拝啓
2014年の7月から島のカレーを紹介している『屋久島カレー事情』も第40回。
「小さな島なのによくカレーネタが尽きないね……」とか「島にはそんなにカレーの美味しい店がたくさんあるのですか?」などという感想・疑問も耳にしますが、カレーは一般的日本国民が意識している以上にグローバルかつローカルな食文化の代表なのです。
『カレーの歴史(CURRY:A GLOBAL HISTRY)』(コリーン・テイラーセン著、原書房2013/8刊)という本が六角堂明冥文庫にあります。
そこには2001年、イギリスの外相が「チキンティッカ・マサラは真のイギリスの国民的料理だ。
それは、いちばん人気があるというだけでなく、イギリスが外部の影響をどう吸収し、適応させるかを完璧に体現しているからだ」と宣言したことが紹介されています。
この言葉は屋久島の未来にとっても含蓄のある言葉だと思います。
18世紀にインドから持ち込まれたカレー(と呼ばれることになるインドの様々な料理)は、200年間に貴族・庶民を問わずイギリス人の生活に浸透しました。
21世紀のイギリスは、国内に8000軒以上のカレーレストランが存在し、8000軒以上のパブでカレーを食べられるカレー大国になっているのです。
そのイギリスから日本に伝えられたカレーは明治維新後、「富国強兵」のため日本人の体位を向上させる推進力(米と野菜に加えて日本人が食べつけていなかった肉を抵抗なく食べて体格をよくする)として軍を中心にカレーが急速に普及されていくことになります。
第二次世界大戦後には、ハウスやS&Bを中心とした企業も参与してカレーは学校給食にも取り入れられ、かつ又働く婦人=共稼ぎの増加に合わせてお手軽な固形カレールーが日本の家庭の食風景を変貌させました。
そして日本式カレーはボンカレーを発祥とするレトルトカレーへと進化し、全世界どころか国際宇宙ステーションでも日清のヌードルと共に各国の宇宙飛行士にも食されているのです。(http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1008/spe2_03.html)
と、長々前口上を申し上げたのは、今日ご紹介するカレーが麦生の隠れ家的カフェレストラン「DAVIS(デイビス)」(https://www.facebook.com/CottageDavisYakushima)さんのカレーだからです。
「それが宇宙とどう関係すんねん!」って……
まずはDAVIS(デイビス)。
麦生の県道沿い、「そらうみ」さんの近くの「やくしま村」の横に立ってる看板がそう?とまでは見当がついても実際に店内で食事をされた方は少ないかも。
青い看板の「Open」のサインと下の黒板に「本日のメニュー○○カレー」の表示を確認し海側に坂を下ります。
車を止めにくいのが難点ですが、そこは美味しい食事のための関門と心得て玄関に向かうと、お洒落なサインが迎えてくれます。
シェフは日本人女性ですが、フロアを担当されているのはシェフから「ダーリン」と呼ばれる外人さんのご主人。
「それでグローバルか!」と言うのはまだ早い。
今日のランチメニューはこのようで、
フランスの作曲家のクラッシック音楽を聴きつつ、窓の外の景色を眺めつつ待つことしばし……
「ダーリン」の手によって運ばれてきたランチプレートを上から見ると
横から見ると
洋画(油絵)のような色彩と構図。カレーはあくまでソースの扱いですが、レンズ豆特有の滑らかなとろみと甘みがチキンの辛味や野菜の触感を引き立てて。
エスニック料理というより、西洋料理を食べている趣き。
丸く盛られた白いご飯の上の赤いトウガラシが日本、地球の周りをチキンと野菜が回っているように見え。。。ませんか
食べる楽しみの中心は味や香りやボリューム(満腹感)かもしれませんが、欠かせないのは「見て楽しい盛り付けや色彩感」。
それが十分に満たされるカレーでした。
DAVISさんのランチプレートカレーがしっかりしたデッサン力を感じさせる洋画のようなカレーだとすると、麦生から5分と離れていない原の「nomado cafe(ノマドカフェ)」(http://nomado-cafe.seesaa.net/)さんのカレープレートはスタイリッシュなイラストのようだと言えるかもしれません。
