【六角堂スパイシーブックカフェ・イートハーブからのお知らせ】
拝啓
久し振りに青い空と青い海を見渡せた屋久島麦生六角堂。
本日ご来店下さったお客様から、
六角堂の母屋(イートハーブ)の前にそそり立つ樹に付いて「何と言う松の種類ですか?」というお尋ねを頂きました。
今から10年ほど前、
このこんもりした樹々の内側に入って風に吹かれながら海を眺めて、
この土地を買い、屋久島に移住することを決めました。
その当時、この木の名前を知りませんでしたが、六角堂を建ててコテージを開業後の二年間、管理人を引き受けてくれていたクマちゃん夫妻が旅先の奄美で同じ木を見付け、「モクマオウ」という名だと伝えてくれました。
「漢字で書けば木魔王かも」などと、盛り上がっていましたが、調べてみれば「木麻黄」(学名はCasuarinaceae)。
森林総合研究所九州支所のHPによれば、モクマオウ科の植物で松とは別種、オーストラリア原産で樹皮は染料になるそうです。
ところが、見えない糸でモクマオウと屋久島はつながっていたことを、今週発見していたのです。
主人公幸田ゆき子が昭和18年、日本軍が占領していた仏印(フランス領インドシナ=今のベトナム・ラオス・カンボジア)に渡り、破局へと突き進む元となる富岡と出会う町へと向かう植民道路は「木麻黄の並木道」だったのです。
屋久島は「日本最南端」だったことを思い知ります。
幸田ゆき子が逃避行の末に辿り着き、
命尽きた屋久島は当時の「日本の最果て」だったのです。
海風にそよぐモクマオウの葉陰で、そんな日本の歴史と女の一生を思い浮かべてみるのも「BOOK CAFE EAT HERB」にふさわしい過ごし方かもしれません。
明日12日木曜日、12時より売り切れ御免の臨時営業。
よろしければモクマオウの根方のベンチでおくつろぎください。
敬具
六角堂は遠すぎるとおっしゃる御方には、
ご自宅で当時の屋久島を偲んでいただければ幸いです。