屋久島六角堂便り~手紙

自然と人が織りなす屋久島の多様性を屋久島六角堂から折々にお伝えします

屋久島カレー事情 第70回 香り立つうまし島ぞとあきもせず

拝啓
 
屋久島カレー事情」のスタートは2014年7月3日。
小瀬田の「萬萬亭」さんの500円カレー独りでもカレーが繋ぐ人の縁」に始まって4年と3か月
この間、今回ご紹介する2店を含めてご案内したカレーは屋久島島内73店、82食
ここらで初心に帰ってリセットをと促して下さったのは、先日鹿児島市に赴いた際、いづろ通交差点で見かけたインド料理チェーン店「ムーナ」さんと、
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天文館にある馴染みのスリランカ鹿児島」さん。
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そして先日伺った小瀬田「ひよりや」さんと
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麦生のポンタン館にあるティールーム トローキ」さん。
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この4店が何を示唆してくれたのかは後にして、まずは小瀬田「ひよりや」さんのカレーのご案内。
 
今月初め、久しぶりに伺った「ひよりや」さんでカレーを始められているのを知り、お店の空いた時間を見計らって訪ねると「すみません、カレーは売り切れです」という、最近よくあるパターン。
そこで日を改めて予約して開店早々伺うことに。
お店の目印は県道際の立て看板。
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12時ちょっと過ぎに到着すると、駐車場にはすでに車が数台止まり、店内には先客の大繁盛。
窓際のテーブルに着きメニューを確認。
最上段に「カレー」
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今回はお薦めの「+野菜トッピング」を頂くことに。
店内にはふんわりとした揚げ物の香りが漂うものの、スパイス系の香りはあまりなく、どんなんやろと待つことしばし……
穏やかなオーナーさんの笑顔と共にやって参りました、ひよりやカレー。
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小皿2つを従えた皿の中心、ピンクに色付く発酵玄米。
それを取り巻くカレースープは末広がりに、盛られた野菜を纏った姿は十二単の姫君のよう。
まずはカレーをひと匙、穏やかなしょうがの風味が口一杯に。
発酵玄米との相性もよし。おもむろに揚げ野菜を一箸一箸頂くことに。
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玉ねぎレンコンピーマンパプリカサトイモジャガイモひよこ豆……
見目麗しいハンダマもサックリ揚がって嫌味なく、それぞれの野菜の風味と触感が活かされておりました。
聞けば、スパイスは極力控えてジンジャー風味を表に出し、裏で味を支えているのはココナッツオイルだとのこと。
 
肉も魚介類も使わず、自分が納得できる素材を選び抜き丁寧に丹精込めて調理された一品。
作るにせよ食べるにせよ、こういうことを「贅沢」と呼ぶのでしょう。
ただ、そうした贅沢な暮らしを維持するにはそれ相応の覚悟と経済的基盤、そしてそれを支えてくれる人々との共感が必要。
そういう意味でこうしたカレーは特別なもの、柳田國男流に言えばハレ(非日常)のカレーと言えるかも。
オーナーさんの島民へのお気遣い、島民割引のお値打ち価格でご馳走様でした。
 
さてその一方、一見(一食)するとひよりやカレーの対極にあるかのように見えるのが麦生のティールーム トローキ」さんのカレー。
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ポンタン館は屋久島あいすくるりん「第7 フルーツはパッションなのだと叫ぶ夏」でもご案内したように、屋久島特産農作物の加工販売やインフォメーションもされている施設。
入り口を入ればすぐ、地元の無農薬農法や有機農法などで作られた野菜や果物が並んでいます。
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その館内のティールームのメニュはと言えば……
10月に入ってかき氷はなくなっていますが、愛らしいイラストと共にしっかり「カレーライス」が書き込まれています。
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以前から気になっていたこのカレーを、今回頂くことに。
指示通りレジで注文して待つことしばし……やって参りましたトローキカレー。
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カレールーは滑らかでフルーティーな中辛?
牛肉の塊もちゃんと存在感があり、ふっくら炊いた白ご飯と相性良し。
気取ることなく一心に、フーフー冷ましながらパクハグ頂きました。
外国人観光客の中にはお替りする方がいらっしゃるほどの人気とか。
屋久島のイメージに合うカレーのセレクトが的を得ているからなのかもしれません。
 
