屋久島六角堂便り~手紙

自然と人が織りなす屋久島の多様性を屋久島六角堂から折々にお伝えします

ハヤブサの遠き爆音如何に聞く

拝啓
 
この数日の寒波で、屋久島の奥岳はすでに積雪を記録しております。一方、島の南部の里山ではポンカンの収穫真っ最中。小さな島に日本が凝縮されているということを実感できる昨今です。
 
さて、今日の午後1時22分、お隣の種子島から小惑星探査機ハヤブサを載せたH2ロケットが発射されました。前回と同じくカヤック屋のサウスアイランド(http://www.south8940.com/)さんのプライベートビーチで、打ち上げの様子を撮影させて頂きました。
 
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激しい火柱と共にロケットは地上を離れ
 
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ぐんぐんと上昇し
 
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遅れてきた爆音とロケット雲を残して、空の彼方に消えていきました。
 
ハヤブサが返ってくる6年後、この日本はどうなっているのでしょう。「積極的平和主義」なるものの成果として戦争の真っただ中にあるのでしょうか?それとも再稼働した全国の原発が次々にトラブルを引き起こして、日本人が住める国土などなくなってしまっているのでしょうか?
 
ハヤブサの打ち上げを見ていて思い出したのは、1968年のアメリカ映画『猿の惑星』です。ベトナム戦争真っ最中だったこの時期、映画のラストシーンは冷戦の悲惨な結末を暗示するものとして話題を呼びました。しかもその年、アメリカ空軍の爆撃機B52がグリーンランド沖に墜落し、水爆4個が行方不明になっています。
 
その1968年、日本では川端康成がノーベル文学賞を受賞し、フォーク・クルセダーズの『帰ってきたヨッパライ』(オラは死んじまっただ~……天国良いとこ一度はお出で、酒は美味いしネエちゃんはきれいだ……今でも歌えます。ちなみにリーダーの加藤和彦は41年後の2009年に首吊り自殺、相方の北川修は作詞家兼精神科医となり今は大学教授です)がヒットチャートを駆け上り、『ビッグコミック』の創刊と共に『ゴルゴ13』(先週、安房の中華料理屋萬来軒で最新作を読みました)の連載が始まって学生達は漫画雑誌にはまり、『少年ジャンプ』が創刊して永井豪の『ハレンチ学園』(六角堂イートハーブのマンガ棚に単行本があります)が巷の小学生に大衝撃を与えていました。
 
一方、沖縄ではベトナムを空爆するために発着していたB52爆撃機が嘉手納飛行場で墜落事故を起こし、島民による大規模な抗議行動が起きましたが、当時の沖縄は「日本」ではなくアメリカによる「琉球列島米国民政府」が支配する島でした。沖縄が日本に復帰するのは、その4年後の1972年です。
 
さてさて6年後の2020年、今小学1年生の子供たちが中学生になった時、誰もが安心して暮らし、だれもが夢多き未来を思い描ける国にしていきたいものです。ハヤブサの打ち上げを見る誰もが「無事に帰ってきてね!」と心の中でつぶやいたのではないでしょうか。科学技術の粋のロケット打ち上げの場も、祈りの場の一つなのかもしれません。
 
そうそう、昔父がよく歌っていた軍歌に大日本帝国陸軍の一式戦闘機「隼」が登場する『加藤隼戦闘隊歌』がありました。小惑星探査機ハヤブサを載せたH2ロケットが残した爆音が、この一式戦闘機隼の爆音と重ならないことを祈りつつ、歌詞を転載いたします。
 
  昭和18年『加藤隼戦闘隊歌』作詩:田中林平、作曲:朝日六郎
 
1 エンジンの音 轟々と
  隼は征く 雲の果て
  翼に輝く 日の丸と
  胸に描きし 赤鷲の
  印はわれらが 戦闘機
 
     (2~4番省略)
 
5 世界に誇る 荒鷲の
  翼のばせし 幾千里
  輝く伝統 受けつぎて
  新たに興(おこ)す 大アジア
  われらは皇軍戦闘隊
 
敬具