拝啓
屋久島で何軒もの家の屋根を吹き飛ばし、樹々をなぎ倒して10時間以上の停電を引き起こした台風24号チャーミーさんが北の海に去ったと思いきや、南の海では25号コンレイさんが瞳をパッチリ見開いて沖縄→東シナ海→九州北部へと旅を続けている様子。
それでも四日間の欠航の末、フェリー屋久島2がようやく入港した台風一過の秋晴れにほっと一息。そんな折、居候招き猫のニャーがデッキの片隅で、ケタンキの隙間から何かを伺っている様子。
「なにしてんにゃ」と声を掛ければ駆け寄って「ニャゴナゴニーナー」と答えるので
生け垣の向こうの海を望めば漁船の姿。台風の波も収まって久しぶりの操業でしょうか。カメラを持ってきてパシャリ。
午後5時過ぎからフェリー欠航のため溜まっていたゆうパックやら宅配便の配送が何度も。カフェで使うクール便の配達は夜の9時前になるとの電話連絡。そろそろ到着かとデッキに出てみると、涼んでいたニャーが擦り寄り「ニャーニーニャーニー」。
空を仰げば台風一過の星空?今年は去年より星が暗く、天の川もはっきり見えないと思っていたのですが……これはひょっとして!と広角17mのズームをカメラに付け替え三脚に固定。ISO3200、F2.8、露光12秒で撮影した南南西の空は
北東の空は
北西の空は
なんのことはありません。去年より自分の眼の白内障と乱視が進み、星が見えにくくなっていただけだったということが判明。クッキリ写った写真に嬉しさ半分悲しさ半分。
己の行く末に溜息一つ吐いたところで、伝説の少女コンレイさんのことが気がかりに。ネットで検索で見つかったのはカンボジアのコンポンチュナン州の民話。
まずは、コンポンチュナン州とは
「カンボジア クロマーマガジン」によれば
「プノンペンより北部に位置する小さな河港街。見所は少ないが、カンボジアで最も陶器作りが盛んな地域で、のんびりとした農村部の人々の生活に触れるにはとても良い……街はトンレサップ湖から流れるトンレサップ川に面し、漁業も盛んであり、多くの水上生活家屋」もあり、コンレイの伝説に登場する河港は観光地の一つとなっていて、アンコール時代より聖地となっている“リンガ岩”もあるとのこと。
で、カンボジア民話集のページは
※何故か文字化けして表示されますが、ブラウザーの再読み込みをすると日本語になります。
「クメール文化委員会」編集とのことですが、ダイジェストすると、以下のような内容……読むのが大変な方のために一言でいえば「愛する男を追って死んだコンレイの非業の死と菩薩に守られた男のサクセスストーリー」
コムポン・チュナンにある山は、遠くから見ると人間が足を伸ばして寝ているよう。 山腹にぎっしりと隙間なく生えたシソはコンレイの女性器の毛だと語り継がれているので村人はそのシソを食べません。
さて、昔々、ある国の子供がいない長者は妻と共にチュレイの木に子供を授かるように祈ったところ、12人の女の子を授かったそうな。
しかし長者は落ちぶれて貧しくなり、妻と12人の子供たちをつれて山の奥深くに行くと、ソントー・メアという女鬼の国に行き着いた。
プット・サエンが青年となった時、ソントー・メアはそれが娘たちの子供だと知りコンレイに手紙を送って殺させようとした。しかし仙人の力を借りたプット・サエンはコンレイをだまして結婚し、鬼の国の王に即位した。
やがてソントー・メアの秘密を突きとめたプット・サエンは母の元に戻ろうとコンレイを捨てて逃げた。
コンレイはプット・サエンの後を追ったが、プット・サエンがまいた秘薬で道は塞がれ、コンレイは森の中で泣き叫び、そのまま死んでしまった。
プット・サエンは無事に人間の国に戻り、母や伯母たちに薬を与えて目を見えるようにし、ソントー・メアを殺して王に即位した。
さて、昔々、ある国の子供がいない長者は妻と共にチュレイの木に子供を授かるように祈ったところ、12人の女の子を授かったそうな。
しかし長者は落ちぶれて貧しくなり、妻と12人の子供たちをつれて山の奥深くに行くと、ソントー・メアという女鬼の国に行き着いた。
その女鬼にはコンレイという名の娘がいた。ソントー・メアは娘たちを自分の娘のコンレイに面倒をみさせたが、娘達はそこが女鬼の国だと知って逃げた。
ソントー・メアは逃げた娘達を追って人間の国のロット・セット王の王妃になり、見つけた12人の娘の目をえぐり出し、全員を妊娠させて穴の中に閉じ込めた。
ところが長者の末娘のお腹には菩薩が入り、生まれるた子供に "プット・サエン(極めて知性のある者)" と名付けて隠した。プット・サエンが青年となった時、ソントー・メアはそれが娘たちの子供だと知りコンレイに手紙を送って殺させようとした。しかし仙人の力を借りたプット・サエンはコンレイをだまして結婚し、鬼の国の王に即位した。
やがてソントー・メアの秘密を突きとめたプット・サエンは母の元に戻ろうとコンレイを捨てて逃げた。
コンレイはプット・サエンの後を追ったが、プット・サエンがまいた秘薬で道は塞がれ、コンレイは森の中で泣き叫び、そのまま死んでしまった。
プット・サエンは無事に人間の国に戻り、母や伯母たちに薬を与えて目を見えるようにし、ソントー・メアを殺して王に即位した。
あな、コンレイさんの何とも憐れな最期。何やら和歌山の道成寺にまつわる「安珍・清姫」の伝説が思われて……
コンレイさん、穏やかな成仏を遂げられますように。
そんなこんなで、台風通過後弱々しくなった鈴虫と松虫の音が響く六角堂の夜は、しみじみと更けてゆくのでありました。
敬具