誰が食べてもそこそこ美味しく、調理も手軽で値段も手頃。
柳田國男流に言えばトローキカレーはケ(日常)のカレーと言えるかも。
ただ、ティールームトローキは加工所の隣にありながら壁で隔てられていることもあり、「温めるだけの調理」しか保健所の許可がおりない様子。
なのでスタッフの方がいくら意欲や技術をもっていようと、いくら地元の季節折々の野菜や魚、ターメリック(秋ウコン)やニンニクやショウガが豊富にあろうとも、それを素材にオリジナルカレーやチャツネを作って販売することができないとは。
今ここにある資源や人材、個人の創造力や技術力を活かす道を作れないのは、ポンタン館に限らず現町政の限界かと。
 
ポンタン館で野菜や果物やサンカラホテルのパンを買う島の住人はいらしても、ティールームでカレーを食べて帰られる方は少ないのでは。
家で作れるものをわざわざ外で余分なお金を払って食べるのはもったいないというのはつつましい庶民の素直な感情かと。
 
ここで一つの課題が見えてきました。
島民が自分の家で作るのは難しいけど車をちょっと走らせて気楽においしく当たり前のように食べている島特有かつ店独特のカレーを、「都会でもインドでもスリランカでもネパールでもこんなカレーは食べられない」と観光客が押し寄せるスパイシー屋久島の創生。
 
それが起爆剤となって島のラーメンも丼も魚料理もスウィーツもどんどん進化し、縄文杉が斃れた後の島の暮らしを支えていく……
 
そんな展望や公約を掲げる次期町長選挙立候補者がいらっしゃったら、万難を排して応援致します。
 
と、話に収拾がつかなくなったところで今回は、お後がよろしいようで。
 
敬具
 
付記
整理のためにこれまでカレーのご案内をした2018年10月14日現在73店82食、集落ごと略称店名五十音順に記しておきます。※「×」は紹介した回数

永田  2店2食

・sea & sun
・水照玉
一湊 1店1食
なっちゃん食堂
 宮之浦 18店18食
・雲水

 
・楓庵
屋久島 観光センター
・カレー専門店 屋久島カレー グロース×2
・こむぎこ
・Bay's Caf'e Jane
・洋食の寺田屋
・カフェ・ヒトメクリ
・カフェギャラリー 百水
・ひらみ屋
屋久ふるさと市場 島の恵み館
・宮カフェ
・やまがら屋
浜焼き 悠楽
・王龍(ワンロン) ※2016年閉店
・やくしま食堂※2018年1月閉店
・陽だまり→※2018年カフェギャラリー 百水にリニューアル
・雪苔屋 ※2018年永久保に移転
楠川・椨川 2店2食
・楠川ふれあいセンター じょんこう茶屋
・たぶ川 ※2018年閉店→2018年楠川に移転
小瀬田・長峰 9点9食
・エアポートやくしま
・花鈴
・樹林
屋久島カレー茶房 ハイビスカス
・ひよりや
・萬萬亭
・mori cafe STAND
・モリカフェ
・愛子亭 ※2015年閉店
安房・春牧・横峯 26店29食
・武田館キッチンハウス かたぎりさん
ファミリーレストラン かもがわ×2
・喜楽里
・きらんくや
・しいば
・ジャングル・キッチン 近未来
・杉の茶屋
・田中屋
・ちーぞー
・のどか
・ヒロベーカリー
・ふれあい
屋久どん
・山カフェ
・よろん坂
・和茶灯(わさび)
・Wung Karang
・島・しまキッチン ※2015年閉店
・和が家 ※2015年9月閉店
・萬来軒 ※2016年閉店
・Amara×3 ※2016年閉店
・ポルコ ※2017年11月閉店
・喫茶 ケルン ※2018年閉店
・umi cafe ※2018年閉店
麦生 3店4食
屋久ヴィータキッチン
・DAVIS×2
・ポンタン館 ティールーム トローキ
原 3店7食
屋久島 オリオン
ノマドカフェ×5
・食堂 もっちょむ山荘 ※2017年休業
 尾之間 6店7食
・Pain de Sucre パン・ド・シュクル
・ペイタ
・手打ちそば屋※2016年閉店
・お食事処 春(リニューアル店) ※2016年閉店
バリスタイル レストラン&バー Warung Karang ※安房へ移転
・モッチョムビュー トーン×2  ※2017年6月閉店
平内 3店3食
・naa yuu cafe
・アイノワレストラン(サウスビレッジ内) ※2015年閉店
・サウスビレッジ ※2015年閉店
 

