題。
天文館の鹿児島物産店を勉強のために覗くと、そこには「ご当地レトルトカレー」や「ご当地ラーメン」がずらりと並んでおりました。
その中から、離島のカレーを二箱選び、六角堂に持ち帰ってワクワク試食。
まずは鹿児島港から13時間の船旅の末に辿り着くトカラ列島(十島村)の宝島、トカラタカラ果樹園さん販売の「島バナナカレー」。
箱の裏面にはトカラ宝島の案内とカレーの能書き
温めたレトルトパックを皿に盛ったご飯の脇に掛けると……クリーム色のルーに浮かぶ三本の物体が印象的。
並んでいたのは島バナナと思いきや、骨付き鶏肉でした。
糖度25度を超えるという島バナナの甘味とチリの辛味がじっくり溶け込んだクリームシチュー風のホワイトカレー。フルーティーな味わいは南国的かと。
そしてもう一品は、鹿児島県奄美大島の南西に浮かぶ徳之島、徳之島町が製造販売する「徳之島地福咖喱」。
箱の裏面には徳之島三十三聖地の史跡マップが
温めたレトルトパックを皿に盛ったご飯の脇に掛けると……褐色のルーに盛り上がる二枚の厚切り三枚肉。
しっかり炒められた玉ねぎとニンニク・ショウガで深みが加わるトマトベースの重厚な趣き。
食べ応えのある豚の三枚肉には仄かに島特産の黒糖酒が香り、素直に上手い。
屋久島にも「屋久島 森のカレー」が存在しますが、
屋久島にも「屋久島 森のカレー」が存在しますが、
残念ながら天文館の物産店には陳列されておりませんでした。
観光客減少を嘆く前に、今こそ地球人の胃袋をつかみ舌の記憶に刻まれるレトルトカレーを島を挙げて開発すべき時かもしれません。
敬具
屋久島カレー事情インデックス
第72回 タンカンの揺れる畑にカレー咲く
原 「冬季限定 nicoichi食堂」 ピリ辛チキンカレー
第71回 平成の終わりに昭和を食らいけり
原 「木村珈琲」 黒毛和牛のすじ肉カレーライス
第70回 香り立つうまし島ぞとあきもせず
小瀬田 「ひよりや」
麦生 「ティールーム トローキ」
第69回 ココナツの花咲きにけりカレー皿
平内 「naa yuu cafe」ココナッツチキンカレー
第68回 台風に勝てるものかはカツカレー
宮之浦 「屋久島ふるさと市場 島の恵み館」
第67回 持つものを活かし味わう恵比須顔
宮之浦 「カフェギャラリー 百水」
第66回 神山を愛でる花火に幸願う
宮之浦 「こむぎこ」
第65回 縄文の暮らし偲ばん筍の旬
横峯 「のどか」
第64回 やまがらのかれいなるひぞ梅雨の入り
宮之浦 「やまがら屋」
第63回 歳月の深めしことばあじわえり
原 「ノマドカフェ」
安房 「umi cafe」※2018年閉店
第61回 春雨に閉じて開いて萌える山
安房 「喫茶ケルン」※2018年閉店
第60回 猫舌に優しきごはん冬の海
安房 「Warung Karang」
第59回 森に虹魚介香し島カレー
宮之浦「浜焼き 悠楽」
第58回 あざなえる縄の目の間のカレーかな
鹿児島市内
「田中屋」
「鹿児島市立病院レストランだんらん」
安房 「ちーぞー」
第57回 梅雨空のひょうたん島を臨むチャイ
永田 「sea & sun」
第56回 薫る風命育む薬の島
原 「食堂 もっちょむ山荘」※2017年閉店
第55回 宮参るカレーひと匙厄払い
宮之浦「宮カフェ」
第54回 しぶとさの秘訣は迷わぬ自然体
一湊 「なっちゃん食堂」
第53回 春陽の海を越えゆく森カレー
小瀬田「moricafe STAND」
第52回 冬籠るカフェの新たな春待たん 今年最後の豆腐カレー
原 「ノマドカフェ」
第51回 勤労の香りぞ高き島カレー 夏には夏の冬には冬の味わいを
安房 「山カフェ」※2018年閉店
第50回 島の濃き緑染み入るカフェカレー 最北のカレー
永田 「水照玉」
第49回 段々の青き棚田に福来れ 爽やかな女将さんの前途を祝して
椨川 「たぶ川」※楠川へ移転
第48回 島に居て上機嫌なる腹の虫 一食の価値あるアートカレー
麦生 「DAVIS」
第47回 夏雲の島に生まれし海カレー 根っからの島民による全国民のためのカレー
宮之浦「やくしま食堂」※2018年1月閉店
第46回 赤き子の島に生まれし雨後の昼 和洋の狭間に知るカレーの深み
安房 武田館キッチンハウス「かたぎりさん」
第45回 物騒な世を鎮めるや島カレー 明日に向かって撃て
原 「ノマドカフェ」
第44回 年の瀬に飛び立ちて行く背や丸し EBI Fly to the distance
安房 「田中屋」
第43回 和も洋も隔てなきなり島カレー 受けて立った宮之浦の戦い
宮之浦「雲水」
第42回 春牧に昇る旭日を拝みけり 笑顔は究極のスパイスなり
春牧 「喜楽里」
第41回 軒先の雫気にせずカレー買う 県道脇のコンテナで作るオヤジに買うオヤジ
小瀬田 「モリカフェ」
第40回 新月に隠れてうさぎカレー食い カレーが地球を回している
麦生 「DAVIS」
第39回 人の世を写して流る秋の雲 ブタにも「六」がありました
安房 「ポルコ」※2017年11月閉店
安房 「Amara」 ※2016年閉店
第36回 あきもせず くるりくるりの島時間 港に香るカレーの風味
宮之浦 「雪苔屋」※2018年5月閉店→永久保に移転
第35回 島に逃げ極楽とんぼの島カレー 南の村の豆カレー
平内 「サウスビレッジ」※2015年閉店
第34回 透き通る海を背中に浜カレー 浜辺でスパイシー
一湊海水浴場 「カレー専門店 屋久島カレー グロース」
第33回