では、同じ麦生にある六角堂 Spicy book cafe「Eat Herb」(イートハーブ=宮沢賢治のイーハトーボの友達のつもり)のプレートカレーは……
ちょっとセクシーでマンガのようなカレーだと言っていただければ幸いです。
見て楽しく嗅いで楽しく食べて楽しいカレーが島にあればしんみりしがちな冬も乗り越えられるのですが……
すでに冬季休業に入ったAmaraさんに加え、nomadoさんと同じくDavisさんも今シーズンの営業は今月限りで終了のようで、寂しい限りです。
さて、あと何回続くか分からない「屋久島カレー事情」ですが、これまで取り上げてこなかったあの店に行ってごらんとご連絡いただければ、一週間以内に食してご報告申し上げます。
ご教示よろしくお願いいたします。
敬具
これまで紹介した「屋久島カレー事情」インデックス
第39回 人の世を写して流る秋の雲 ブタにも「六」がありました
安房「ポルコ」
第38回 春にまた戻る日を待つ渡り鳥 また来ってこいよ南国Amara
安房「Amara」
第37回 神代より天下りたり愛の秋 姉弟そろって豆カレー
平内 「アイノワレストラン」(サウスビレッジ内) ※2015年閉店
平内 「アイノワレストラン」(サウスビレッジ内) ※2015年閉店
第36回 あきもせず くるりくるりの島時間 港に香るカレーの風味
宮之浦「雪苔屋」
宮之浦「雪苔屋」
第35回 島に逃げ極楽とんぼの島カレー 南の村の豆カレー
平内 「サウスビレッジ」※2015年閉店
第34回 透き通る海を背中に浜カレー 浜辺でスパイシー
一湊海水浴場 「カレー専門店 屋久島カレー グロース」
第33回 梅雨明けを手土産に来い11号 ここは南国
安房 「ジャングル・キッチン 近未来」
第32回 どこにでもあれどどこにもないカレー どこでもカレー
楠川 「楠川ふれあいセンター じょんこう茶屋」
第31回 梅雨空に割りてすがしきカレーパン モーニングカレーパン
尾之間 「ペイタ」
第30回 海山にガッツリカレー連れテイク ガッツリ登山弁当カレー
安房 「かもがわ」
第29回 台風も賑わうアジアの交差点 パワーアップして帰ってきたAmara
安房 「新Amara 南国酒場」
第28回 屋久島にアジアの緑風巡り来る 京都からやってきたアジアンカレー
尾之間「バリスタイル レストラン&バー Warung Karang(ワルンカラン )
第27回 ラーメンをスープにさらう島カレー ラーメン屋のカレー定食
宮之浦 「王龍(ワンロン)」
第26回 脇役のカレー目当てに蕎麦すする カレーやってます
尾之間 「手打ちそば屋」※2016年閉店
安房 「かもがわ」
第29回 台風も賑わうアジアの交差点 パワーアップして帰ってきたAmara
安房 「新Amara 南国酒場」
第28回 屋久島にアジアの緑風巡り来る 京都からやってきたアジアンカレー
尾之間「バリスタイル レストラン&バー Warung Karang(ワルンカラン )
第27回 ラーメンをスープにさらう島カレー ラーメン屋のカレー定食
宮之浦 「王龍(ワンロン)」
第26回 脇役のカレー目当てに蕎麦すする カレーやってます
尾之間 「手打ちそば屋」※2016年閉店
第23回 県道に萌え出づる春カレーあり 年季の入ったかわいい系喫茶店
小瀬田「花鈴」
※ 番号の重複をご容赦ください
第21回 対岸に香れるカレー求めけり 海を渡って
第20回 どんぶりに残せる鹿よ悪しからず たしかにしか
宮之浦「カフェ・ヒトメクリ」
宮之浦「カフェ・ヒトメクリ」
第13回 食べることそれは生のあかしなり 木枯らしの吹き荒れる海ボンカレー
陳列棚のカレー 2
尾之間「モッチョムビュー トーン」
安房「田中屋」
第8回 おいどんにカレーうどんは似合わぬか Aコープのカレーうどん
陳列棚のカレー
第3回 風を待つ街にカレーの風が吹く 「本格」「印度風」ばやり
島外のカレー
第2回 一皿の命の旨味有難し 樹林のオーロラカレー
小瀬田「樹林」
小瀬田「樹林」
第1回 独りでもカレーが繋ぐ人の縁 萬萬亭の500円カレー
小瀬田「萬萬亭」
小瀬田「萬萬亭」