これまで紹介した「屋久島カレー事情」インデックス
 
 平内  「naa yuu cafe」ココナッツチキンカレー
  宮之浦 「屋久島ふるさと市場 島の恵み館」
  宮之浦 「カフェギャラリー 百水」
  宮之浦 「こむぎこ」
 横峯   「のどか」
 宮之浦 「やまがら屋」
  原     「ノマドカフェ」
  安房  「umi cafe」
  安房  「喫茶 ケルン」
  安房    「Warung Karang
  宮之浦「浜焼き 悠楽」
 「田中屋」
 「鹿児島市立病院レストランだんらん」
 安房  「ちーぞー」
 永田   「sea & sun」
第56回  薫る風命育む薬の島  ※2017年6月より休業
  原      「食堂 もっちょむ山荘」
  宮之浦「宮カフェ」
  一湊  「なっちゃん食堂」
  小瀬田「mori cafe STAND」
第52回  冬籠るカフェの新たな春待たん  今年最後の豆腐カレー
  原     「ノマドカフェ」
第51回  労の香りぞ高き島カレー  夏には夏の冬には冬の味わいを
  安房  「山カフェ 」
第50回 の濃き緑染み入るカフェカレー  最北のカレー
  永田 「水照玉」
第49回  段々の青き棚田に福来れ  爽やかな女将さんの前途を祝して
  椨川 「たぶ川」
第48回  島に居て上機嫌なる腹の虫   一食の価値あるアートカレー
  麦生 「DAVIS」
第47回  夏雲の島に生まれし海カレー 根っからの島民による全国民のためのカレー
  宮之浦「やくしま食堂」※2018年1月閉店
第46回  赤き子の島に生まれし雨後の昼 和洋の狭間に知るカレーの深み
  安房 武田館キッチンハウス「かたぎりさん」
  原    「ノマドカフェ」
第44回  年の瀬に飛び立ちて行く背や丸し  EBI Fly to the distance
 安房  「田中屋」
第43回  和も洋も隔てなきなり島カレー 受けて立った宮之浦の戦い
 宮之浦「雲水」
第42回  春牧に昇る旭日を拝みけり 笑顔は究極のスパイスなり
 春牧   「喜楽里」
第41回  先の雫気にせずカレー買う 県道脇のコンテナで作るオヤジに買うオヤジ
 小瀬田 「モリカフェ」
第40回  新月に隠れてうさぎカレー食い カレーが地球を回している
 麦生   「DAVIS」
第39回  の世を写して流る秋の雲 ブタにも「六」がありました
 安房   「ポルコ」※2017年11月閉店
第38回 春にまた戻る日を待つ渡り鳥 また来ってこいよ南国Amara
 安房  「Amara」 ※2016年閉店
 
第37回 神代より天下りたり愛の秋 姉弟そろって豆カレー
 平内 「アイノワレストラン」(サウスビレッジ内) ※2015年閉店
第36回  あきもせず くるりくるりの島時間 港に香るカレーの風味
 宮之浦 「雪苔屋」※2018年5月閉店→永久保に移転
第35回  島に逃げ極楽とんぼの島カレー 南の村の豆カレー
 平内   「サウスビレッジ」※2015年閉店
第34回  透き通る海を背中に浜カレー 浜辺でスパイシー
 一湊海水浴場 「カレー専門店 屋久島カレー グロース」
第33回  梅雨明けを手土産に来い11号 ここは南国
 安房   「ジャングル・キッチン 近未来」
 楠川   「楠川ふれあいセンター じょんこう茶屋」
第31回  梅雨空に割りてすがしきカレーパン モーニングカレーパン
 尾之間「ペイタ」
第30回  海山にガッツリカレー連れテイク ガッツリ登山弁当カレー
 安房   「かもがわ」
第29回  台風も賑わうアジアの交差点 パワーアップして帰ってきたAmara
 安房   「新Amara 南国酒場」※2016年閉店
第28回  屋久島にアジアの緑風巡り来る 京都からやってきたアジアンカレー
 尾之間  「バリスタイル レストラン&バー Warung Karang」 ※2017年6月より休業→安房へ移転
第27回  ラーメンをスープにさらう島カレー