屋久島六角堂便り~手紙

自然と人が織りなす屋久島の多様性を屋久島六角堂から折々にお伝えします

屋久島丼紀行 第23回 味覚的向上心三段活用

拝啓

夏目漱石の代表作『こころ』の名言に、〈私〉が〈K〉に対して投げつけ〈K〉を自殺へと追い詰めた「精神的に向上心のない者は ばかだ」という台詞があります。向上心は精神の一種なのですから、「精神的に」とことわる必要もないのに、わざわざそうしたのは「経済的な向上心」や「軍事的な向上心」もあるからなのでしょう。つまり向上心とは今より上、人より上を目指す心、すなわち「現状を打破する挑戦心」と言ったものになるのかもしれません。

で、なんで丼紀行で「向上心」なのかと言えば、春牧の喜楽里で頂いた「喜楽里カレーう丼」が島の味覚的向上心の発露だと思えたからです。

それはこんな丼です。

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「なんや、ただのカレーうどんやないか」と思うことなかれ。注目すべきは割りばしとともにスプーンが備えられているところ。店員さんのガイドに従ってまずはカレーを絡めてうどんを食べる。すると現れ出でたるもっっっちりは、

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餅ではなくてとろろ芋。その下にあるご飯と混ぜて

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スプーンでかきこんで完食。

するとすかさず、おまけの珈琲を運んできてくださった女将さんが「どうでしたか?」と尋ねられるので、「どなたのアイデアでしょうか?」と問い直せば、「妹の子が〈豊橋カレーうどん〉をテレビで見て、店でやってみたらどうと言われて、実のところパクリなんです♡」との返答。

愛知県名古屋市の生まれでありながら、世間で話題の『ひつまぶし』にも縁がなかった我が身。尾張と三河の違いこそあれ〈豊橋カレーうどん〉なる物の存在を今日まで知らずに過ごした不覚を恥じつつも、問われた感想として女将さんに伝えたのは、「50円余分に出しても良いから別の小鉢に生卵を添えてほしい。最後はカレーおじやのようにして食べたらもっと旨かろう」ということでした。

で、急いで六角堂に戻ってネットで検索してみると、ありました「豊橋カレーうどん」。しかも2015年まで「うどんミュージアム」もあったそうな。


上記のホームページには「豊橋カレーうどん」の来歴が記され、「豊橋カレーうどん五箇条」や「豊川カレーうどんの食べ方」を記した「いつでもほの国 豊橋観光コンベンション協会」のサイトが紹介されていました。


豊橋カレーうどんが開発されたのは2010年とついこの前。私が知らなくても不思議はありませんでした。

しかも、次の「豊橋カレーうどん五箇条」にあるように……

 1:うどん麺は自家製麺とする。
 2:器の底から、ご飯、とろろ、カレーうどんの順に盛る。
 3:日本一位の生産量を誇る「豊橋産のうずら卵」を具に使用する。
 4:福神漬または壺漬けを添える。
 5:愛情を持って作る。
※ 以上のルールの範囲内で、うずら卵を薄焼き卵にして載せ天津麺風にする、チーズを加えるなどの各店ごとのバリエーションがある。

……卵を加えることが条件であることを知り、思わずにんまり「そやろ、やっぱしな」。

ただ、ここで重要なことは私の自己満足ではなく、喜楽里さんの「カレーう丼」は五箇条の内、その2とその5以外は該当せず、そうした意味でパクリとはならない上に、屋久島特産山芋を使用しているところがしっかり「喜楽里風」であること。しかも「カレーう丼」というネーミングが利いているということです。

「学ぶは真似ぶ」で優れたものをお手本にすることは向上心を高める第一歩。この「カレーう丼」は屋久島の味として発展する余地があると睨んでします。

そこで屋久島カレーう丼五箇条の案を示せば
 1:うどん麺は離島でも手に入りやすく保存しやすい冷凍さぬきうどんとする。
 2:器の底から、ご飯、とろろ、カレーうどんの順に盛る。
 3:とろろには屋久島特産の山芋を使用する。
 4:カレーには気持ち程度でも屋久島産ターメリック(秋ウコン)を使用する。

 5:出汁の香り付け程度には島特産のサバ節を使用する。

島を上げて屋久島カレーう丼を育てる。そうした味覚的向上心を育てていくことが島の新たな文化を築く起爆剤になるのではと思うことしきり。「観光立町屋久島」の未来はここから始まると思わずにいられない冬の夕暮れでした。

敬具

追伸1
それにしても、以前紹介した味噌カツ丼といい今回のカレーう丼といい、なぜ愛知県や名古屋方面の食べ物が島に馴染んでいるのでしょう?そのルーツをたどることも、島の現状を分析し未来を探る手掛かりとなるような気がしてなりません。

追伸2
この「喜楽里カレーう丼」は「屋久島カレー事情」で紹介してもよかったのですが、ネーミングが「丼」なので「屋久島丼紀行」で取り上げました。


 
屋久島丼紀行インデックス

  宮之浦  雲水  「天丼 海老三本野菜四種」
  尾之間 そば屋 「とり天丼セット」
  尾之間 モッチョムビュー トーン 「味噌カツ丼」
  春牧 安永丸「海鮮丼」+「トビウオの漬け丼」
  安房 島・しまキッチン「お肉Wご飯大盛り無料 黒毛和牛ステーキ丼弁当※2015年12月で閉店
  春牧 喜楽里 「鶏めし丼+ミニうどん」、「カツ丼」
  安房 いその香り 「海鮮丼」
  安房 武田館キッチンハウス 和が家「ソースカツ丼」
  安房 武田館キッチンハウス なつみ庵「親子丼」 ※ 2015年11月で閉店
  安房 サンパウロ「豚丼」
  安房 屋久どん「天麩羅うどん+ミニソースカツ丼セット」
  安房 きらんくや「豚丼蕎麦セット」
  島外の丼
  小瀬田 屋久島空港食堂 「とろろ丼」
  宮之浦 ふるさと市場「お勧め料理 あら汁・小鉢お漬物付き海鮮丼」
  原 食堂 モッチョム山荘 「天丼」
  安房 屋久どん「えび天うどん+■■■漬け丼」
  安房 レンガ屋「ミックス丼」
  小瀬田 ラ・モンステラ「親子丼」 ※ 2015年10月より無期休業
  安房 ファミリーレストランかもがわ「エビ丼」
  宮之浦 Bay’s Caf’e Jane「飛魚丼」
  安房 萬來軒「麻婆丼」
  安房 島・しまキッチン「ステーキ丼」 ※2015年12月で閉店
  尾之間 味徳「牛丼」
  春牧 みち草「カツ丼」
  栗生 松竹「天丼」